中途採用向け深堀型面接の極意

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プロフィール
株式会社47PLANNING
取締役 経営管理担当
千葉弘喜
大手企業人事部にて採用,労務,人事評価制度企画に従事した後、地元である宮城県仙台市の会社創業に参加。
管理部長として採用を始めとしたバックオフィス全般を管轄し、従業員数100名以上の会社に成長させることに貢献。
現在は、地域活性会社の取締役としてバックオフィス全般を管轄しつつ、他社のコンサルにも従事。

中途採用においては、つい前職までの実務経験等による『スキルフィット』を重視しがちです。ところが、企業文化と候補者の価値観や考え方の相性『カルチャーフィット』のほうがはるかに重要です。スキルは実践を通じて習得することができますが、カルチャーフィットはなかなか修正することが難しいとされるからです。

今回は、いかにしてカルチャーフィットする候補者を見抜くかのテクニックを解説します。

人当たりが良いのとコミュニケーション能力は別物

面接の相手が、人当たりが良く、笑顔で元気に受け答えできる人物だと、入社に前向きに感じられ、面接担当者としても嬉しいものです。

ただし、ここで押さえて置くべき重要なポイントは、人当たりが良いことと「コミュニケーション能力がある」のは別である、ということです。

面接担当者も人間である以上、好き嫌いは当然あると思いますが、第一印象が良い相手に対しては知らず知らずのうちに評価が甘くなる傾向があるので注意すべきです。

評価をするのはあくまでも面接を終えてからにしましょう。面接中は採用基準を判断できる材料を集めることに徹するべきです。そうすれば、第一印象に引っ張られることなく、冷静に判断することが可能になります。

面接でコミュニケーション能力を判断するための材料としては、以下の2点を中心に確認していきましょう。

  1. 理解する力(相手の欲しい情報を把握できるか)
  2. 伝える力(自分の考えをしっかりとアウトプットできるか)

「理解する力」を確認する

「理解する力」が不足している方は、理解していなくてもわかったフリをする傾向があります。面接などの場では、候補者の「面接で失敗したくない」という心理が働くため、この傾向が特に顕著に現れます。

こういった方は、自分の思い込みで間違った解釈をしてしまうので、入社後に同じミスを繰り返してしまう、がんばっている方向がちょっとズレる、などの状態に陥る可能性があります。

オープンクエスチョンの利用

理解する力を確認するには、あえてオープンクエスチョンで曖昧に質問します。

「当社の会社説明会は“いかが”でしたか?」

シンプルですが、この質問は、志望動機を確認する時に使えます。理解する力のある人材であれば、志望動機に絡めつつ、事前に調べてきた内容と比較して、実際に事業所を見て、話を聴いて、感じたことを説明してくれるはずです。

また、「御社の事業内容についての質問でよろしいでしょうか?」と自分の理解があっているか、質問の意図を確認したうえで、回答する場合も比較的能力が高いと思われます。

それに対して、理解する力が弱いと、「大変ためになりました」「御社により一層入りたいと思いました」などのように、非常に抽象度が高く、浅い答えが多くなります。しかし、この回答は油断して聴いていると、志望度が高まっていると勘違いを誘う言葉ですから注意が必要です。

クローズクエスチョンは、候補者が極度に緊張している場合などで、アイスブレイクを兼ねるために利用するには効果的ですが、全体的にオープンクエスチョンを意識して問いかけましょう。また、いろいろ補足することはせず、シンプルな言葉で短く質問をするとよいでしょう。

オープンクエスチョンの後は、抽象度が高いと感じたポイントをより具体的に確認するために掘り下げていく質問をします。

「伝える力」を確認する

「伝える力」といっても、単純に語彙力がある無いというわけではなく、ここでは、自分の言葉でしっかりと自分の考えをアウトプットできるか、を確認します。これが弱いと、論理的に頭の中を整理できない、自分の意見を主張できな、という状態に陥りやすいといえます。

抽象的な言葉を具体的になるように問い続ける

伝える力を確認するためには、『抽象的な言葉をどんどん具体的になるよう問い続ける(掘り下げる)』ようにします。

候補者 「御社の企業理念に共感し、志望しました」

面接官 「どの理念にどのように共感したのですか?」

候補者 「理念の中にある、“豊かな社会を実現したい”という言葉に感銘を受けました」

面接官 「感銘していただいた部分をもうすこし具体的に教えてください」

候補者 「私も人の役に立ちたいと思っていたので感銘を受けました」

この事例では、感銘という言葉を具体的に説明していただきたかったのに、「感銘」という言葉は分析された回答になっていません。

頭の中が整理できていないと、思いついた言葉をとりあえず並べてしまうので、掘り下げた問いかけをしたとしても、いつまでたっても具体的な説明にならず、表面的な会話が続きます。伝える力がある方(もしくは本当に心から感銘を受けられた方)は、掘り下げれば掘り下げるほど具体的な回答が返ってくるようになります。

