【人事必見】採用活動のニューノーマル(新常態)について考える!

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プロフィール
株式会社モザイクワーク
取締役
髙橋 実
NTT、トヨタグループのクレジットカード事業立ち上げに携わり、トヨタファイナンス株式会社をはじめ複数社の人事を経て、2017年5月モザイクワーク入社。2018年4月より取締役に就任。

オンラインの便利さはもちろん、不便さも感じられた外出自粛期間。これまでは対面での面接が主流でしたが、図らずもコロナ禍によりテレワークの導入が加速したことで、オンラインでの採用活動へのシフトも急ピッチで進められています。しかし、オンラインによる面接などの実績がまだ少なく、画面越しのコミュニケーションに苦戦する企業も少なくありません。

そこで、マイクロ人事部長として複数社の人事部長やアドバイザリーをされている株式会社モザイクワークの取締役である髙橋さんに、ニューノーマル(新たな常態・常識)な採用活動が定着しつつある今、人事はどのようなことを大切にしながら採用活動を進めるべきか、そのポイントやテクニックについてお聞きしました。

採用活動におけるオンライン化の実情

採用のオンライン化が進む今、感じてらっしゃることは何ですか。

新卒採用はナビサイトを中心にオンライン選考が進んでいますが、中途採用に関しても同様にWeb会議ツールなどで面接を実施する企業が増えています。

しかし、オンライン選考へとシフトできなかった企業は採用活動に遅れをきたしており、ワークスタイルもリモート化などの新しい働き方への対応が出遅れてしまっている状況がうかがえます。コロナ禍によるアイドルタイムの期間は、フットワークの良い中小企業が先行して活動量を増やしていくことが理想的ですが、なかなか難しいというのが現状でしょう。

オンライン化が上手く進められていない企業の特徴などはあるのでしょうか。

オンライン化が上手くいかない企業は、例えばリアルな面接の場でも、応募者が入室してきた際の外的要因だけで選考を進めることが多くあります。

要は、ファーストインプレッションである程度合否を判断してしまっていることになり、そのような企業の面接官はオンライン選考になった瞬間に、どこで見極めればいいのか分からなくなってしまうのです。つまり、こうしたバイアスがある判断をリアルな面接で行っている企業ほどオンライン化に苦戦する傾向があります。

先入観で面接をしていなければ、リアルもオンラインも基本的にやることは変わらないということでしょうか。

基本的には変わりませんが、オンラインの面接時に難しいのは、クロージングです。最終選考で採用または内定を出したとしても、複数の企業にエントリーしている応募者にとって、オンライン面接のみで判断するのは非常に難しいこと。

なぜなら、これからの人生を左右する選択を画面越しの情報だけで判断していいのかと不安になりやすいからです。これは採用する企業側も同じで、雇用することが個人への投資と考えれば、会わずに採用を決めて本当にいいのかと躊躇するケースも増えるでしょう。

これは、オンラインだとお互いの熱量や雰囲気、そして本質をつかみにくいことが原因として挙げられます。リアルの面接では、企業側の想いや職場の雰囲気など五感で得られる情報が豊富なので、応募者は「ここで働きたい」という意欲が湧きやすい。

一方、オンラインでは通信状況によってタイムラグが発生することもあり、たとえそれが1秒程度の“間”であっても会話のテンポが乱れて、気持ち悪さが残ってしまう。そうなると、クロージングをする際も惹きつけが弱まってしまい決断させることができない状況に陥ります。

ニューノーマルな採用活動の心得

オンライン採用ではクロージングが難しいということですが、企業の魅力をしっかりと伝えられている企業もあります。その差はどこにあるのでしょうか。

ニューノーマルな採用では、既存の手法にこだわる企業ほど、クロージングだけではなく選考全体に苦戦する傾向があります。一方で、自社の魅力を上手に発信できている企業は、採用手段などの選択肢が豊富です。例えば、就活サイトだけではなくエージェントを活用したりスカウト採用を行ったり、新しいやり方を積極的に取り入れている。

