業界が根本から変わる?5Gが金融・保険分野に与える影響とは

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プロフィール
安藤隼人
某国内メーカーにてシステムエンジニアとして10年以上勤続中。現職の傍らITライターとしても活動。
英語の論文や各種展示会などから最先端の情報を仕入れ、IT業界の動向を追う。専門用語の羅列は控え、常に分かりやすく伝えることをモットーに各媒体にて執筆中。

5Gは金融業界と保険業界のあり方を大きく変えていきます。金融業界ではキャッシュレスの導入による実店舗との関係づくりが、保険業界では個人の細かいニーズに沿えるような新商品の開発が、それぞれ重要になってくるでしょう。これからの5Gによる業界の変化には常にアンテナを立てておく必要があります。

今回は5Gが金融業界や保険業界に与える影響について、みていきましょう。

5Gが金融業界や保険業界に与える影響

総務省発行の「5Gの利活用分野の考え方」によれば、金融業界ではキャッシュレス関連事項を中心に効果があるといわれています。さらに定型的な銀行業務については、5Gと連携したAIが担っていくと予想されています。

また、保険業界ではIoTや5Gなどの組み合わせによって、より適切な査定を実施できるようになります。顧客は店舗に足を運ばなくてもIoTやAIのサポートにより、保険商品の選定が個人でできるようになると予測されています。

5Gにより大きな変化が予想される金融・保険業界

5Gの登場によって、これからは電子決済の普及が加速し、支払いの無人化が進むと予想されています。特にスマートフォンで自動決済ができるようになると、精算時のキャッシュカードやクレジットカードの提示は不要になります。レジでレシートを出力する必要もなくなるでしょう。

また、現在コロナウイルスの影響で業務のリモート化が促進されていますが、今後は5Gにより金融機関の事務作業や窓口対応などのデジタル化も加速するといわれています。 もし対面でフォローが必要な場合には、遅延の無いリモート通話で問題なく対応できるので、顧客が金融機関まで足を運ばなくても問題ありません。口座開設も顧客側だけで完結できるようになるでしょう。

AIが顧客ごとにお金の使い方のデータを保持し、アドバイスをすることもできます。将来的には、銀行が店舗を持つ意味は薄れていくでしょう。眼鏡型や腕時計型のウェアラブル端末を身に着けていれば、複数の情報を組み合わせた生体認証もスムーズにでき、本人確認も簡単になります。

融資査定といった与信業務もIoTなどによって稼働データを採取できる業種ならば、実際の業績に鑑みた融資ができるようになるでしょう。例えばAIが工場の稼働状況を分析することにより、査定担当者にその業種の専門知識がなくても、精度の高い査定が可能になります。審査時間の短縮にもつながり、将来的には担保が不要になるかもしれません。

保険業界では、5Gの通信環境内でIoTを用いて正確なデータを収集することで、保険適用についてより適切な判断を下せるようになるでしょう。また、ウェアラブル端末から情報を採取し、定期的な運動といった一定の健康的な生活をする人に対して、生命保険の価格を下げるといった対応も可能になります。

自動車保険では、事故の詳細情報を車両から転送できるようにしておけば、保険適用の判断もスムーズになるでしょう。

保険加入の際にはIoTやAIのサポートによって、顧客が最適な保険を選択することができるようになります。

金融・保険分野における5Gの実用化事例

ここからは既に実用化されている事例についてみていきましょう。

モバイル型キャッシュカード

金融では、5GやAI、IoTなどの最新技術を活用したサービスが多数立ち上がっています。このようなITを使った金融サービスは「フィンテック(FinTech)」という総称で呼ばれています。

モバイル型キャッシュカードは日立製作所が発行。スマートフォンがキャッシュカード等の役割を果たすことで、カードレス、ペーパーレス決済が可能になりました。5Gの持つ多接続可能な通信環境で、顧客のスマートフォンがシステムにスムーズに接続できます。既に日立制作所ではサービスの提供を終了していますが、その後も多くのキャッシュレスサービスが登場しています。

車載センサーのデータを自動車ローンの与信審査に活用

西京銀行とGlobal Mobility Service(GMS)は、2018年2月、車載センサーのデータを自動車ローンの与信審査に活用する仕組みを発表しました。

GPSで車の位置を特定し、エンジンの起動をリモートで制御することによって、ローン延滞者の車のエンジンを起動不可にするといった対応も可能になります。これにより自動車ローン利用者の延滞を抑止し、与信審査の条件を緩和できます。

5Gによる業界の変化に素早く対応できる人材が必要

5Gの導入によって金融・保険業界にもたらされる変化はとても大きなものです。これからの社会には、この変化を受け入れ、柔軟に対応していける人材が必要不可欠です。次に金融・保険業界において今後求められる人材像を順番にみていきましょう。

【金融業界】キャッシュレス導入に伴う実店舗との関係づくりがカギ

金融業界の動向として注目されているのが「キャッシュレス」。経済産業省が2019年5月16日に発表した「電子商取引に関する市場調査」によれば、平成30年度のECサイトの市場規模は、18兆円に拡大しています。

しかしながら、全ての市場に対してECサイトの市場規模の割合は6.22%に留まっているのが事実。残りの93.78%は実店舗における取引です。つまり、実店舗におけるキャッシュレスサービスについてはまだまだ拡大の余地があるといえます。

銀行には、強固なシステム基盤を提供してきた信頼があります。そのため、セキュリティが問題視されやすいキャッシュレス分野においては「データの番人」としての役割を果たしていけるでしょう。

キャッシュレスサービスの導入では、実店舗との良好な関係構築が必須です。今後数年の金融業界では、実店舗との良好な関係を築ける営業担当者が重宝される存在となるでしょう。

【保険業界】新しい商品の開発がより重要に

保険業界では、5Gの通信環境を利用したAI・IoTの活用により、顧客ごとにカスタマイズされた商品が提供されるようになる可能性が高まっています。

大和総研が2017年10月13日に公開した「20年後の生命保険業界の行方」では、今後は従来の大型・長期契約の生命保険よりも、契約期間を短期化し、より多様化した損害保険がトレンドになるだろうと予測されていました。

少なくとも保険の選択は保険会社のタスクではなくなり、個人で保険を最適化していけるようになるでしょう。

それに伴い、従来の保険窓口や営業担当者からの提案はほぼ不要となる可能性があります。代わりに、時代の流れに沿った保険商品を開発していける人材が、より必要になってくるでしょう。

5Gによって、金融業界と保険業界は大きな変革を遂げます。金融業界ではキャッシュレスの導入が、保険業界ではAI・IoTの活用による顧客ごとに最適化された商品の導入が、それぞれ進むでしょう。

また人材面では、実店舗と良好な関係構築ができる営業や、個別の流れに寄り添える商品開発者のニーズが高まります。

時代の流れを見据えて、乗り遅れないように自身のキャリアを構築していきましょう。