IoTで建設・土木分野の就業環境を改善!最新の建設・土木現場とは

目次

プロフィール
安藤隼人
某国内メーカーにてシステムエンジニアとして10年以上勤続中。現職の傍らITライターとしても活動。
英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

建設・土木の工事現場における作業自動化と聞いて、どのようなことを思い浮かべますか?

工事現場の重機類は、通常は人が操作するものです。工事現場の作業自動化などということは、今までは夢物語でした。しかし近年は、2020年からの5Gサービス開始を追い風としたIoTの普及が加速度的に広がったことで、重機類も遠隔で操作できるようなシステムが導入されはじめています。

現在、IoTのような最新技術を応用して、建設・土木現場の就労環境を改善する取り組みが各社で推進されています。国土交通省での建設・土木分野のスマート化の取り組みとして『i-Construction』と呼ばれる施策では、就労環境改善が重要項目として定義されています。

今回はIoTを中心に最新の建設・土木現場の内容についてお伝えしていきます。

国土交通省が推進するi-Constructionとは

『i-Construction』とは、全ての建設生産プロセスでICTや3次元データ等を活用し、2025年までに建設現場の生産性2割向上を目指すという取り組みです。

次の2つがi-Constructionの主な目的です。

  • 新3K(給与がよい、休暇がとれる、希望がもてる)の魅力がある建設現場作り
  • Society5.0(※1)を支えるインフラマネジメントシステムの構築

IoTやAIなどICT(※2)を駆使することで、建設・土木分野の労働環境改善を狙いとしています。

※1:仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会
※2:Information and Communication Technologyの略で、通信技術を利用したコミュニケーション

建設・土木現場にIoTを導入する経営的メリット

それでは、IoTが建設・土木現場にもたらす経営的メリットはどのようなものがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

人件費の削減

重機の遠隔制御が可能になると、作業員は必ずしも現場に赴く必要がなくなります。無理なく勤務できる事務所にコントロールセンターを設けておけば、人を効率よく現場に割り当てることが可能になり、余計な移動費用もかからなくなります。

『i-Construction委員会報告書』の概要資料によれば、遠隔操作された重機の日当たり施工量はおよそ1.5倍、作業員数は3分の1になったというデータもあります。今後5Gが実用化されれば、IoTを含むICTの活用は加速します。

ただし、現場を完全に無人にはできません。通行人などが不測の事態で負傷するなど、現場で異常事態が発生した場合には、人の手による対応が必要です。

人的安全の確保

『i-Construction委員会報告書』の概要資料によれば、建設・土木の分野は他分野に比べておよそ2倍の事故発生率を記録しており、企業の責任が問われる事故も多数あります。

しかし遠隔操作での作業が可能になれば、現場管理さえしっかり行うと作業員は現場に行かずに済むので、事故の可能性は大幅に減少し、移動に伴った交通事故などのリスクもほぼゼロにできます。また、炎天下など、過酷な環境下での作業は必要なくなり、熱中症のリスクもほぼゼロにおさえられます。

しかし作業上の理由から現場に行かざるを得ない時もあります。その場合は心拍計や体温計などを作業員に携行させれば、作業員の体調急変を検知可能です。

保全タイミングを予知できる

IoTにより機器の使用状況を細かく採取することで、『デジタルツイン』と呼ばれる技術を使用できます。デジタルツインとは、バーチャル空間に『双子』のようなオブジェクトを作成し、部品の交換時期などを予測するテクノロジーです。センサーは一個数十円〜数百円で準備できます。一旦システムを構築してしまえば、システム範囲を拡大するのには、さほど費用はかかりません。

品質管理の自動化

従来は、品質管理のために担当者が現場を回って、逐一状況を記録していました。しかし近年では、重機に搭載できるレーザー計測システムが既に開発されています。

重機の位置管理システムと併用すれば、作業がどこまで終わっているかを自動的に報告することが可能です。これらを活用することで作業員が現場において目視で確認する必要もなくなっていきます。

