よく聞く「優秀な人」とは一体どんな人!? 本当の“優秀な人材”とは

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プロフィール
株式会社人材研究所
代表取締役社長、組織人事コンサルタント 曽和利光
京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や上智大学非常勤講師も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。大企業から中小・ベンチャー企業まで幅広い顧客に対して事業を展開。

様々な経営者や人事担当者と話をしていると、かなり頻繁に「優秀な人を採りたい」「彼は優秀だ」と、特に定義されることなく「優秀」という言葉が出てきます。何らかの点において、他者よりも「優」れている、「秀」でているということでしょうが、それだけではなんのことかわかりません。

それでも定義もされないまま「優秀」という言葉が使われるのは、多くの人が他者の優秀性を無意識的に評価しているということでしょう。無意識に自動的に評価するという心の動きは強固です。意識していない分、修正することもなかなかできません。それでは、一体どんな人が「優秀である」と結果的に評価されているのでしょうか。

「明るく楽観的な人」は優秀に見える

日本の採用選考は、ほとんどが「面接」で行われています。つまり、「優秀だと思う」というのは、ほぼ「面接で評価が高い」ということと言えます。実はこれについての研究があります。日本の採用面接研究の第一人者である今城志保氏の「採用面接評価の科学」(白桃書房)によれば、外向性が高く、情緒安定性が高い人は、一般的に面接評価が高くなる傾向があるとのこと。

「外向性」とは、社交的、話好きであり、活発な振る舞いをする傾向を指します。「情緒安定性」とは、どんな出来事が起こっても過剰に反応せず、不安に陥らない傾向を指します。つまり、日常的な言葉で言うならば、明るく楽観的な人が面接では優秀とされるということでしょうか。実際、外向性や情緒安定性は多くの職種でハイパフォーマンスの要素であることが多いと言われていますので、この点では、「優秀に見える人」は「実際に優秀」であると言ってもよいかもしれません。

「知的能力」は実はあまり評価されていない

ところがその一方、同書によれば「知的能力は、常に面接で評価されるわけではない」という事実も判明しました。優秀と聞くと、「頭の良い人」が真っ先に思い浮かびますが、面接場面においては、実際には「頭の良さ=知的能力」はそれほど評価につながらないということです。

しかしながら、様々な会社で人事コンサルティングをさせていただいている経験からみれば、多くの会社で数学や国語などの能力試験の結果が、仕事のパフォーマンスにつながっているケースが多いのも事実。そう考えると、知能という点においては、人が無意識のうちに考える優秀さと、実際に成果につながる特徴(ここでは「真の優秀さ」と呼ぶことにします)は異なっているとも言えます。客観テストなど、面接以外の評価方法がなければ、見過ごされてしまうのが意外にも知的能力なのです。

本来、仕事や会社によって優秀さは違う

ここまで述べてきた特徴は、あくまでも多くの会社における一般的な傾向。特に、面接という選考手法において評価されるものという限定付きです。さらに言えば、真の優秀さとは異なり、ただ優秀に「見える」というだけ。実際に特定の仕事において成果をもたらす「真の優秀さ」は、仕事や会社によって異なります。

心理学的に能力には「領域固有性」というものがあることがわかっています。領域固有性とは、「それぞれの能力はそれぞれにふさわしい課題を処理するためにあり、相互に相対的に独立している」ということ。将棋が上手いからと言って経営戦略を考えたり、コンピュータプログラミングに長けていたりするわけではないのです。

人に「長所」や「短所」はない

極端な言い方ですが、人間にはもともと「長所」や「短所」はありません。何かをすることによって持っている能力が発揮され、効果的に能力が働くと、その場合に限って「長所」と呼ばれるのです。

例えば、好奇心旺盛と飽き性は紙一重、裏腹です。他にも、信念の強さや継続力と頑固さ、受容性と優柔不断さなど、同じような概念でも良くも悪くも表現することができるのは、上述の通り、適応する領域によってその価値が変化するからではないでしょうか。それにも関わらず、先に述べた「明るく楽観的」など、無意識に「優秀に見えてしまう」要素があるため、注意が必要です。

