自動追尾カートや無人店舗も!5Gが小売業に及ぼす影響

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プロフィール
安藤隼人
某国内メーカーにてシステムエンジニアとして10年以上勤続中。現職の傍らITライターとしても活動。
英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

5Gの登場によって、あらゆるモノがインターネットに接続されるようになります。 小売業でも、値札や店内のカメラがインターネットにつながることで、変革の時代が到来するでしょう。リアルタイムでの売上分析や無人店舗の運営など、今まではできなかったことが、5Gを利用することで可能になっていきます。

5Gの登場で起こる小売業の変革

5Gが実用化されると、超高速(10Gbps)・低遅延(1ms程度)・多接続(100万台/㎢)という通信環境が実現されます。

センサーやカメラを店舗に設置することで、膨大な量のマーケティングデータを採取可能。その情報を基に、より的確でタイムリーなマーケティング戦略の実施や顧客への対応が可能になります。

また、インターネットを経由した大容量で高速な通信も可能になります。今までになかった仕組みも、5Gを利用して実現できるようになっていくでしょう。

5Gによって小売業にもたらされる恩恵は多い

5Gを導入できると、小売業の経営ではどのような恩恵がもたらされるのでしょうか。事例を順番にみていきましょう。

自動追尾カート

自動追尾カートとは、顧客の体に取り付けられたIDチップと通信することで、顧客を追尾して自動走行をするカートのこと。自動追尾するだけでなく、キャッシュレス決済や商品棚までの誘導機能も検討されています。

子ども連れや荷物を持ち運びにくいお年寄りの買い物の負担を軽減でき、来店者数アップにつなげられると期待されています。

リアルタイム売上分析

ジーンズを中心としたアパレル大手のリーバイスでは、IoTを活用して商品の動向データを集め、顧客体験の強化と改善に活用しています。店舗にある全商品にRFIDタグを取り付け、商品の動きを追跡してリアルタイムで分析ができるようにしました。 商品のトレンドはもとより、どの商品が試着されたのかなどの細かいデータも採取できます。

無人店舗の運営

2020年3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅では、AIカメラ100台を備えた無人のコンビニ店舗「TOUCH TO GO」が駅構内にオープンしました。入口と出口が別になっていて、商品を選んで出口付近の決済エリアに立つと商品が表示されます。そのままSuicaなどの交通系ICカードでスムーズに決済し、店外に出られます。

人件費の削減、レジ待ち時間の短縮による来店者数や売り上げのアップが期待されています。

動画でのプロモーション

5Gが普及すると動画再生がスムーズになり、動画を活用したプロモーションが活発になると予想されています。

なかでも特に注目されているのが、視聴者が動画に対してタップやクリックなどでアクションできるインタラクティブ動画。アクションをデータとして収集でき、単純な動画よりも視聴者のニーズを的確にくみ取れます。

株式会社マクロミルの調査では、静止画広告と動画広告を比較すると、動画広告の方が認知度・理解度に優れており、紹介商品の利用意欲に約7倍の差が出るという結果になりました。

一人ひとりへの趣味嗜好に合わせたOne to Oneマーケティングと組み合わせることで、更なる売り上げアップが期待されています。

オンライン店舗の運営

5Gによって、今後広まっていくと考えられているのが「オンラインVRショップ」です。オンライン店舗での売り上げアップや、返品リスクの減少が期待されています。

アパレルブランドでは、カスタムできる自分のアバターを用意して、商品を自由に着せ替えさせ、家にいながらにして商品を試着可能。また百貨店や家具店など大型の商品を取り扱う店舗では、自宅に実際に商品を置くことで、家具配置後の様子を明確にできます。

今回お伝えした内容は、いずれも経営改善に直結する可能性を持っています。5Gの導入は経営者にとって多大なメリットがあるといえるでしょう。

自社の店舗に合わせたITシステムを導入できる人材が必要

5Gが普及すれば、多くの恩恵がもたらされますが、5Gは小売業にはオーバースペックであるとの声も出てきています。

調査会社Forrester Researchは、小売業の5G利用に関する調査レポート「The CIO’s Guide To 5G In The Retail Sector」を発表。その中で、既に小売業者は既存技術で優れたアプリケーションやサービスを実現していて、無理に変更を加える必要はないと指摘し、ネットワークインフラへの追加的な投資に関する明確なROI(投資対効果)は見えていないとしています。

また5Gでは「ミリ波」と呼ばれる比較的高い周波数帯の電波を使用しますが、その周波数の関係上直進性が高く、物体を回り込む力はあまりありません。そのため、室内にある物体がミリ波の通信を妨げる可能性があります。店舗の規模や内装によっては無線LANの新規格である「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi6)の方が合っているという場合もあるでしょう。 自社の店舗の特性を把握し、世の中の流れに踊らされずに自社に適したITを導入できる人材が求められます。

自社の課題解決に適した5Gの利用を

5Gを利用すると、大量のマーケティングデータが採取できるようになり、自動追尾カートや無人店舗などの新しい仕組みも導入できます。

しかしながら、5Gの導入は必須ではありません。従来の無線ネットワークやWi-Fi6で十分な店舗もあります。

世の中に流されずに自店舗の課題を把握して、適切なITシステムを導入していきましょう。