伝え方で結果が変わる!相手のやる気を引き出す「ペップトーク」とは

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プロフィール
一般財団法人日本ペップトーク普及協会
専務理事/浦上 大輔
北海道大学大学院修了(教育学修士)、理学療法士。健康・医療・介護の現場、StretchPole®の㈱LPN代表取締役、日本コアコンディショニング協会理事長を経て現職

厳しい言葉でメンバーを奮起させようとしても、思うような成果をあげることは難しくなっています。そこで今注目されているビジネス書「相手の結果を100%引き出す 実践!PEP TALK」の著書である浦上大輔さんに、メンバーなどのやる気を引き出す“ペップトーク(PEP TALK)”についてお話を伺いました。

ペップトークとは

日本では聞き慣れない「ペップトーク」とは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

アメリカ発祥のペップトークとは元々なにかと言うと、スポーツの試合前に監督が選手を励ますトークのこと。試合前のロッカールームなどで日常的に行われ、基本的にポジティブなことを短くわかりやすい言葉で選手に伝えます。

選手たちを励まして鼓舞するようなシーンを、アメリカの映画やドラマで観たことはありますが、なぜ日本のビジネスシーンに必要とされているのでしょうか?

スポーツをはじめ、会社や子育てなど、相手のためを思って伝えている言葉が、ついついマイナス要素が含まれる内容のトークになってしまうことがあります。リーダーやマネージャーなどのポジションに就いている人の中には、そう育てられた経験があるため、同じような伝え方で相手を奮起させようとするのが日本人には多く見受けられるのです。

しかし、時代が進むにつれて昔ながらの叱咤激励が若い世代には伝わらず、思うような結果が出ない状況が生まれてきました。そういったところから、まずは“言葉がけを変えていこう”というのが、ペップトークを取り入れたい企業が増えている要因だと思います。

やる気を引き出すペップトークの実践方法

ペップトークはシーンで使い分け

言葉がけを変えていくペップトークは、どのようなシーンで活用していくべきなのでしょうか?

シーンに分けると2つあります。1つ目は、本番前の背中を押すような言葉がけ。これは「これから大事な商談がある」「一山越えないといけない案件がある」「自分にとってチャレンジングな提案をする」といった時に“よし!やるぞ!”となれるような言葉をかける。これは元々のペップトークの形です。

とはいえ、毎日のように本番があるわけではないので、普段からの言葉がけが大事になります。「この人に言われたらやる気が出るけど、あの人に言われてもやる気が出ない」ということはある。相手との関係が後者になってしまったらペップトークを活用しても効果は期待しづらくなります。なので、日頃からどういう言葉がけをするかということが重要。このように、“ここぞの時の言葉がけ”と“普段からの言葉がけ”に分けてペップトークを活用する。どちらも大切にして言葉がけすることで、ペップトークの効果は高まっていきます。

4つのステップで言葉がけ

多くの企業が育成に力を注いでいますが、どのような言葉を最初にかけるといいのでしょうか?

言葉がけには4つのステップがあります。「受容」「承認」「行動」「激励」という順番で相手に言葉がけすると効果的なことが証明されています。最初の「受容」というのは“受け入れる”ということ。相手の気持ちや相手が置かれている立場を受け入れることから言葉がけは始まります。次に「承認」です。これは“相手ができているところを認める”ということ。そして3番目が「行動」。“相手にしてほしいことを伝える”をしていきます。最後に「激励」があり、“相手の背中を押す”のです。

このステップを正しい順番で行わなければいけないのですが、「受容」と「承認」がなくて、いきなり「行動」に行くパターンが多い。例えば「これやっといて」とか、「なんでこれできてないんだ」といった会話から始まってしまうのですが、まずは相手が置かれている状況や相手の感情をしっかり把握する必要があります。

遅刻してきた部下に「何してるんだ」と言うのではなく、「遅刻したんだね、どうした?」とまず聞いてあげる。そうすると、遅刻した側も理由を話そうとしてくれます。また、重大な仕事の前でものすごく緊張している部下に「緊張したってしょうがないんだよ」といきなり言ってしまうと、この人とは話したくないと思われてしまうので、「緊張しているんだね、この場面なら誰でも緊張するよ」と、一度受け入れるということが大切です。

