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ビジネススキルの見極め方|「応用力」~蓄積した基礎をあらゆる場面に当てはめる能力~

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「応用力」とは、辞書的な意味合いにおいて「すでに得た知識を使って、新たな事柄に対応する力」を指します。また、学校の勉強などにおいては、「応用」という言葉とともに「基礎」という言葉がよく使われます。

この場合の「基礎」は、後にさまざまな場面で「応用」を行うための元の知識です。一方で逆のことを言えば、「基礎」となる知識があるからこそ、それを別の局面で生かしながら問題を効率的に解くことができる、つまり「応用」ができる、という関係性にもなります。

ですから、「応用力」を発揮するためには、まず基礎的な知識を持っていることが前提になります。

応用力がある人材は、すでに学んだ複数の基礎を組み合わせて、高度な問題にも対応していくことができます。どんな育成でも100パーセントのことを教えるのは不可能である以上、さまざまな要素が複雑に絡み合う仕事をこなしていくためには、応用力が問われるのです。

今回はその「応用力」に着目し、どんな人が持つ力なのか、そしてどんな見分け方ができるのかを解説していきましょう。

筆者:株式会社人材研究所 代表取締役社長、組織人事コンサルタント 曽和利光

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や上智大学非常勤講師も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。大企業から中小・ベンチャー企業まで幅広い顧客に対して事業を展開。

基礎とは「原理原則」のこと

先にも触れたとおり、「応用」を語るうえでは「基礎」の存在が欠かせません。まずは「基礎」について考えてみましょう。

基礎とは、後にさまざまな事柄に応用できるもの。言い換えれば、さまざまな事柄に共通するような普遍的な性格を持つ「原理原則」のことを言います。わかりやすいように数学の世界に例えてみると、数学には、

  • 「公理」=論証がなくても自明の真理として承認され、他の命題の前提となる根本的な命題。「平行線は交わらない」など
  • 「定理」=公理や定義から導き出された真なる命題で、よく使われるもの。「直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい」(ピタゴラスの定理)など

といったものが存在しますが、まさにこの公理・定理といったものが「基礎」=「原則原理」に当たります。

図形の世界で起こるすべての出来事は、この公理・定理から導き出されるはずです。そのため基礎さえ覚えていれば、そこから導き出すことができないものは偽と判断ができ、該当する命題が真なのか偽なのかを判定することができます。

また、基礎からいろいろ論理を展開していけば、さまざまな新しい知見に巡り合うこともできます。そこで新しい定理を発見することができれば、さらにそれを基礎として利用していくことも可能になるでしょう。

ビジネスにおける原理原則

ビジネスにおいても、さまざまな「原理原則」があります。例えば、トヨタの口ぐせとして有名な「5 whys」という問題解決法があります。これは直面した問題に対して、「なぜ?」を5回繰り返せば物事の真の原因(真因)に突き当たるというものです。

あるいは、論理的思考法として有名な「MECE(=Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive。モレなく、ダブりなく)」も原理原則になります。この論理的思考を利用して整理することで、抜けていた観点にたどり着いたり、意外な原因を発見したりするというようなこともありえるのです。

ほかには、企業の周辺環境を分析する際に使用される「3C」や、業界の構造を分析するために使用される「5Force」などのマーケティング戦略に活用されるフレームワーク。また、ITや建築などの大規模プロジェクトをマネジメントするための体系「PMBOK(=Project Management Body of Knowledge)」なども、例として挙げられます。

これらの知識や体系は、ビジネスにおける原理原則=「基礎」となります。ビジネスは数学のような厳密なものではありませんし、時代背景や事業環境によって変化は起こりうるものの、この「基礎」を覚えておくと、ビジネス上のさまざまな場面で応用することができるというわけです。

「巨人の肩の上に立つ」ことで基礎力が高まる

「原理原則」の引き出しの数は、その後の応用力に大きく影響します。何かの問題に直面したとき、ビジネスにおける基礎を知っているかどうかによって、その問題を解くスピードや、最終的に解けるのかどうかも変わってきます。

では、その原理原則の引き出しをどのように増やせばよいかというと、単純に先人から学んでいけばよいのです。せっかく何千年も前にピタゴラスが定理を発見してくれているわけですから、直角三角形の辺の長さを計算するときに、わざわざ私たちが同じ定理を発見する必要はありません。

ニュートンも使ったとされる「巨人の肩の上に立つ(Stand on the shoulders of giants)」(先人の積み重ねた発見の上に、新しい発見をすることの比喩)という言葉がありますが、まさにそのとおりで、先人が発見した原理原則はどんどん使うべきです。

また、「イノベーション」という言葉の定義を明確化した経済学者シュンペーターも、イノベーションとは既にあるものの「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」を発見する行為であると述べています。

イノベーションという言葉は技術革新というような意味で使われることも多いですが、本来的には決してゼロから何かを生み出すことではなく、基礎となる原理原則を応用するということを指しているのです。

そして、これまで述べてきたことをまとめると、応用力とは「応用できる基礎・原理原則の引き出しをどれだけ持っているか」ということになります。引き出しが多ければ、さまざまな問題を解く近道をたくさん知っているということになるので、つまり「応用が効く」というわけです。

物事を“ざっくり”把握できるか?