掘り下げの注意点として、5W1Hを使うことが多いかと思いますが、What,When,Whereは比較的クローズクエスチョンに近い質問になりますので、答えるのは簡単になってしまいます。かといって、「それはなぜ?」と、Whyばかりを問いていると尋問のようになり圧迫感を与えてしまいます。このため、筆者は「もっと具体的に(より詳しく)教えてください」といった言葉で質問します。

聞き手がもっと教えてほしいという姿勢でいると、話し手は共感してくれていると感じるため圧迫感を感じることが軽減されます。そのため掘り下げた質問がしやすくなるのです。

同時に確認する

少しテクニカルな質問の事例を紹介します。

オープンクエスチョンを維持しつつ、一定の条件提示を加えることで、短時間でコミュニケーション能力の有無を見極める手法です。

「長所と短所、それが仕事にどのような影響をあたえているか、簡潔に教えてください」

この質問には2点のポイントがあります。

4つの論点を把握し、答えられるかを見る

1点目は、『長所、短所、長所による仕事の影響、短所による仕事の影響』という4つの論点を一度に質問しています。しっかりと4つの論点を説明できるか、理解する力を確認します。一連の論点を順序立てて説明するには伝える力も必要です。

論理的思考の有無を見る

2点目は、「簡潔に」という修飾語です。あえて簡潔にと加えることで心的ハードルを上げています。伝える力が弱い方は、この時点で焦りを見せます。「1分で」「具体的に」といった補足でもよいでしょう。

このように、論理的で、合理的な思考ができるかどうかをしっかりと確認したい場合などは、複数論点を簡潔に答えさせる質問は非常に有効です。

ただし、あまりやりすぎてしまうと候補者に圧迫感を与えかねないので乱用は避けなければなりません。

カルチャーフィットした人材を見抜く

前述した「理解する力」「伝える力」を確認するテクニックを前提に、カルチャーフィットした人材(自社の大切にしているビジョンやバリューに適している)を見抜く方法をお伝えします。

感情や価値観が出ているキーワードを捕まえて、深堀の切り口にする

候補者の発言のなかで、感情や価値観が見え隠れしているキーワードを捕まえて掘り下げてください。

面接官 「なぜ転職を考えているのですか?」

候補者 「仕事はやりがいを持てていましたが、もっと自分にあった環境があると感じて退職しました」

面接官 「自分に合った環境とはなんでしょう」

候補者 「だれもが積極的に仕事に向き合っている職場環境です。前職ではどう働きかけても動いてくれない方が多くいらっしゃいました」

面接官 「具体的に、どのように他者に働きかけたのですか」

候補者 「諦めずにチームメンバーひとりひとりと話す時間を多く設けましたが、結果的に理解を得られませんでした。」

「絶対に」「どうやっても」といった断定的表現は、その背景には個人の思い込みや偏った価値観がある場合があります。表面上は積極的に仕事に向き合う姿勢がある一方で、他者を批判的に捉えている可能性もあります。

仮に、協調性を重視する会社であれば、独りよがりな考え方を抱きやすい人物かどうかを、具体的に掘り下げる必要があります。また、諦めない力を重視する会社であれば、本当に試行錯誤の結果、他者が動いてくれなかったのかを確認する必要があります。

プロセスを確認する

根拠に対して主張に飛躍がありそうな場合も、何らかの本人の価値観が介入している可能性があります。

前述の事例で、「話す時間を多く設けた」という説明がありますが、候補者の望む結果を得られなかっただけで、一定の理解はあったかもしれませんし、どのような会話になっていたのか根拠が弱いです。

こういった深堀ポイントを見つけたら、なぜそういう考え(あるいは行動)に至ったのか、を質問し、考え(行動)の前提条件(背景)や思考や行動のプロセスを確認するようにしましょう。

事例の場合は、「面談(話をする時間を持つ)」以外で取りうる手段はなかったのか、協力者が他にいなかったのか、などを確認すると、より具体的に状況をイメージすることが可能になるでしょう。

また、「(面談終了後)次に何を考えましたか?」などの質問をし、その時に感じたことや考えたことを、順を追って確認します。そうすると、チームメンバーひとりひとりと話をし終えた後に、相手が望まない反応を示したために、感情的に理解されないと判断してしまったのか、あるいは、本当に試行錯誤を繰り返したうえでの結論であったのかが見えてきます。

また、具体的な話になればなるほど、本当に試行錯誤を繰り返しながら遂行しようとした場合は、相手の表情や会話の調子からもにじみ出て伝わってくるはずです。

深堀型面接のまとめ

一問一答形式で面接をするのではなく、感情や価値観が隠れていそうな探索ポイントを見つけ、どんどん掘り下げて面接をしてください。第一印象に引っ張られることなく、しっかりとコミュニケーション能力があるか、主張に納得感があるかを確認しつつ、候補者の人物像をよく掘り下げ、カルチャーフィットしていると思えた人材を採用してください。 カルチャーフィットしていれば、自然と業務の意欲が高まり、早い段階でスキルは追いつくはずです。