それでも雇用を守るべき理由 新型コロナウイルス感染症関連の補助金・助成金を活用し雇用を維持しよう

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プロフィール
行政書士/井手 清香
滋賀大学経済学部ファイナンス学科卒業。大手システム会社に勤務後、退職。ライターとして各種記事を執筆。2014年、ライター事務所「ライティングスタジオ一清」を開設。2018年度行政書士試験合格、2019年、滋賀県大津市に「かずきよ行政書士事務所」を開業。法律関連のライター兼現役の行政書士として活躍中。楽しく、分かりやすい法律の記事をお届けするために、日々奮闘中。

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、雇用を維持することが難しくなっている企業も多いのではないでしょうか。 実際のところ、ニュースでも解雇された人が3万人を超えたとの報道があり、仕事を失くした人が増えています。 今回は、このような難局にあっても、できるだけ雇用を守るべき理由と、その方法を紹介します。

ちょっと待って!解雇をしないでほしい2つの理由

弊所にも、雇用を維持するのが大変厳しいので解雇したいというご相談が増えました。中小企業の社長や個人事業主の方にとっては、スタッフを雇用しておいたとしても、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う規制が強まれば休業しなければいけないし、休業補償を支払うのも正直なところ手間とお金がかかってきついということでした。

これまで一緒に働いてきたスタッフを解雇するということで、かなり迷いもあるようです。解雇したいけれど、本当にそれでいいのかと悩んでおられる方が何人もお見えになりました。

その場合、私はできるだけ雇用を維持する方向で検討していただけるようにお話ししています。その理由は大きく2つあります。

新型コロナウイルス感染症への対策が一般化した後に事業を再開させるため

新型コロナウイルス感染症は、今後も流行の波を繰り返しながら、有効な対策が取られていくでしょう。新型コロナウイルス感染症への対策が一般化して従来通りの生活を取り戻せるようになれば、事業を再開する企業が多いと思われます。

それまでの間に経済的に力尽きて廃業や倒産する企業もあると思われますが、公的金融機関からの借入などで流行が収まるまで持ち堪えた場合、次に問題となるのは事業の復活を支える人材です。できれば、これまでに働いてくれたスタッフにまた活躍してもらう方が、一から業務を教えるよりも効率的と考えられます。

雇用を維持した場合の補助が手厚くなってきたため

2つ目の理由は、雇用を維持した場合のさまざまな補助が手厚くなってきたという点です。解雇をせずに頑張る企業については、国や自治体による支援を受けることができます。

詳しくは次の章で解説します。

雇用を守る企業向けのさまざまな支援制度

次に、雇用を守る企業向けの補助金や助成金などの支援制度について解説します。

雇用調整助成金の特例と緊急雇用安定助成金の創設

雇用を維持した場合の補助金や助成金といえば、厚生労働省の雇用調整助成金があります。

新型コロナウイルス感染症流行による休業が起こり始めたくらいの時期から、雇用調整助成金の特例が創設されました。

通常の雇用調整助成金と違う点としては、事前に計画を届け出る制度から、事後に届出、申請を行う方法になったことです。さらに、中小企業は助成率が100%まで引き上げられて、従来の雇用調整助成金よりも助成率がアップしました。

これまでは、雇用調整助成金は正社員の休業補償にしか使えませんでした。現在では非正規職員も緊急雇用安定助成金(雇用調整助成金と似たような仕組みの別の助成金制度)の対象となり、休業補償の助成を利用できます。

参考:厚生労働省|雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)

自治体による雇用調整助成金の上乗せ措置

自治体によっては、雇用調整助成金の上乗せ措置を作ったところもあります。

雇用調整助成金を受給した企業の場合は、自治体による上乗せ給付の対象になります(追加の要件が必要な場合もあります)。主な要件としては、地方税の滞納がないことなどが挙げられます。

上乗せ措置のなかには、社会保険労務士への報酬を含める自治体も出てきました。「自社の労務係が出社できない」、「現在の業務で手一杯なので雇用調整助成金の計算が大変な負担でできない」という企業にとっては、社会保険労務士へ計算と代理申請を依頼することが考えられます。

依頼するためには一定の費用がかかるので、依頼をためらってしまう企業も少なくありません。そのような企業向けに、例えば「北斗市雇用調整等助成金」では、雇用調整助成金の支給決定金額の20%以内(1事業所につき1会計年度20万円を限度)の範囲内において、社会保険労務士への依頼費用を補助します。

参考:北斗市|北斗市雇用調整等助成金

従業員本人が申請する新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金も登場

とはいえ、休業補償をどうしてもできないという企業もあるでしょう。解雇はしないにしても、休業補償が経済的にできない場合にはどうしたらよいのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金ができた背景には、諸事情により企業が直接休業補償をできない従業員に対して、国が補償する必要があるという考えがあります。

