あらゆるものがビジネスに!5Gで進む商社の収益ポートフォリオ健全化

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プロフィール
安藤隼人
某国内メーカーにてシステムエンジニアとして10年以上勤続中。現職の傍らITライターとしても活動。
英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

大規模な総合商社は、主に資源事業と非資源事業により経営を成り立たせていますが、収益を資源事業にある程度依存している商社もあります。 しかしながら世界情勢によっては、資源の価格が高騰する場合もあり、減収のリスクを回避するために、非資源事業に力を入れるようになってきました。

注目の集まる非資源事業の中でも、有望な新事業として挙げられているのが、5Gに関連するビジネスです。特にIoTを絡めた事業については広い分野に適用でき、複数の新規ビジネスが立ち上がっています。

英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

IoTの登場で進む収益ポートフォリオの健全化

IoTは、Internet of Thingsの略。センサーなどのデバイスによって全てのものがインターネットに接続されることを意味します。

IoTの登場により、世界中で多種多様なビジネスが生まれています。IoTはあらゆる分野に適用でき、さまざまなシーンでデータを採取可能なため、思わぬビジネスチャンスに繋げられる場合もあります。

また、5Gの性能を利用して大容量・低遅延・多接続の通信環境を利用することにより、ビジネスの可能性はさらに広がります。

近年話題になっているMaaSなどはその一例です。車から採取できるデータを連携し、自動運転によるモビリティ事業や保険事業などに活かしていくことができます。

今までは資源事業に頼っていた大規模な総合商社も、IoTの登場によって非資源事業の割合が増えてきているのです。

5Gで盛り上がる商社の新事業

5Gは5th Generationの略で、第5世代通信の呼称。超高速・超低遅延・多数同時接続を特徴とした通信を実現します。総務省発行の『第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望』によると、5Gの主要性能は次のように定義されています。

  • 超高速:最高伝送速度10Gbps
  • 超低遅延:1ミリ秒程度の遅延
  • 多数同時接続:100万台/㎢の接続機器数

5Gの普及に伴い、IoTは今まで以上に普及が進んでいくと予想されています。

5Gと連携した各社の非資源事業

ここからは、5G、特にIoTを中心とした各商社の非資源事業についてお伝えしていきます。

火力発電所へIoTプラットフォームを導入して施設管理

火力発電所では、発電機器の保守や運転の効率化についての課題が長く存在していました。

突然の故障が発生すると、発電機能を停止せざるを得ない場合もありますし、部品の劣化による発電性能低下も問題でした。

この課題を解決し、世界に点在する火力発電所の運転効率を1%でも上げられれば、数十億円規模のコスト削減効果があります。

そこで、機器内の温度、振動、液体やガスの圧力レベルなどの状態をセンサーで監視し、人手では見抜けない小さな異常さえも検出し、故障の予知を可能にするIoTプラットフォームの導入が進んでいます。

故障を予知できれば、電力需要が高い時期を避けたメンテナンスができます。また、保守作業の時間を最小化できるため、大幅な収益改善に繋がるのです。

各種データから燃料価格や天候を考慮した発電計画の支援も行い、生産効率の向上に寄与します。

まだ現時点では、このような運転効率化システムの利用は限定的です。しかしながら、今後は世界中の火力発電所に適用が進み、原子力や太陽光など、他の発電所にも利用されていくでしょう。

エレクトロニクス商社の参画で進む製造業のIoT化

IoT化の顕著な分野として挙げられるのが製造業です。

IT専門調査会社のIDC Japanによる『国内IoT市場における用途別/産業分野別予測』では、製造業のIoT市場規模は2018年~2023年の年間平均成長率が13.3%。2023年には、11兆7,915億円に達するとみられています。

このIoT化を後押ししているのがエレクトロニクス商社です。センサーや工業機械のノウハウを活かし、IoTなどのICTを取り入れて生産を効率化する『スマート工場』を目指して対応しています。

今後、スマート工場化は大規模工場から進んでいくと予想されています。

IoTの適用がさらに進むと、バーチャル空間に工場の「双子」を作り出す『デジタルツイン』も普及していくでしょう。デジタルツインを用いれば、工場の稼働状況を常にクラウドシステム上から把握でき、さらなる運転の効率化に役立てられます。

畜産IoTに挑戦する商社も

国内の畜産業では、生産者の高齢化や後継者不足が深刻です。食肉需要が増加する一方で農家戸数の減少により、1戸あたりの管理頭数が増えてきています。

そこで飼料販売などで農家と接点を持つ商社が、IoTによる管理負担の解消に乗り出しました。

例えば牛の首にセンサーを装着し、発情・菜食・飲水などの行動状態を検知し自動で記録するというサービスがあります。深夜など観察が難しい時間帯でも自動でデータを記録できるので、農家の作業負担軽減や病気・障害の早期発見などに役立っています。

今までは、農家の勘に頼っていた家畜管理のノウハウをデータ化し、可視化できることで、後継者育成にも役立てられます。

5Gを活用した非資源事業に対応できる人材とは

商社の人材は、当然ながら商談をまとめる能力が第一とされており、非資源事業に関しても商談を成立に導ける人材が重宝されてきました。今後はIoTが各分野に絡んできます。IT関連の知識はどの分野の人材も必須でしょう。特に5GやIoTの知識があるかないかで、ビジネスの幅は大きく変わってきます。

IoTの登場で「世界の全ての企業はIT企業になる」という言葉もあるほどです。5Gを活用した非資源事業を伸ばしたいならば、IoTは避けては通れない道でしょう。

2018年春の総合商社の新卒採用では、AIやIoT、ロボティクスといった分野の大学院で学んでいた理系人材を採用する動きが大きくなっていました。5Gの関連分野で商機が多数見込まれる昨今では、当然の流れといえます。

ただ、専門的な教育を受けていなくても、自身のITリテラシーを高めることで、5G関連分野の商機に食い込んでいくことは可能です。

経済産業省も、高度な情報処理技術者の育成だけでなく、『ITリテラシースタンダード』の創設など、ITリテラシーの底上げに取り組んでいます。

また、同省が打ち出している『第四次産業革命スキル習得講座認定制度』では、専門性を身に付けキャリアアップを図りたい社会人に向けて、専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業大臣が認定しています。

認定講座はエンジニア向けの講座ばかりではなく、『AIビジネスアドミニストレータ養成講座』や『IoT活用講座』など、技術導入・活用に向けての知識を習得する講座も複数用意されていますので、ぜひ受講してみましょう。

5Gを活用して新たな分野への積極的なチャレンジを

商社に勤務し、今まで直接ITに触れる機会がなかった方には、5Gの活用は難しい部分もあります。しかしながら、どの商社にとってもIoTをはじめとする5Gの登場は大きな商機です。このチャンスを逃す手はありません。

5Gで何ができるのか、IoTを活用して実現できることは何かを頭に入れておき、商談の際に可能性を探っていきましょう。