受け入れてくれると「この人なら信頼できるかも」と思えますね。特に緊張や不安感が高まっている時には、心に響きそうです。

そうなんですよね。緊張したり、不安な気持ちになったときは、“心”という器にマイナスの感情がたくさん入ってしまいます。よく「気持ちがいっぱいいっぱい」と言いますが、そういう状態のときに「大丈夫、できるよ!」とプラスの感情を周囲の人は入れたがる。けど、心の器は満杯なのでプラスの感情が入るスペースはありません。

そこで、「心配だよね、自信ないんだよね」と相手の気持ちから不安な気持ちを汲み取ってあげると、少しスペースができる。そのスペースができたところに「これはある意味、君にとってチャンスなんじゃないかな。今までの経験も活かせるし、やってみようよ!」と、相手ができることを認めてあげるのです。この「受容→承認」という順番がすごく大事。受け入れて、汲み取ってあげることで、プラスの考え方ができるようになります。相手が「できるかもしれない!」と思えてきた時に、初めて「行動」を提示します。

「行動」ではどのような言葉がけをするといいのでしょうか?

3番目の「行動」でよく使われている言い方が「◯◯するな」です。「絶対にミスするなよ」「今度ミスしたら飛ばされるよ」と言われてしまうと、言われた側はミスのイメージしかつきません。しかし、言っている側は「ミスしないように上手くやり切ってほしい」「ミスしないで相手に思いを伝えてきてほしい」と、「ミスするな」に続く言葉が本当はあるはずなのに、伝えていない。この言い方をプラスに変えていくことが「行動」では重要になります。例えば「遅刻するな」という代わりに「5分前集合ね」と言い方を変えると、前向きな気持ちになるのです。

そして最後の「激励」では、相手の心理状態で伝え方を判断します。やる気になっていたら「さぁ行ってこい!」という感じで背中を押してあげる。もし、できるかどうかわからない不安そうな様子なら「大丈夫だよ、みんながついているから」という感じで背中を押してあげる。“強く押す”か“優しく押す”かの違いはありますが、最後に背中を押して送り出してあげることがペップトークの基本的なやり方です。

承認のピラミッドを意識づけ

順番通りに行うことで、ペップトークは高い効果を発揮するのですね。では、どんなことをさらに意識すると、より高い結果につながるのでしょうか?

私たちの中で「承認のピラミッド」と呼んでいるものがあります。それは、「存在承認・行動承認・結果承認」というもの。自分という存在があって、こうありたいという思いがあって、行動が生まれて結果がでる。この一連のサイクルがある中で「結果がすべて」と言う人が上司だったら、部下は「存在」や「思い」まで否定された気持ちになります。それでは「自分よりも成果が大事なんだ」と上司を見るようになってしまうのです。

そうではなく「今はまだ結果が出てないけど、君が普段こうやって行動していることはわかっているし、こんな思いで取り組もうとしていることを知っているよ。君がこのチームにいることで、みんながどれだけ楽しく仕事ができているか理解しているから、結果が出るまでがんばろう」と、“存在・思い・行動”について見てくれる上司ならば部下はついてきます。このように承認のピラミッドを意識して言葉がけすると、部下のやる気はどんどん引き出されていくのです。

上司から励ましの言葉などをもらえるとやる気が湧きますが、このようなコミュニケーションは対面だけではなくチャットやメールでも効果的なのでしょうか?

