採用ノウハウ

KPIは共感数の向上。スープストックトーキョーが目指す「世の中の体温」の上げ方

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全国に69店舗のスープ専門店を展開する株式会社スープストックトーキョーが、2018年4月から「働き方“開拓”」をコンセプトに新しい人事制度を始めました。①給料を据え置いての休日休暇の増加、②複(副)業の解禁、という2つがメインとなる施策です。

本稿では同社の江澤身和さん(取締役 ブランディング本部本部長 人材開発部部長)へのインタビューを通し、新制度設計におけるポイントについて伺います。

施策の目的は企業理念の体現

新制度を導入する前にどんな課題があったのですか?

江澤:一般的に「飲食業界は働き方がブラックだ」と言われやすいなか、そうした働き方がすべてではなく、もっと意欲をもって働いている人がいることを伝えたいと思っていました。とはいえ、飲食業界に共通している課題だと思いますが、私たちも人手不足の状況でした。スープストックトーキョーで働きたいと思う人がどれだけ集められるかと悩んでいたのです。これを解消するには、採用コストに予算を投じるのではなく、企業の魅力を高めることがいちばんの近道だと思い、この4月から「働き方“開拓”」と呼ぶ新制度を導入しました。

働き方開拓の狙いを教えてください。

江澤:私たちが一緒に働いている仲間の顔を浮かべた時に、やりがいや働きがいをどういうふうに伸ばしていけるかと考えていたのです。スープストックトーキョーはもともとスマイルズという会社の中の一事業だったのですが、2016年に分社しました。その時にスープストックトーキョーの企業理念をどうするかと考え、「世の中の体温を上げる」すなわちお客様の心を温かくするという理念でいこうと決めたのです。数ある飲食店の中から私たちを選んでいただいたお客様の体温を上げたい、そのためにはサービスを提供する私たちの体温も上げなければいけない――そう考えました。

分社化後、12の人事制度を進め、それらによって土台ができた上で、新制度はこの目的の実現をさらに加速させるために始めたものです。そして新制度の導入にあたり、「共感」を増やすことを目標に定めました。世の中の体温を上げるためには共感が欠かせないと思ったからです。

休日休暇の増加と副業の解禁

新制度の中身について教えてください。

江澤:この4月より新たに2つの制度を始めました。1つは「生活価値拡充休暇」と呼ぶ休暇の導入、もう1つは「ピボットワーク」と呼ぶ副業の解禁です。前者では、これまで月に8日だった公休を9日に増やし、生活価値拡充休暇を年間12日にしました。これにより年間の休日休暇数が120日になりました。飲食業界では、店舗で働く人たちは休みが少ないことが当たり前になっています。そうではなく、店舗で働く人も本部で働く人も等しく、メリハリをもって良い仕事をするために休暇を増やしたのです。

後者のピボットワークとは具体的にはどんな制度なのでしょうか?

江澤:ひと言で言うと副業の解禁です。生活価値拡充休暇によって休みが増えます。その時にただ単に休みが増えるのは違うなと思ったのです。ただ休むだけでなく、休みを有意義に使いましょうというメッセージが込められています。

中には休みが増えなくていいからもっと色々やりたいという意欲を持っている仲間もいます。そういう人に対して無理に休めというのは逆にストレスになると思うのです。そこで軸足をスープストックトーキョーに置きつつ、副業ができるようにしました。スマイルズグループの中で働いてもいいですし、まったく違う会社で働いてもかまいません。

加えて、副業ではないのですが、スープストックトーキョーの本部の様々な部署で働ける「社内仕事旅行」というものも同時に始めています。これにより興味のある他部署での仕事を旅行感覚で体験できるのです。本部がどのような仕事をしているのかを知ることで、視野広くブランドや会社に関わることができるのもこの制度の利点です。

このように副業を解禁したことで、社員の可能性を伸ばすための機会創出にもなりますし、離職率の低減にもつながるのではないかと考えています。

理想の姿を先に描き、生きた制度にする

新しい制度を始めるに当たって苦労された点はありますか?

江澤:こうした制度はどれもそうだと思うのですが、導入するのはたやすいことです。でも実際に使われなければ、ただ制度があるだけで何も変わっていないのだと思います。

一方で、現状の課題、すなわち社員の残業がゼロになっていない現実や、公休が月によってはすべては取れない現実、こうした現実だけを見てしまうとできることはすごく狭くなってしまいます。「あれも無理」「これも無理」となってしまうのです。

そこで、この新制度だけに限らずですが、スープストックトーキョーが何かをやろうとする時に大事にしているのは「『こうありたいよね』という理想のシーン」を先に考えることです。現実を見て階段を積み上げていく考え方では、「これができていないからまだ次にいけない」「次にいけないからずっと足踏みをしてしまう」という状態が続きます。

そうではなく、いろいろな条件を取っ払って最も理想とする状態を描きます。スープストックトーキョーの仲間がどういうふうに働いて、どういう人になるのがいちばん目指したいことなのかを先に考えます。今回導入した新制度もこの考え方に基づいて作りました。

働き方改革を目指している会社に対してメッセージはありますか?

江澤:私たちも正直、始めたばかりなので、まだまだ言える立場ではないのですが、やっぱり大事なのはビジョンをきちんと描くことだと思います。そして、ビジョンを描くうえで大切にしてほしいと思うのは働いている一人ひとりの顔を思い浮かべながら考えることです。

制度というものは、作れば終わりではないのです。実際に働いている一人ひとりが「変わったな」と思ったり、「本当に改革されているな」と感じたり、それらを通してメリハリや余裕が生まれてこそ、初めて制度が機能していると言えるのだと思います。

私たちも、スープストックトーキョーで働く人たちが新制度導入のメリットを実感するところまでは至っていません。そこは今後もきちんとケアしていく必要があると思っています。

作って満足してはいけないのですね。

江澤:あとは、これは私たち独自の考え方なのですが「ただ休みが増えて、働くのが楽になればいい」というのは少し違うと思っています。楽になった先に意欲がなければ、仕事に真摯に向き合えず事業や会社は継続できません。重ねてのことになりますが、ビジョンが大事なのです。人の目線でのビジョンと、ブランドとしてのビジョン。この2つの軸が揃ってこそ、企業は成長するのだと思います。

飲食業界は人手不足の解消を

今回話を伺ったスープストックトーキョーでは、新制度の導入により採用市場での優位性を確保し、人手不足の解消を狙っています。まだ始まったばかりの制度のため、具体的な効果はこれからのようですが、社内外からの反響があり目に見える変化を体験していると言います。同社が行った給料を据え置いての休日休暇の増加や副業の解禁は、いずれも中途採用入社を目指す求職者にとって大きな魅力に映ることでしょう。同社の事例を参考に、魅力ある生きた制度を作りましょう。

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