新時代のロボット技術「RPA」はホワイトカラーの業務をどう変えるか

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RPAとはロボットによる業務の自動化を意味する言葉です。ロボットが職場に浸透すると、ホワイトカラーの業務の一部は代替され、業務内容がよりクリエイティブなものへとシフトすると言われています。本稿ではRPA導入に際してのメリットと課題について考察します。

RPAとは何か

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、読んで字のごとく、ロボットによる仕事、特にいわゆるホワイトカラー業務の自動化や効率化のことです。

ただし、ここで言うロボットは、これまでブルーカラーの工場などでの業務の代替をしてきたような機械的な産業用ロボットというよりも、ホワイトカラーの知的業務を代替するソフトウェア(ソフトウェアロボット)のことを主に意味します。デジタルレイバーとかデジタルワークフォース(仮想知的労働者)などと呼ばれることもあります。

日本ではまだ耳慣れない言葉かもしれませんが、欧米では既に市場が確立しつつあり、早晩、日本においても常識になっていくと思われます。

昨今ではソフトウェアロボットやデジタルレイバーなどは、全部ひっくるめてAI(人工知能)と呼ぶ場合も多いですが、RPAはあらかじめ決められた何らかのルールやアルゴリズムに基づいて知的作業をこなしていくものとされます。

一方で、狭義のAIは自身で大量のデータを分析して、何らかの発見を行ってアウトプットすることで、行うこと自体を自己改善していくプロセスを持っているものとされます。実際に働く人に大きな影響を与えるほどに浸透してきているのは、本稿のテーマであるRPAです。

どんな仕事がRPAに代替されているか

RPAの導入が進んでいるのは、あらかじめやることが決まっているようなものが多いです。たとえば以下のようなものです。

スタッフ部門

  1. 経理における仕訳業務
  2. 請求書処理
  3. 定型的なレポート作成
  4. 人事における労働時間管理
  5. 評価情報の入力

情報システム関連

  1. 新規のアカウント発行
  2. 業務用PCへの必要ソフトウェアのインストールやセッティング

業務部門の業務

  1. 新規アカウントの受付
  2. 受発注業務
  3. 請求処理
  4. Webサイトなどへの最新情報のアップ
  5. 顧客データの収集・管理

今まで、それなりに人をあてがって行っていた業務がどんどんRPA化されていくと予測されています。一方で、創造性や判断を伴う業務にはRPAは向かないと言われています。

RPA導入で大幅な人件費削減とスピードアップが可能

RPA導入のメリットは明確です。まずは、人が介在しないことにより、大幅な人件費の削減ができることです。一般的にはRPAのコストは、人の10%〜30%程度と言われており、これまでコストダウンのためにアウトソーシングしてきた新興国の人件費よりも安い場合が多いのです。

しかも、ソフトウェアロボットは24時間365日休みませんので、スピードアップにもなりますし、最初の設定さえきちんとしていれば、ミスもほとんど起こりません(設定がおかしければ、すべてミスになりますが)。しかも、後述のように既にさまざまなRPAソフトウェアが存在しており、導入も容易になってきています。一方でデメリットはあまりないとされています。

RPAソフトウェアの特徴は操作の「容易さ」

RPAソフトウェアは、これまでのプログラミングベースでの自動化ではなく、容易なユーザーインターフェイスでの利用が可能になっています。たとえば利用の際に、プログラミングのスキルは必要なく、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)でアイコンをドラッグ&ドロップするなどの簡単な操作によって直感的に作業ができることが特徴です。

つまりRPAを導入する人事部などの部署が、システム部門や外部ベンダーを頼ることなく、ある程度セルフサービスで行うことが可能になるということです。

システム部門担当者も社内のITリテラシーの低い部署のサポートをするという低付加価値の作業から解放され、リソースをもっと戦略的なITシステム開発にさけるというメリットにもつながります。当然ながらプログラミングを必要としないため、準備にかかる工数もほとんどありません。

ホワイトカラーは単純作業から解放される

さて、ここまでRPA導入の現状と効能について簡単にご説明してきましたが、今後、RPA導入によりどのような影響が生じるのかを考えてみます。まず、当然ですが、RPAが進むことで、ホワイトカラーは単純作業からどんどん解放されていきます。

オックスフォード大学の研究などでは、今後10年〜20年で現在の雇用の50%分程度にあたる仕事がRPAによって自動化されるという予測もあります。これを良いように捉えれば、単純で膨大なルーチンワークから解放されるということです。つまり、より創造的でコアな業務に自らの知的リソースを割くことができるようになるわけです。

これからの人事担当者に求められるのは「創造性」

一方で、広がっていくRPAについて、誰しもが楽観的に思っているわけではありません。昨今のAIに関する報道や主張の背景に見え隠れしているように、「AI(ここではRPA)に仕事を乗っ取られる」という恐怖の感情を持つ人も多いことでしょう。

というのも、RPAには知的単純作業を、人間はその代わりに創造的な仕事をと言われても、自分の創造性に自信を持てる人がどれだけいるかということです。「単純作業をやらされているから創造性を発揮できない」のか、「単純作業しかできない」のかわからないのです。つまり、RPAやAIの隆盛は、単純に失業を生み出すだけではないかと恐れる人は一定数いることでしょう。

しかし、これは後戻りできない流れですから、これからの人事担当者はRPAやAIにはできない創造性を発揮できるように能力を磨くしかありません。

人事がすべきこと

このようなRPAの隆盛の中、人事担当者は何をなすべきでしょうか。ひとつは、RPAによる知的労働作業の代替を見越して、「残る仕事」≒創造性や判断力などが必要な業務ができるような人材を、頑張って採用したり育成したりすることです。ニーズが減っていくことがわかっている仕事に適した人材を、短期的に必要だからと言って、多量に採用していては待ち構えているのは大変なリストラです。

RPAの進展をきちんと予測して、人員計画や人材ポートフォリオを作っていくことができれば、そうした悲劇を起こさなくてすみます。また、受動的に世の中のRPAの進展を待っているのでなく、先んじて自社の業務内容をきちんと把握し、RPAにできるものとしにくいものに振り分けしていくことで、その人員計画の精度が上がっていき、新卒や中途他、様々な採用チャネルからどれぐらい人材を採ればよいのか正確にわかり、適切なリソース(マンパワーやお金)で人材獲得ができるようになることでしょう。

あのドラッカーも「変化をマネジメントする最良の方法は、自ら変化を作り出すことである」と述べています。RPAはおそらく不可逆な進歩でしょうから、どうせ変わるなら自ら先頭に立って導入を進めていくべきでしょう。