新しい取り組みを成功に導くために人事部は何をすべきか?

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プロフィール
株式会社タバネル
代表取締役 奥田和広
上場ファッションメーカー、化粧品メーカー、コンサルティング企業 などで勤務。取締役として最大170人の組織マネジメントに携わる。
自らのマネジメント経験とコンサルティング経験を経て、成長企業の共通項OKRに出会い、株式会社タバネルを設立。著書「本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR」

リファラル採用(縁故採用)、1on1ミーティング、従業員エンゲージメント調査、OKRなど、人事や組織に関わる新しい施策が続々と生まれています。多くの企業がそれらの施策を取り入れることで素晴らしい効果を発揮しています。しかしながら、効果を発揮していないばかりか、従業員から不平不満が噴出しマイナス効果になってしまう企業も少なからずあります。

では、新しい取り組みを成功に導くために人事部門は何をすべきでしょうか? 導入を検討し準備する際に人事部門に必要なポイントを解説しましょう。

目的を明確に言語化すべき

人事部門に限らず仕事に取り組むうえで目的は重要ですが、ついつい忘れられてしまうこともあります。しかしながら人事部門の取り組みは自分だけでなく会社全体に影響を及ぼすため、目的は特に重要です。そこで人事部門において目的は、自分たちだけでなく従業員に伝わるもの、つまり明確で分かりやすく言語化することを意識しなければなりません。

自社にとっての必要性を明確にする

まず、なぜその取り組みを自社で行うのか? 自社にとってなぜ必要なのか? なぜ“今”取り組むのか? を明確に言語化しましょう。「流行っているから」、「競合が取り入れているから」などの理由だけで新しい手法を取り入れても、上手く機能しません。自社の課題を解決するため、理想の姿を目指すために有効であることが、取り組みを成功させるためには不可欠です。そして、なんとなく目的を共有するのではなく、解釈のズレを生まないために言語化することが大切です。

覚悟を伝え、協力を促す

熱意が伝わってこない人に比べ本気で取り組もうとしている人に、多くの賛同者が現れます。人事部門として新しい取り組みに対する覚悟、熱意を従業員に伝えることで、取り組みに対して理解し、共感する賛同者になってくれる社員が現れます。賛同者がいることで、取り組みの成功確率はグンと高まります。

時には覚悟の表現方法の一つとして、経営トップに目的と覚悟を語ってもらうことも有効です。経営者の本気度が伝われば、従業員も本気で取り組んでくれます。そのためにも自社にとっての必要性を明確にし、経営者のコンセンサスをしっかり得ておく必要があるでしょう。

目的はやるべきこと、やらないことの判断基準となる

新しい取り組みを始める時には、専門書や他社事例から学ぶことも多いかと思います。そこにはたくさんの「やって良かったこと」が並んでいます。しかしながら、資源は有限であり、たくさんのことに手を出すと結局どれも成果に結びつきません。そこで、自社の目的を明確にすることで、その目的にとって本当に重要な「やるべきこと」、優先度が低い「やらないこと」を決めることができます。成功に導くために、自社の目的に沿った本当に「やるべきこと」に集中して取り組みましょう。

人事部門は積極的に試行すべき

近年、新規事業を成功させるためのMVP(Minimum Viable Product)という概念が広まっています。MVPとは、「実用に足る最小限の製品・試作品」のことを指します。完全な製品を作る前に最小限のもので試すことで試行錯誤を繰り返し、価値あるものを作り上げることを示したものです。人事部門で扱う新しい取り組みについてもこの考えを取り入れるべきでしょう。

人事部門でMVPを先行導入する

多くの人事施策は、全社に導入する段階では、様々な事態、部門を想定して準備します。その前段階として人事部門でその施策の価値が分かる最小限の状態でテスト導入することをおすすめします。

たとえば、1on1ミーティングなどは人事部門に限定しても容易に導入可能でしょう。人事部門の上司、部下が実際に1on1ミーティングを一定期間継続して実施してみましょう。そうすることで、自社に合わせてブラッシュアップできるだけでなく、実際に導入する難所の乗り越え方を把握することが可能になります。また実体験することで、全社導入時に従業員に伝える目的や効果が自分ごと化するため、より共感を得やすくなるでしょう。

「従業員のために」ではなく「従業員の立場で」試行する

多くの人事施策を「従業員のために」考えることが多いのではないでしょうか。「従業員のために」と考えること一見良いように思うかもしれません。しかしながら、従業員に対して上から目線になるだけでなく、自分たち人事部門が今できることを前提に考えてしまい、結果的に本当に自社に合った導入の弊害になります。 では、本当に効果ある施策にするにはどう考えればよいのでしょうか。

「従業員のために」ではなく「従業員の立場で」考えることが大切です。「従業員の立場で」考えるためには自らその施策の実行者になることです。そのためにまずは人事部門で試行し、「従業員の立場」と同じ目線を持ちましょう。本当に何が必要か、ネガティブな感情になることはないか、などを「従業員の立場で」理解できるようになり、結果として、より効果的なブラッシュアップを考えることが可能になります。

PDCAサイクルで磨き上げるべき

新しい取り組みは導入がゴールではありません。導入後に活用され、狙い通りの効果が発揮されてこそ成功と言えます。そのためには、明確に言語化された目的に対して、PDCAサイクルを回してブラッシュアップしていくことが重要です。

成功基準と先行指標を明確化しておく

先述のとおり、導入の目的を明確に言語化しておかなければならないが、同時に成功基準を定義しておくと良いでしょう。退職率の改善、従業員エンゲージメントの向上、採用人数の増加などが成功基準として明確に決めておきましょう。ただし、これらの基準に顕著な変化が見られるまでには時間がかかります。そのため、先行指標として、新しい取り組みの認知率、実施率、満足度などを定めたうえで、モニタリングのタイミングまで決めておくと良いでしょう。

従業員の本音を聞き出し改善する

成功基準や先行指標をモニタリングすることは、効果検証をする上で欠かせません。一方で、指標だけを鵜吞みにして改善策を立てることは危険です。たとえば実施率が低い状況で、現場マネージャーへのアラートメールを出す対策を考えたとします。一時的には実施率は上がるかもしれませんが、実施率が本当に低い理由、つまり現場の本音に基づかない改善策になっている可能性が高いです。なぜ実施できないのか、実施率が高いチームと低いチームでは何が違うのか、など社員の本音を引き出して、改善策を立てるようにしましょう。その際に、Webアンケートではなくできれば対面で直接話して聞き取ることをお勧めします。

まとめ

多くの人事部門では、より良い会社にしたい、多くの従業員に働きがいを感じてほしい、などの想いを持って、新しい施策の情報収集に熱心です。しかしながら、ただ新しい施策を導入してもその想いが実現しないことが多いです。情報収集のようなインプットも大切ですが、積極的なアウトプットをすることが解決に近づくことになります。新しい施策について目的を明確に言語化し、自分たちで試行し本当の効果を実感することこそが成功への道となるでしょう。その上で現場の声を拾いながらPDCAサイクルを回すことで新しい施策を成功に導きましょう。