チャレンジすれば失敗することもありますが、トライ&エラーを繰り返した経験値こそが採用力を高めると私は考えています。

もちろん、就活サイトは素晴らしいサービスです。企業側にとって使いやすく、求職者側にとって誰もが平等に使えて応募までがとてもスムーズに行えます。それは目的地まで案内してくれるカーナビのようなもの。ただ、便利であるが故に道を覚えなくなるため、転職サイトが何らかの原因でストップしてしまったら迷子になる、つまり何もできなくなってしまうのです。

ニューノーマルな採用活動で重要なポイントは、あらゆる方法を模索し、チャレンジする姿勢ということですね。

そうです。チャレンジするというと実にシンプルな表現になってしまいますが、今までやってきた採用手法を一度ゼロにして挑む必要があるため簡単ではありません。

自社がもつ強みや競争優位などを改めて整理し、どう伝えるかを考えながら今までやったことのない方法にチャレンジしていくのです。そうすると、本当に採用したい人物像が明確になったり採用の目的を改めて考えたりと、本質を見極める良い機会になるでしょう。

オンライン面接で多くの応募者と1on1で向き合い、クロージングまでしっかりと決めている企業は、シンプルに相手が求める情報をきちんと伝えて心を開いてくれる状態を創り上げています。こうしたコミュニケーションをしっかりと図ることで、最終的にはクロージング決定率が高くなるのは当然のこと。それをきちんと丁寧にやっているかどうかがオンライン面接における採用成功のポイントです。

例えば、採用ターゲットの年代によってもコミュニケーションに差が生じそうですが、その点はどうなのでしょうか。

ある程度キャリアのあるミレニアル世代はデジタルにも慣れつつアナログでのコミュニケーションを大切にしてきましたが、現在の学生を含むZ世代の若者はデジタルネイティブであり、日常的にオンラインでコミュニケーションをとることに慣れています。さらに、コロナの影響もあり、歴史上初となる全授業をオンラインで受けることも体験している。

そのため、企業側も中長期的な採用を考えた場合に、これらZ世代を受け入れるためにもニューノーマルな採用にチャレンジしておくことは有効な方策といえます。

withコロナの時代となり、オンライン化に初めてチャレンジする企業が多いからこそ、失敗してもリカバリーが効くタイミングであるともいえます。つまり、失敗を恐れることなくさまざまなことにトライして多くのナレッジを得られた企業こそ、これからのビジネスに必要な経験を得るチャンスです。

確かに、失敗するなら今のタイミングですね。ちなみに、失敗とはどのようなケースが多いのでしょうか。

これはニューノーマルな採用時の課題ともいえますが、やはりコミュニケーションの部分で、相手に伝えた気になっていて実は全く伝わっていなかったというケースが圧倒的に多いといえます。アナログの会社説明会や面接でも、その場の雰囲気であれこれ伝えているだけというケースは珍しくありません。

例えば、自社商品のラインナップが豊富であることを話して凄さをアピールしたとしても、相手によって受け取り方は千差万別。こういった場合の表現方法としては、ラインナップされた商品ひとつひとつのコンセプトを伝えたうえで、どう思うかをしっかりと問うこと。そうしないと、相手が考えていることを受け取ることができないのです。

そのやりとりをあらゆる方と繰り返し行うことで、どういう伝え方をすると相手はどう感じ取るのかを理解することができ、コミュニケーションの課題解決に繋がります。

これからのニューノーマルに必要なこと

他にもニューノーマルなコミュニケーションにおけるテクニックがあれば教えてください。

オンライン上の会話で必ず意識しなければならないのは、相手とのやり取りを1往復以上増やすことです。つまり、相手が「はい」とか「そうですね」などの返答で終わってしまうような質問を避ける必要があります。

アナログの面接では、相手の短い反応でもニュアンスで受け取れていたかもしれませんが、オンラインではそういったニュアンスを受け取ることは非常に難しいのです。

例えば、「当社に対してどのような印象をお持ちですか?」といった内容の質問をすれば、具体的な理由が返ってきます。そんな二つ返事にならないような問いをして、相手が言語化できるように誘導してあげるコミュニケーションを意識した方がいいでしょう。