相手が何を大事にしているか、ということを気にかけることが大切です。例えば、同じ空間にいて対面で話すのが好きな人もいるし、電話でもいい人もいる。直接会わなくてもSkypeで顔を見られたらいい人もいるし、チャットやメールなどの画面だけのやり取りでもいい人もいます。なので、どれが効果的かということは一概には言えませんが、一般的には対面で話すのが効果的です。

最近では色んな場所にいても仕事ができるようになってきているので、もしチャットやメールでやり取りする時は、用件だけを伝えるやり取りにならないように気をつけてください。やり取りの中に意識して「受容」や「承認」の言葉を入れるだけで、相当なコミュニケーションが取れます。冷たく感じないように“了解”の漢字2文字だけで送らず、スタンプや顔文字をつけるなどの工夫をするだけで印象は大きく変わります。

ペップトークの実施事例

これまでご担当されてきた中で、ペップトークによって大きな変化があった企業様について教えてください。

私たちの中では、前向きな言葉のペップトークの反対という意味で、後ろ向きな言葉をプッペトークと呼んでいます。日々のコミュニケーションの中で前向きな言葉が出てきたら「◯◯さん、ペップですね!」と褒めたり、その逆で後ろ向きな言葉が出てきたら「◯◯さん、プッペになってますよ」と指摘したり。そういう取り組みを、ある企業様の営業所で取り組んでもらいました。

取り組んだのは15名の営業チームだったのですが、始めた当初は全国400営業所中300位と、成績は下のほうでした。それを、例えば「みんなで頑張ろう!」と背中を押す言葉が出たら「ペップですね!」と周囲のメンバーが言ったり、「こんなの無理だよ」とネガティブな言葉が出たら「プッペになってますよ」と注意したりと、半年続けてもらいました。すると、半年後に全国で2位になったのです。

プッペトークをしてしまうと一緒に働くメンバーから指摘されるので、何か言おうとした時にペップトークに変えて話すように変化が見られた。そういう意識が芽生えたことで成績にも大きな変化が現れた良い事例です。ただし、気をつけなければいけないのは、例え後ろ向きな言葉を言ってしまったとしても、攻撃をしてはいけません。「受容」することを大切にして、そういう発言をしてしまうこともある、ということを受け入れる共通認識を持つことが大切です。

ポジティブな言葉がけが業績をも変えてしまうんですね。営業職以外で変化が見られた職業があれば教えてください。

今、社員30名、契約社員も含めると100名規模の土木関係の試験を行う研究所を担当させてもらっています。その企業様で取り組みを始めた当初、社内では後ろ向きな言葉が当たり前のように飛び交っている状況でした。そこで、言葉がけを変えましょうと社員の方々にお話しました。その時の反応は「は?なにそれ?」といった感じ。正直、この人たちを変えていくのは時間がかかるだろうな、というのが私の最初の印象です。

まず始めに取り組んだのは朝礼。「今日の連絡事項。2人組で安全点検。以上」といった感じの朝礼で、社員に朝からテンションは上がるのか聞いてみると、上がらないと答えたのです。そこで、朝礼に直近24時間以内に起きた良いことを報告し合うGOOD & NEWという取り組みを始めました。とはいえ、「は?なにそれ?」という反応をしていた社員が素直に動くわけもなく、最初は5名でのスタートです。

それをやり続けていると反対していた社員も参加するようになり、徐々に人数が増えて今では全体で取り組むようになりました。日々の生活の中から良かったことを見つけるようになり、朝から良いことを言おうとするようになり、「それ良いね!」と承認し合うようになったことで、朝礼が明るく変化。そして、半年ほど経った今では社内の雰囲気も変わってきています。前向きな言葉が社内に流通することで、後ろ向きな言葉が飛び交う文化自体も変えられる。ペップトークには、このような効果もあるのです。

ブルーカラー系の業種では厳しい言葉で社員を奮起させようという文化がまだまだありますが、そうした根強い文化も変えられるペップトークの力に様々な可能性を感じられました。本日はありがとうございました。

時間をかけずに結果が変わるペップトーク

育成に力を注ぐために新しい手法を取り入れて、時間をかけてやろうとする企業は多い。でも本当は、時間をかけずに社内が変わっていくのが理想だと思います。言葉がけを変えるだけで、相手のやる気を引き出し、結果が変わる。このような素晴らしい変化をもたらしてくれるペップトークは、すべての企業が簡単に取り入れられるもの。これからの時代を勝ち抜く企業の競争力を高めていくためにも、取り組んでみてはいかがでしょうか。