自動隊列走行やMaaSが登場!5Gで変わる運輸業界の今

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プロフィール
安藤隼人
某国内メーカーにてシステムエンジニアとして10年以上勤続中。現職の傍らITライターとしても活動。
英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

2020年から実用化されるといわれている5G。各業界では、5Gへの対応が急ピッチで進められています。もちろん運輸業界も例外ではありません。

自動隊列走行の実験やMaaS(※1)など、新しい領域のサービスについては、目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。従来は不可能であると考えられていた新しい領域のサービスが、5Gの導入によって実現の可能性を増しています。

※1:Mobility as a Serviceの略で、直訳すると「サービスとしての移動」。交通手段による移動をサービスとする概念。

5Gによって運輸業界に起こる変革

2020年に実用化される予定の5Gは、運輸業界にもインパクトを与えます。

5Gは、超高速(最高10Gbps)、多接続(100万台/㎢)、超低遅延(1ミリ秒程度)を実現するネットワークの仕組み。5Gが導入されることによって、今まで以上にAIやIoT、ビッグデータが活用できるようになります。

4G以前の無線ネットワークでは、最高でも100Mbps程度の通信速度しか出せず、接続機器数は1万台/㎢程度。遅延も10ミリ秒程度は発生してしまっておりました。

5Gを導入することにより、“様々なモノの間”で“大容量の通信”が“遅延なく”できるようになります。

5Gは運輸分野の課題発見や最適化に貢献

それでは、5Gは運輸分野にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。順番にみていきましょう。

見える化による課題発見や予防保守

センサーを取り付けることさえできれば、IoTシステムを通して、様々なデータを大量に収集できます。すると、作業の際にボトルネックとなっている箇所や、機器の中で不調となっている箇所など、今まで見えてこなかった問題が見えてくることもあります。5Gの導入により、通信可能範囲内に設置できるセンサーの数は飛躍的に増加します。

センサーからIoTシステム経由で採取したデータを活用することにより、車体の予防保守や、工場の荷物処理ボトルネックの発見などに役立てることができます。

自動化された運用で確実な作業

5Gと各種センサー、AIの組み合わせで様々な作業を自動化できます。

例えば、運輸倉庫でのAGVを使った荷物自動運搬は、自律走行型のAGVも近年では増えてきました。しかしながら4Gの仕様上、通信中の機器が多い場所では目的の通信が途切れてしまうこともあります。AGVの数は無尽蔵に増やせる状態ではありません。

5Gが導入されれば、AGVの数も増やしていけます。従来よりも運輸倉庫などでの自動化が、さらに進んでいくでしょう。

運輸分野に適用された5G関連事例

ここからは、実際に運輸分野で適用されている5G関連事例について触れていきます。

デジタルツイン

デジタルツインとは、バーチャル空間上に「デジタルの双子」を作り出す技術です。センサーなどでポイントごとの情報を取得することにより、監視対象の状態を把握できます。 例えばトラックのデジタルツインを構築して各箇所の使用状況を可視化し、部品の劣化状況を監視することもできます。また、運輸工場のデジタルツインを構築し、作業のボトルネックを洗い出すことも可能です。

後続車無人システム

後続車無人システムは、先頭の1台だけドライバーが手動で運転し、後続車両は車間通信により自動で走行させる技術です。

1人で複数台のトラックを運転できるようになるため、大量の荷物を運搬する際の人件費を削減できます。国土交通省が主導で高速道路でのトラック隊列走行の実証実験を実施していて、今後の動向に注目の技術です。

MaaS

秋田県では自動運転のバス運行サービスが誕生しています。現在は部分的な自動運転に留まっていますが、今後、自動運転の範囲を広げていく方針です。

自動運転のバスが普及すれば、要求に基づいた経路でバスを運行するサービスなども出てくるでしょう。

これからの運輸業界に必要な人材

今後の運輸業界では、特に「スキルの学びなおし」ができる人材が重要視されるとみられています。

バスなどの運転手や電車の運転手など、マニュアルに基づいて定型的な業務を実施する業務は、近い将来IoTやAIが担うようになります。その中で唯一IoTやAIが代行できないのが、創造的な分野です。IoTやAIを使って今までの経験を活かしたサービスを創出できる人の重要性は高まっていくと考えられます。

逆に将来を見据えた「学び」と「行動」ができない人材はAIやIoTなどとの競争にさらされ、行き場を失う可能性があります。

もはや定型的な業務を担っている人にとっては、「スキルの学びなおし」を行うことを検討すべきでしょう。

この「学びなおし」を支援すべく、アメリカで1998 年から運営されている職の統合データベース「O*NET」を参考に、日本政府が主導で「日本版O*NET」を2020 年度に運用開始すべく準備中です。

アメリカの「O*NET」では約1,000 種の職種のガイド情報が提供され、個人の適性診断も可能。「日本版O*NET」でも同様の機能が期待されています。

時流に合わせた5G関連技術の適用を

2020年の5G実用化に向けて、デジタルツインや自動運転など、新技術が次々と登場しています。新技術が一般的になればなるほど、定型的な作業はIoTやAIが代行するようになるのは自明です。

これからの運輸業界では、定型的な作業をデジタルに任せ、現場のマネジメントや新ビジネスの創出をしていける人材が一層重宝されていくでしょう。

特にベテランの方は、新たなスキルを学ぶということに熱心になれないかもしれません。しかしながら、時代は常に変化しています。時代に合わせて柔軟な「スキルの学びなおし」を積極的に実施していきましょう。