リアルに対面していれば、周囲の雑音や人の動きで雰囲気が掴めるけれど、オンラインでは汲み取れない。そういった理解のもとで対策を練る必要があるのですね。

職場や社員たちの雰囲気を言葉だけで伝えるのは難易度が高いので、ひとつの解決策として動画の制作が効果的です。

事前に会社の雰囲気をビデオに撮っておいて、オンライン上で流すだけでも、雰囲気や温度感を掴めるようになります。動画のクオリティに関しては、自社のオリジナリティを伝えることが大切なので、費用をかけて仰々しいものを作らなくてもかまいません。

社員がハンディカメラで撮った素人感のある動画のほうが、むしろ親近感が湧きますし一生懸命さが伝わります。画面越しでありながらリアルを伝えられることで、社風に合った人材とのマッチングにも繋がるはずです。

また、動画はパソコン画面との親和性が高いところもポイントです。まさにテレビを観るような感覚に近いので、表現を向上させたい場合はテレビ番組の編集はとても勉強になると思います。

例えば、3人以上で対談している時に画面を3分割にしてしまうと、視点がずれて会話をインプットし辛くなってしまう。そこで、テレビ番組でよく使われるワイプのように編集して話者以外を映すことで、伝わりやすさは抜群にアップします。

ワイプに映る人たちのリアクションも臨場感が増しますよね。Web会議ツールでも活用できそうだと感じました。

面接官が複数いる場合でもワイプで参加すれば、リアルな面接よりも圧迫感は軽減されると思います。また、Web会議ツールのひとつである「Zoom」にはレコーディング機能があるので、どのようなやり取りをしたかを社内に共有できるというメリットがあります。

こうしたWeb会議システムの機能を駆使することで、一次面接から二次面接にあげる場合も応募者の受け答えや人柄を映像で共有できるため、選考の質を高めることにも繋がります。

さらに、人事の育成という観点からもメリットがあります。例えば、新人の採用担当者にオンライン面接での伝え方やノウハウを教える際、言葉だけではなくリアルなやり取りを共有することができるのです。面接は場数を踏むことが大事なので、リアルな面接シーンを疑似体験することにより、今まで以上に理解を深められるでしょう。

Web会議ツールは活用次第で社内にも好影響を与えるのですね。では、最後にこれからのニューノーマルな採用活動に期待することをお聞かせください。

採用手法という視点からもう一段上がって、経営視点という捉え方で活動できるようになると理想的です。採用だけにフォーカスしてしまうと、どうしても手法になってしまうので、そもそも企業として何を目指すのかを明確にし、改めて採用戦略を見直していくことが重要です。

これから先、世の中はよりスピーディに変化していくので、新しいことに対して物怖じすることなくチャレンジしていけるかが、企業の発展にとって重要なカギになると考えています。

また、これから採用格差がさらに顕在化するであろうとも感じています。企業においても“採用の本質を捉えて活動している企業”と“今までと変わらない活動をしている企業”、採用される側は“引く手あまたの能力の高い人”と“普通の人”の格差が今まで以上に広がっていくでしょう。世の中全体に視野を広げつつ自社がどのフェーズにいて今後のどうあるべきかを再度考えることで、より良い未来を切り開くことができるのだと思います。

ニューノーマルな採用活動では失敗が成功への近道

コロナ禍によって、世の中のリモート化が進み、オンラインによる面談や面接は増えています。しかし、どうしてもリモートワークに慣れることができずに、既存のリアルな働き方へと戻ってしまう企業が多いことも事実。ニューノーマルな環境へとシフトしなければならないのは、若者よりもキャリアのある人たちなのかもしれません。

これから社会で活躍していく若手や外国人労働者にとっては、ニューノーマルこそがベースとなります。新しいことを始めれば、必ず課題点や失敗することは増えますが、世界中がひとつのターニングポイントを迎えている今こそ、チャレンジと失敗を繰り返して変化していくフェーズといえます。「失敗は成功のもと」という気持ちで、ぜひニューノーマルな採用活動にチャレンジしていきましょう。