採用ノウハウ

【連載】口説きの技術 ― 自社が第二志望の相手を、第一志望に変える

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ある会社に入るということは、人生の中にある様々な選択の中でもかなり大きなイベントです。

日本全国に数百万社も存在している会社の中からただ1つ、少なくとも数年は通う場所、働く仲間を選ぶわけです。場合によっては家庭生活よりも長い時間を使うことになるケースもあるでしょう。加えて、その会社で得たものによって次の人生のステップも変わってきます。

しかも、キャリアは消すことができません。万が一早期退職しようものなら、5年経っても10年経っても「なぜこの会社は半年でお辞めになられたのですか?」と面接官に質問されることは必定です。

このように人生に大きな影響を与える選択ですから、人が入社の意思決定にとても慎重になるのも当然のこと。求職者は簡単には「この会社に入社しよう」という決心はつきません。だからこそ採用担当者は、相手の心を動かし、自社の魅力を十分に伝えるための“口説きの技術”が必要になってくるわけです。

本連載では、これほどまでに重要な入社の意思決定を応募者に対して促すのに、採用担当者はどうすればよいのかについて解説したいと思います。

筆者:株式会社人材研究所 代表取締役社長、組織人事コンサルタント 曽和利光

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や上智大学非常勤講師も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。大企業から中小・ベンチャー企業まで幅広い顧客に対して事業を展開。

知らない人に口説かれても、刺さらない

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口説きのスキル云々の前に、多くの採用担当者ができていないことがあります。それは、「自分が何者であるか」を応募者に伝えていない、自己開示ができていないということです。

採用担当者は、応募者のことを面接などで根掘り葉掘り聞くのですが、こと自分の情報については全くと言ってよいほどオープンにしません。それでは、応募者を口説けないのも当たり前です。

「目の前の、雰囲気は良いが得体の知れない人から、ガンガン口説かれているのだが、この人をどこまで信じてよいのだろうか」と思われていては、どんなに良いことを話したとしても相手の心には刺さることはないでしょう。

会社や組織というものはそもそも目に見えない曖昧なものです。さらに、応募者は会社の「今」だけを見るのではなく、「未来」に賭けて入社を決めます。その際に大切なのは、情報源となる採用担当者への信頼感です。

「確証は持てないが、この人がそこまで言うのであれば、一緒に賭けてみようか」と思えるかどうかが大切。それが、「得体の知れない人」であれば、どうやって信じろと言うのでしょうか。

とはいえ、採用担当者がひたすらアピールするのはNG

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とはいえ、採用担当者が饒舌に自分のことをどんどん話したらよいかというと、ことはそんなに簡単ではありません。

応募者にしてみれば、面接などで採用担当者が唐突に自分のこれまでの人生やそこであったトラウマなどについて滔滔(とうとう)と吐露し始めたら、「大丈夫か、この人は・・・」と、それはそれで気持ち悪く思うことでしょう。何事にも良いタイミングというものがあります。

もちろん面接の冒頭での自己紹介は、1つの良い機会です。ここで、部署や役割を言うぐらいの簡素なものではなく、もう少し深めに話してみましょう。「新卒入社か中途入社か」「勤続何年目か」「人事の仕事をいつからしているのか」「この採用活動によって、自分や会社は何を得たいと思っているか」等々。話してみると、後に相手も質問しやすくなります。

ただ、冒頭の自己紹介だけでは、やはり表面的なことしか言えません。では、いつが良いタイミングかというと、それは応募者に「入社動機」を聞かれた時です。

入社動機はドラマティックに語れ

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私がある会社で採用担当をしていた時代、最初の頃に言われたのがこの「入社動機はドラマティックに語れ」ということです。

応募者に「何か質問はありませんか」と投げかけた時に、ほとんどと言ってよいぐらい出てくる質問は「なぜ、○○さんは御社に入社されたのですか」というもの。それに対して、人事担当者がどう返事をするかは非常に重要になります。