それは必ずしも、皆さんの会社の特定の仕事に当てはまるわけではない。例えば、経理などのコツコツやる継続性と慎重さが求められる仕事の場合、活発な人だと内勤の仕事で息が詰まるかもしれません。また、楽観的過ぎては正確性を求められる仕事に対応できないかもしれないのです。

時代や仕事によって変わらない優秀さはあるか

つまり、基本的には「優秀さは時と場合による」ということ。どんな仕事にも共通するような優秀さの要素はほとんどありません。対立する要素がともに、それぞれ優秀な成果を残している人の特徴だったりもします。

リーダーシップの研究などをみても、「俺について来い」というカリスマ型のリーダーもいれば、メンバーが能力を発揮しやすいように環境を整備したり、支援したりするサーバント型のリーダーもいる。論理的でクールなリーダーもいれば、エモーショナルでホットなリーダーもいるのです。

彼らはいずれも優秀な人。リーダーだけでなく、営業も、経理も、エンジニアも、人事も、いろいろな「優秀な人」がいます。人は誰でも「何かの天才」です。人生とは、自分が何の天才なのかを探し続ける旅なのです。

いつまでも「優秀な人」の唯一の共通点

様々な特徴がそれぞれの場、仕事において優秀さの要素とされることを考えると、どんな人でも優秀な人になりうる。ただし、一つだけ必須事項があります。それは、自分を知るということ。自己認知の高さです。自分の能力や性格、志向などの特徴を知る。なぜなら、自分の持つ特徴をきちんと正確に認識していれば、どのような場で、どういう仕事で、どんな役割なら自分が活きるかわかるからです。

もちろん、偶然に適材適所を実現し、自己認知のないまま優秀さを発揮する人も稀にいます。ですが、基本的には”easy come, easy go”。知らぬ間に来たものは、知らぬ間に去っていくのです。しかし、自己認知ができている人は、今いる場が自分を活かす場ではないとわかるため、もう一度今いる場を自分に合うように変化させるか、もしくは、自分から自分の特徴が活かされる別の場に動くことができます。そうすることで、継続的に優秀であり続けることができるのです。ですから、自己認知の高さを採用選考では見極めるべきです。

「自己認知」は優秀さの源

「自己認知」の高さは、優秀さの源です。自分を活かす道を探る第一歩であり、さらに様々な能力に直接関係しています。自らを理解している人は、ポジショニング力や役割意識が強いので、チームワーク良く仕事をこなすことができます。

また、得手不得手がわかっていれば、学習能力や成長性にも良い影響も出る。自らの考え方や価値観について自覚することができれば、心理的バイアスに惑わされることなく現実世界をありのままフラットに見る感受性の高さも手に入れることができます。このように、「自己認知」は、様々な仕事で必要とされる各能力のベースになっているのです。

フィードバックが「自己認知」を高める

さて、最後に、「自己認知」の高い人は何故その力を高めることができたのかについて述べます。実は、方法は一つしかありません。「自己認知を高める」とは「自分の知らない自分に気づく」ということです。字義から考えれば、自分の知らないことは他者から教えてもらう、フィードバックしてもらうしかありません。ですから、自己認知の高い優秀な人材は、好んで自分の身をさらし、他者からフィードバックを受け続けることができた人です。

良質なフィードバックを受けるためには、ポジティブなことでもネガティブなことでも、必ず受け止めなくてはならない。つまり、他者から「この人にならフィードバックをしてあげたい」と思われるような他者の意見に対する受容性や知的誠実性(不快な意見でも知的に考えて正しいと思うのであれば受け入れるかどうか)の高い人が、結果、自己認知が高まり、自分を活かす場を見つける力を得ることができ、真の優秀さを実現できる人なのです。

採用選考や人事評価等においては、結果としての優秀さだけではなく、ベースとなる自己認知、また自己認知を高めることができるようなフィードバックを受けやすい環境や性格を持っていたか、というような側面も注意して見ておくと、本当の“優秀な人材”に巡り会えるのではないでしょうか。