スマートシティやドローン特区が話題!5Gがもたらす公共・公益分野への影響

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プロフィール
安藤隼人
某国内メーカーにてシステムエンジニアとして10年以上勤続中。現職の傍らITライターとしても活動。
英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

2020年の実用化を目指して開発が進められている5Gは、公共/公益の分野にも大きな影響を及ぼすと予想されます。5Gが実用化されると、超高速・低遅延・多接続の通信環境が実現。飛躍的に収集できるデータ量が増加するのは確実です。なかでも公共機関が収集するデータは様々な用途への活用が期待されています。

5Gが公共・公益分野にもたらす影響

5Gが実用化されると、超高速(10Gbps)・低遅延(1ms程度)・多接続(100万台/㎢)という通信環境が実現されます。

特に、公共/公益分野の業務における情報収集の面では、センサーやカメラを街に設置することで、膨大な量のデータが採取可能。今までになかったスマートシティの仕組みも実現できるようになり、効率化が図れると考えられています。

また、5Gを活用したドローン特区は、物流業界にとって大きな変革のきっかけになり得る施策です。

ドローン特区は国家戦略特区のひとつ。国家戦略特区とは「産業の国際競争力の強化」「国際的な経済活動拠点の形成促進」を目的として指定される特別区域です。事業が規制緩和の対象になれば、他のエリアではできない事業ができます。

分野でみると、「都市再生」「創業」「外国人材」「観光」「医療」「介護」「保育」「雇用」「教育」「農林水産業」「近未来技術」に大きく分類されます。ドローンについては「近未来技術」に分類され、2019年3月に開催された「近未来技術実装関係省庁連絡会議」にて「近未来技術等社会実装事業事例集」が公開されています。

国家戦略特区の認定区は2020年現在で、東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、新潟市、養父市、福岡市・北九州市、沖縄県、仙北市、仙台市、愛知県、広島県、今治市の12区域です。

ドローン特区を指定して電波法や航空法などの制限を特区限定で緩和することで、実証実験や実用化を促進するねらいがあります。

また、ドローン特区には区域ごとに国家戦略特別特区会議を設置。認可をスピードアップし、スムーズな実証実験やサービス化を可能にしています。

公共/公益分野への5G適用により進むビジネス効率化

5Gで公共/公益分野での情報収集が質・量ともに向上すれば、企業にもメリットが生まれます。例えば、スマートシティの実現。混雑する時間を避けた移動や、災害時の適切な対応など、複数の効果が見込めます。また、ドローン特区により地域は限定的ですが、ドローンを使ったビジネスに取り組みやすくなります。

公共/公益分野への5G適用事例

公共/公益分野への5G適用事例は、どのようなものがあるのでしょうか。順番にみていきましょう。

①ドローン特区

ドローンに期待されていることは、配送、測量、農業、警備、人命救助、設備点検などの事項です。

このドローン事業を促進すべく、ドローン特区として10の都市が指定されています。

例えば千葉県千葉市のドローン特区では、高層マンションを対象にした配送サービスや、セキュリティへの利用、薬の配送などを、2020年を目標に実用化させる方針です。

ドローン配送は荷物の重量が大きな課題となっていますが、実用化されれば高層マンションへの配達が短時間で済み、配送業者の業務効率化につながります。

②インフラ劣化チェック

従来、橋やトンネルなどは人間の手で劣化チェックがなされてきました。しかしながら、巨大なインフラになるほどチェックには相応のコストがかかり、またチェック漏れなどのミスも発生する可能性が高くなります。

しかし、今後はAIと併用することで、人間では抽出できない劣化ポイントもチェックできるようになります。劣化の様子をAIに学習させ、現場で撮影した画像や映像から、劣化ポイントを抽出させるのです。

ドローンを使ったインフラ劣化チェックも可能になります。高所で危険が伴うチェックもドローンに対応させることで作業リスクを大幅に減らせます。

③スマートシティ

スマートシティは、先進的技術の活用により、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化します。各種の課題の解決を図るとともに、快適性や利便性を含めた新たな価値を創出する取り組みであり、Society 5.0の先行的な実現の場です。