具体的には、雇用調整助成金を活用しようにも、すでに手元の資金が枯渇し、休業補償分を建て替える資力がない場合などです。雇用を維持するための補助金や助成金の多くは、いったん支払った分の経費を手元で建て替えなければいけません。

イメージとしては、まずは従業員に休業補償をして、それから雇用調整助成金や、緊急雇用安定助成金、さらに自治体の上乗せ措置などを活用し、実際に支払った証拠を提出したうえで、助成金や補助金が給付されます(本来の雇用調整助成金は、計画届を事前に提出しますが、現在は計画届を後から出してもよいことになっています)。

つまり、立て替えるだけのお金すら、もう企業に残っていない場合は、雇用調整助成金を使いたくても使えません。

このような場合には、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が使える可能性があります。中小企業の従業員が対象であり、給与の8割が保障されます。

雇用調整助成金よりも助成率は低くなりますが、従業員の生活に必要なお金の一部を補填できます。

対象要件には「事業主の指示により休業し当該休業に対して休業手当が受けられない中小事業主に雇用される労働者」とあります。

ただし、まずは雇用調整助成金の活用を検討してほしいという趣旨の説明書きが厚生労働省のホームページにも記載されているため、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は雇用調整助成金をどうしても使えない場合の対応になるでしょう。

参考:厚生労働省|新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

申請方法は本人申請と事業所経由申請の2種類

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請には、従業員本人が直接厚生労働省に申請する方法と、事業者経由で申請する方法があります。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請にあたり、従業員から協力を求められた場合は、必要な対応をしましょう。もし協力をしない場合は、厚生労働省のホームページに記載があるとおり、調査がなされる場合があります。

企業としては、休業手当を支払わなかったと認めることが、違法行為を容認しているようで違和感を持つかもしれません。コロナ禍という、企業にはコントロールできない外的要因による休業の責任まで負うのはおかしいと言う意見ももちろんあります。

厚生労働省は、「支給要件確認書における、使用者の「休業手当を払っていない」旨の記述や、労働者の「休業手当の支払を受けていない」旨の記述は、労働基準法第 26 条の休業手当の支払義務の有無の判断に影響することはありません。」という見解を出しています。支援金は労働者の生活を保護する意味合いもあります。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が支給されるまでに時間がかかってしまいます。事業所による証明に協力をしなければ、有能な従業員がやめてしまうかもしれません。

従業員に協力しなかったことで、社会的な評価も悪くなるでしょう。支援金給付のために必要な協力は惜しまないようにしましょう。

雇用を守るためにできるその他の取り組み

雇用調整助成金などの活用のほかには、直接雇用を守るための補助金として出ているものではありませんが、自治体の各種補助金や中小企業庁の補助金を活用することをおすすめします。

というのも、自治体の各種補助金や、中小企業庁の補助金には、補助対象事業の委託費が経費として含まれているものがあります。最近では、補助金の申請主体となる業種は限定されるものの、文化庁の補助金(「文化芸術活動の継続支援事業」)にも、人件費が経費の対象になるものがあります。

これらの補助金は要件をそろえれば必ず支給される助成金とは異なるため、事業内容によっては採択されないこともあります。事業内容はアイディア勝負ではあるのですが、補助事業として採択されれば自社の負担をぐっと抑えて事業を行うことが可能です。

さらには、雇用関係にないスタッフ(例えば業務委託でこれまで仕事を依頼してきたスタッフがいる場合など)においても、委託費や人件費として計上することで、補助採択事業の仕事をしてもらうことができるでしょう。

実質的に、これまで付き合いのあったスタッフ(契約形態が業務委託であったとしても)に、仕事をしてもらい、その人の生活を維持できます。企業としても、これまで関係を構築してきた貴重な人材を手放さずに済むでしょう。

結論として、補助金を使って、企業が新しいことに取り組むことにより維持できる雇用や仕事もあるということです。

参考:文化庁|文化芸術活動の継続支援

※令和2年12月11日(金)で申請受付は終了しております。

まとめ

今回は、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く非常事態においても、雇用を守るべき理由を紹介しました。

アフターコロナにおける事業の復活を視野に入れると、できる限り雇用を維持した方がよいと考えます。雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金は、雇用を維持するために使える方策のうちの1つです。

一方で、さまざまな事情により雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を使えない企業もあります。この場合は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の検討をしましょう。事業者経由での申請方法もあるので、従業員から協力を求められた場合は対応してください。

その他の補助金を活用することで、結果として雇用や仕事を維持することも可能だと考えられます。

アフターコロナを視野に入れ、この難局を乗り切っていきましょう。