通信の大容量化で変わりゆく放送!
5Gがもたらすマスコミの変革
目次

2020年に実用化されるといわれている『5G』。この5Gを利用することで、マスコミの世界にも大きな変化が生まれます。
特に大きな変化が起こるのは「放送分野」です。5Gの持つ大容量・低遅延・多接続の性能があれば、より高精細な動画を送受信できます。また複数のカメラを無線ネットワークで接続することで、多視点での映像視聴が可能になります。他にも様々な可能性があるといわれています。
特にエンターテインメントやスポーツの分野でより効果を発揮するでしょう。既に2020年の5G実用化を見据え、5Gのネットワーク環境を利用した放送の実証実験が各社で実施されています。
5Gで変わるマスコミの放送

5Gは、「5th Generation」の略で、超高速・多接続・低遅延の通信環境を実現するネットワークの仕組みを指します。総務省発行の「2020年の5G実現に向けた取組」によると、具体的には次のような数値が挙げられています。
- 超高速:最高伝送速度 10Gbps (現行LTEの100倍)
- 多接続:100万台/km²の接続機器数 (現行LTEの100倍)
- 低遅延:1ミリ秒程度の遅延(現行LTEの1/10)
実証実験は既に多数実施されています。2019年11月1日には日本で5Gのネットワークを使った生放送が実施され、無事成功しました。
今後は、より精細な動画が個人のスマホなどで気軽に視聴できるようになることは、間違いないでしょう。
5Gがユーザー満足度をアップさせる

5Gの登場によって、大容量で高速な通信が可能になり、より滑らかで高精細な動画を通信できるようになります。5Gのサービスエリア内では、中継車の準備なしに中継用カメラ1台だけで安定した4K動画の中継ができるといわれているのです。
また大容量通信が可能になったことにより、1つのコンテンツを複数のカメラで撮影し、それぞれのカメラからの視点を提供するサービスも検討されています。
スポーツ観戦にARで情報を重ね、観たいプレーヤーを好きな角度から楽しめるサービスなどの開発も行われています。
これらの点から、ユーザーの満足度はこれまでよりも高まると予想されています。
他にも、テレビにカメラをつけることで放送を視聴する人の表情などから個人の反応を検知でき、マーケティングに活かしてユーザーの満足度を向上させられるなどの可能性もあります。個人情報の保護など検討すべき事項はあるものの、利用価値は十分に期待できるでしょう。
マスコミをサポートする5Gの最新技術

ここからは、マスコミをサポートする5Gの最新技術についてもみていきましょう。
モバイルトランスミッター
カメラ映像をモバイルネットワーク経由で伝送できる、モバイルトランスミッターが登場しました。
最大10回線のモバイルネットワークを同時に利用して映像を伝送でき、ネットワークを複数束ねることで、通信帯域と冗長性を同時に確保しています。
この機器自体は4G LTEのものですが、USBドングルを使用することで、5Gへの対応も想定されています。
中継車や衛星回線の利用は費用負担が大きく、また有線の通信ネットワーク敷設は工事を伴うため、導入に手間がかかります。モバイルトランスミッターで高精細な映像を伝送できれば、生中継はより身近なものになっていくでしょう。
メディア編集クラウドシステム
従来は、カメラ映像をメディアに記録し、放送局に持ち帰ってから編集工程に回していました。一方5Gの回線を使用すれば、データの高速・大容量通信が可能になるので、撮影後直ちに動画を放送局に送信でき、速やかに編集工程に入れます。
動画の編集環境もクラウドに用意できれば、場所に関係なく動画を編集できるようになるので、さらに効果があるでしょう。
モバイルネットワークのブロードキャスト機能
『モバイルネットワークのブロードキャスト機能』とは、通信範囲内の端末に同一コンテンツを一斉に配信する仕組みです。
普段のモバイル環境は『ユニキャスト』と呼ばれる機能を使用しています。ユニキャストでは、端末ごとに基地局と通信を行うため、複数のユーザーが同じ動画を視聴している場合などには通信数が多くなり、再生の遅延や画質の低下などが起きてしまいます。
ブロードキャスト機能を使えば、複数の端末、つまりは複数のユーザーが同時に接続していてもネットワーク混雑の影響を抑えてユーザーの視聴品質を高められます。
ニュースを素早く多くの端末に放送することも可能になってくるでしょう。ネットワークのアクセスポイントが放送アンテナの役割を持つため、東京タワーや東京スカイツリーなどの巨大な電波塔は、今後不要になる可能性もあります。
5G時代のマスコミに必要とされる人材とは

5Gが一般的になれば、今よりさらに気軽に誰でも動画をインターネット上に投稿していけるようになり、自分が発信したい情報を自分の視点で視聴者に届けられます。
高い取材力を持つジャーナリストが、個人として発信力を持つようなこともあり得るでしょう。
5Gの回線が実装されることで、マルチアングルでの視聴が可能になるといわれているため、様々な視点から情報をキャッチアップできるコメンテーターなども重宝されるはずです。
また、良質なコンテンツ制作ができる人材にも注目が集まります。
5Gを推進するには、相応の設備投資が必要になります。設備投資を回収するには、新しい技術を利用したサービスを導入し、ユーザーを固定化してユーザー一人あたりの単価を上げていく必要があります。
コンテンツ制作部門は、ユーザーの単価を上げるために必須です。良質なコンテンツ制作ができる人材は、今後さらに需要が強まるでしょう。
マスコミの報道をサポートする5G

5Gの超高速・多接続・低遅延という通信環境は、マスコミの報道において大きな助けになります。スマホで高精細な画像が視聴できるようになるので、特にテレビとデジタルの垣根はなくなっていくでしょう。
5Gの通信環境を利用して複数のカメラでスポーツの試合を中継し、ARで情報を重ねて目当てのプレーヤーを好きな角度から観られるサービスなども検討されています。
しかし、テレビもマーケティングなどで独自の真価を発揮していくことも考えられます。例えば、テレビにカメラをつけることで視聴者の表情を読み取り、ユーザーの満足度マーケティングに活かしてユーザーの満足度を向上させられるなどの可能性もあります。
5Gは様々な利用用途が考えられるため、利用想定シーンや事例などの情報を多く目にすると、自社ではどうすれば良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。
しかし、大事なのはユーザーの目線に立って考えることです。報道ひとつとっても、昼間勤務しているサラリーマンがターゲットなのか、お茶の間の高齢者がターゲットなのかで、テレビやスマホなど使用する媒体も決まってきます。5Gありきで考えず、使用媒体を決めたうえで5Gをどう利用するか考えていくべきです。
5Gに振り回されず、自社サービスのターゲットが求めているものを明確にして、行動していきましょう。