では、単純に基礎をたくさん知っているだけで、「応用力がある」人ということになるのでしょうか。私は、ある程度はYesだと思っています。Noになってしまうのは、基礎を知っているように見えて、本当はきちんと理解していない人の場合でしょうか。

それを数学の勉強に例えるなら、2次方程式における解の公式をただ単に丸覚えしただけの人は、それを応用して考えられるはずの2次関数のグラフの頂点の座標が求められない、という状況に他なりません。

つまり、ただ基礎を覚えただけでは不十分ということもあるので、真に「応用力がある」と言えるのは、基礎と応用を上手く結びつけるための能力を持っている場合でしょう。

その基礎と応用を結びつける能力の1つとして挙げられるのが、「構造的把握力」というものです。

「構造的把握力」とは、物事の構造(構成要素間の関係性)を把握する力のことを指します。もっと平易な言葉で言えば、“ざっくりと大枠をつかみ取る力”。つまり「だいたいこんな感じかな」と物事を認識できるかどうかです。

複雑な要素で構成されている応用問題のうち、何が本質的(=重要)で、何が些末なことなのかがわかれば、自分の中にある基礎=原理原則からどれを適用するべきかがわかり、試行錯誤するうちに最短時間で解に到達できる可能性が高まります。

例えば、新しくマネジャーとして赴任した異動先で、組織にさまざまな問題が生じていたとします。その諸問題を俯瞰して因果関係を推定することができれば、採用・適材適所・一体感醸成などの要素のうち、いったいどこに問題が潜んでいるのか把握でき、適応すべき原理原則もわかるというわけです。

“似たもの同士”を見つけられるか?

また、基礎と応用を上手く結びつける能力の2つ目としては、「パターン認識能力」というものがあります。これは、雑多な情報を含むデータの中から、一定の規則や意味を持つ対象を選別して取り出すことのできる能力を指します。

パターンとは、あらゆる場面に繰り返し現れる傾向のことですから、要は“今まで見たパターンに似たものを見つけられる力”。つまり、「この問題はなんだか以前に見たことがあるなあ」と思えるかどうかです。

この能力を身につけるには、当然ながらたくさんのケースを見ておく必要があります。そうでなければ「なんだか見たことがある」とはなりません。

人間が多くの複雑なものを見て、そこから何らかの共通したもの、概念を見出すプロセスについては、まだまだ研究の余地が多くあるようですが、理由はともかく、たくさんのケースを見ておくことで、そのケースをいろいろなパターンに分類することができるようになっていきます。

そうすると、各パターンにおいて過去にどの原理原則が応用されたかも蓄積されることになり、結果、応用問題に対してどの原理原則を適用すべきか早く判断できるようになります。

先ほど同じようにマネジャーの新赴任先の問題を例に取れば、「中途採用者ばかりで構成される新しい組織は〇〇が原因で問題がある場合が多い」とか「新規事業部隊が途中でつまずくのは〇〇の場合が多い」というようなパターン認識から、使うべき原理原則を考えいくのが、この能力です。

どちらかと言えば、「構造的把握力」は物事をシンプルに考えることができる人や、経験の少ない若い人が応用力を発揮するときに役立ちそうですし、「パターン認識能力」は、細やかな感受性を持ち、物事の多様な側面に注意できる人や、経験の多いベテランが応用力を発揮するときに役立ちそうです。

応用力の見分け方と育て方

このように「応用力」の本質や、それをアシストする能力を見ていくと、応用力のある・なしの見分け方や、応用力を育成する方法がわかってきます。

応用力の有無を見分けるには、まず兎にも角にも基礎力があるかどうかを見ます。その人がどれだけ使える武器、応用できる原理原則を持っているかを調べるため、学習歴(学歴ではなく)を聞くとよいでしょう。どんな領域の知識を、どれくらい学んできたかを測ります。

ただ、これはインタビューをする側にも深い知識がなければ相手の学習が深いのか浅いのか見分けられませんので、難しい評価です。

応用力を育成する場合は、引き出しをたくさん持てるように、とにかくインプットをすることが大切です。書物などのテキスト情報がもっとも効率的だと思いますが、もちろん人や出来事から学んでいくのもよいでしょう。

また、応用力をアシストする能力である「構造的把握力」には、論理的思考力の有無が強く関係します。一方で「パターン認識力」は、先に述べたように経験の豊富さと、感受性に左右されます。相手がどちらのタイプなのかをしっかり理解し、「構造的把握力」や「パターン認識力」を高めるよう訓練をしていけば、それに伴って応用力も伸びていくことになるでしょう。

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