建設・土木現場での各種センサー活用

ここでは、建設・土木現場で各種センサーがどのように活用されているか、みていきましょう。

重機の遠隔操作

ここまでに触れてきた遠隔操作は、重機に通信機やカメラを取り付けて対応します。将来的には、無人で建設・土木作業を実施できると予想されています。

2020年からの5G実用化に向けて、重機を製造している各社では実証実験が進行しています。カメラ映像を組み合わせて、重機の周囲360度を再現できる技術も登場しています。

安全管理の自動化

心拍センサーや傾きセンサーを作業員に携行させ、リアルタイムにヘルスチェックを行うことが可能です。トラックの接近など危険を検知して作業員に知らせることもできます。

湿度データや天候データなどビッグデータを使用した災害予知などでも事故を予防できます。さらには現場のデータをクラウドに保存しておき、別案件にデータをフィードバックして活用することもできます。

保全タイミングの予知

工事現場の設備や機器にセンサーを取り付け、稼働回数など状態を知るためのデータを計測し、ビッグデータ化して故障や不具合などを事前に予知します。 ショベルカーなどの重機であれば、一台の走行距離や各部位の動作回数などを記録し、部品の耐性情報と比較して保全タイミングを予知します。

品質管理の自動化

現場の重機にカメラやGPSシステムを取り付け、作業状況と位置情報を把握できます。各重機の動線履歴を残しておけば、業務の効率化も検討可能です。

動画は研修や教育の際にも使えるため、資料作成の時間を短縮し、現場の生データを利用した質の高い教育を実施できます。

建設・土木現場ではIoT導入後も技術者が一定数必要

IoTを導入すれば作業は人の手を離れ、機械で自動対応できることが多くなっていきます。

しかし、重機の操作などは建設機械施工技士などの資格が必須で、加えてデータから現場の異常を判断するにも有識者が必要です。ただし、データの取得目的さえ把握できていれば、データの内容はわかりやすいため、有識者であればデータから現場の状態を見通せます。

『i-Construction委員会報告書』の統計データによれば、技能労働者約340万人のうち、今後10年間で約110万人が高齢化等により離職すると出ています。現在の建設・土木の現場では、従来の3Kを払拭し、新しい3K(給与がよい、休暇がとれる、希望がもてる)を早急に定着させ、有識者の離職に歯止めをかけることが求められています。その観点からもIoTの力は必須といっても過言ではないでしょう。

大きな企業であれば社内IT部門を抱えている可能性もあります。しかし自社内にIT部門が存在しない場合は、外部からのITスペシャリスト採用も検討しましょう。特に建設・土木分野は、現場に関わるシステムの構築経験が豊富な人材の採用が効果的。現場の人員にとって使いやすいシステムは何か理解している人材であれば、IoTシステムを単純に導入するだけでなく、現場の事情を考慮したIoTシステムを構築できるでしょう。

また現場の職人は、コンピュータの使用に慣れていないこともあるため、労働環境の改善にあたっては、根気強い説明が必要になることもあるでしょう。

i-Constructionへの取り組みで建設・土木業界を働きやすく!

IoTを含むICTを積極的に取り入れることで、現場の重機の遠隔操作や品質管理の自動化などで労力を削減し、働きやすい建設・土木の就業環境の構築を目指していけます。また、デジタルツインなどで保全タイミングを予知することにより、突発的な故障の確率を抑制でき、事故や作業中止などのリスクを最小限にとどめられます。

IoTをはじめとした最新技術により、人手が必要な作業はどんどん自動化されていく傾向にあります。しかしながら、重機の操作や現場の状況判断に経験者が必要なことも事実なので、新3Kを早急に適用し、人材流出を防ぐことは必須です。IoTシステムのインフラ構築や保守・管理に対応するため、必要に応じてITスペシャリストの採用を検討する必要があるでしょう。