その内容は、行政サービス、街路灯管理、公共施設のエネルギー管理、交通、雨水再利用、スマートパーキングなど多岐にわたります。

スマートシティの具体例をひとつずつみていきましょう。

  • スマートライティング
  • 交通量のセンサー情報を小電力無線、Wi-Fiでコントローラに送り、エリアを適切な明るさに調整して点灯。省エネの実現、自治体の電力費を削減します。

  • スマート信号機
  • 監視カメラとセンサーが歩行者をモニタリング。交差点を測定時間内に渡りきれない歩行者がいる場合は信号を延長。警察車内のビデオスクリーンを通じて手動で操作もできます。

  • スマートパーキング
  • LPWAなどを用いてセンサーから採取した駐車場の空き状況を提供。市の駐車場収入の増加、渋滞緩和。観光客の滞在時間増加による観光収入増加に貢献します。

  • スマートゴミ収集
  • LPWAなどを利用し、ゴミ収集箱の満杯/空き状況をセンサーがWi-Fi経由で提供。市のゴミ収集の経費節減に貢献します。

これらの仕組みが実現されれば、現在よりも人々は格段に生活しやすくなるとされています。

④防災対応における作業指示と遠隔支援

5G通信環境の活用で、災害復興時の重機の遠隔操作を実現。作業員が現地でリスクを冒して作業する必要がなくなります。

また、北海道総合通信局が発行した「地方創生の起爆剤、5G(第5世代移動通信システム)~その決め手は“ローカル5G”~」では、カメラドローン、AED運搬ドローン、トンネル人感センサーなどが挙げられていました。

高精細な映像センサーやドローン、救助隊員のウェアラブルカメラなどの情報によって、適切な救助が実施できます。

また被災状況の画像データなどを利用して、被災者に最適な避難経路情報を届けられます。

災害時の医療支援に5G VRの活用も検討。2019年8月27日に実証実験が実施されました。

日本政府の動向を追いながら事業を展開できる心構えが必要

公共/公益性の分野で今後の流れを担うのは日本政府です。

今後の5Gに対する日本政府の動向に注目し、直近の動向を踏まえて自社にとって最適な事業展開をしていける心構えが必要になってきます。

新しい事業を始めようとすると、制度や法律の壁に必ずといっていいほど阻まれるもの。ドローン特区をはじめとする国家戦略特区を活用し、世界の流れに後れをとらないように取り組む必要があります。

例えば、ドローンひとつとってみても、次のようなビジネスチャンスがあります。

  • 販売、レンタル
  • 4Kカメラ搭載モデルなど、ビジネスユースに耐えるものは数十万円以上になることも。そのため使用頻度の少ない人には、レンタルのニーズがあります。

  • 撮影
  • ドローンを使った空撮は、もはや一般的になりました。ドローンの操縦ができれば参入しやすい領域ですが、既にドローンの空撮を取り扱う業者も多くあります。

  • 農業
  • 1台数千万円以上する高価な無人ヘリの代替としてドローンが期待されています。用途は主に農薬の散布などです。

  • 建設
  • 測量や点検といった作業は、場所によっては危険を伴うもの。ドローンに代替させることで作業リスクを減らせます。

  • 配送
  • 各社で配送の実証実験が実施されています。商品配送にドローンが活用されれば、人件費の削減につながるケースも出てくるでしょう。

  • 防犯
  • ドローンに巡回させておき、侵入者を検知次第、警報の鳴動や警備員への通報、侵入者の撮影などが可能です。警備員への情報提供が的確に行われ、警備初動を支援します。

  • 災害や事故の調査
  • 災害や大規模事故では、事故調査に多大な危険を伴います。そこで活躍するのが小型で機動性の優れたドローンです。事故現場の状況把握が容易になるでしょう。

このようなビジネスチャンスを逃さないためにも、情報収集を怠らず、日頃から日本政府や関連する地方公共団体の動向には注目しておきましょう。

世の中の流れを見極め、自社にとって最適な対策を

5Gはまだ実証実験段階のプロジェクトが多いのは事実です。

しかし、公共機関が5Gを活用することで、収集できる情報の量や質が飛躍的に高まります。民間企業は、公開される情報を基に、自社の業務に役立てられるでしょう。

ドローン特区などの国家戦略特区の活用も今後はさらに重要になっていきます。

日本政府の動向をチェックし、5Gの通信環境によって取得できるようになった情報を自社に合わせて適切に利用していきましょう。