しかし、様々な人事担当者の方に、普段の面接で実際に話している入社動機を質問してみると、正直、かなり残念な、相手には刺さらないものが出てくるケースが多いです。

例えば、「たまたま受かったのがここだけだった」「一番早く決まったから」「将来を感じたから」「社風が合っていたから」等々。そんなことを聞いても相手は「そうですか・・」と何の印象も残らないものが大半。

それではダメです。相手がその入社動機を聞いて、感動とまでは言いませんが、心を動かされる、共感をするようなものでなくてはなりません。では、どうすればドラマティックな入社動機になるのでしょうか。

入社動機を話す時は“What”と“Why”を大切にする

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入社動機を大きく分けると、WhatとWhyがあります。

Whatとは、「その会社の何が好きで入社したのか」ということです。多くの採用担当者はこれしか語りません。「この会社はこんな対象に対してこんな目的でこんな事業をしている。そこに共感して、私は入社しました」という感じです。

しかし、よくよく考えていただけるとわかると思いますが、それはほぼ自社の事業説明とイコールです。採用担当者自身のことは何1つ含まれていません。せっかくの自己開示のチャンスである入社動機が活かせていないのです。

だからこそ、もう1つの要素であるWhy、つまり「なぜその会社を好きになったのか」を語らねばいけません。では、具体的にどのような方法でWhyを語ればよいのでしょうか。解説していきましょう。

よいWhyのために ― ①採用担当者の「ストーリー」を語る

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よいWhyとは、採用担当者自身の個人史、ライフヒストリーです。「自分はこういう人生を送ってきた。こういう環境に生まれ育って、こんな人と出会い、こんな出来事があって、こんなことを学んだ。だから、こういうことを考える人になった」という、「ストーリー」「ドラマ」を語るわけです。

個人史を語ることで、結果として、採用担当者の情報をたくさん開示することになります。そうすることで、応募者から見た採用担当者像が、「得体の知れない不気味な人物」から「いろいろと共感できる血の通った信頼のおける人物」になっていくでしょう。入社動機を使って自己開示をしましょうというのはこのようなことです。

よいWhyのために ― ②共通点探しゲームのように

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Whyを個人史から説明する際に重要なポイントは、応募者との共通点や共感の接点を探ることです。人から信頼を得る方法は、約束を守るとか期待以上の成果を出すとかいろいろな方法がありますが、短期決戦の採用においては、ほぼ唯一「共通点をいかに見いだせるか」しかないと言っても過言ではありません。

自己開示をしていく過程で、共通点探しゲームをしているぐらいの気持ちで、相手との共通点を必死になって探してください。そして、共通点が見つかれば、「私もあなたと同じです」「あなたもそうなんですね、奇遇ですが、私もそうなんです」と、どんどん(しかし、さりげなく)アピールしていきます。

共通点が積み重なっていくことで、「これだけ共通点があるこの人なら、自分の気持ちをわかってくれるかもしれない」と信頼感が醸成されていくでしょう。

信頼を得ることで、ようやく口説きのスタートラインに立てる

採用担当者が自己開示をし、応募者の信頼を得ることで、ようやく口説きがスタートできます。これを踏まえずに色々なことをしても、ほとんど意味がありません。むしろ、眉唾な話をたくさん聞かされているのではないかと逆効果になることすらあるでしょう。信頼を得ることで、応募者も胸襟を開いてくれ、本音を話してくれるようになります。

何に不安を感じているのか。本当の選社基準は何か。自社の志望度は本当のところどれぐらいなのか、等々。このような本音の話を踏まえなくては、結局、当てずっぽうで情報提供しているのも同然です。相手が聞きたいことを伝えなくては、コミュニケーションはすれ違いになることでしょう。

採用担当者の皆さんは、まず、自分が応募者からどんな人物だと思われているかに注意し、自己開示を通じた信頼獲得に努めてみてください。すべてはそこから始まります。

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