テレワークにおける勤怠管理と従業員の信頼関係

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プロフィール
行政書士/井手 清香
滋賀大学経済学部ファイナンス学科卒業。大手システム会社に勤務後、退職。ライターとして各種記事を執筆。2014年、ライター事務所「ライティングスタジオ一清」を開設。2018年度行政書士試験合格、2019年、滋賀県大津市に「かずきよ行政書士事務所」を開業。法律関連のライター兼現役の行政書士として活躍中。楽しく、分かりやすい法律の記事をお届けするために、日々奮闘中。

テレワークをする従業員の勤怠管理をどうしたら良いかわからない方は多いのではないでしょうか。新型コロナウイルスの流行により、管理職としてもどうしたら良いかわからないまま、見切り発車でテレワークを導入した会社もあるでしょう。

今回は、テレワークにおける勤怠管理のポイントについてご紹介します。

テレワークの勤怠管理が難しい理由

テレワークは、勤怠管理が難しいです。具体的には、以下の問題があります。

従業員の様子がわからない

第一に従業員の様子がわからないということです。真面目に働いているのか、そうでないのか、実際にその場を見ていないのでわかりません。 業務をしている環境についても、聞き取りを行うことである程度把握することはできますが、完璧に把握することは難しいでしょう。

自己申告を信じるべきか自信がない

第二に、勤務時間の自己申告を信じられるかという問題があります。働く時間については、基本的に自己申告制になります。そのため、本当にその時間働いていたのかどうかは、最終的に従業員を信じるしかありません。

従業員と会社との信頼関係の問題が根底にある

テレワークは、見えない場所で自己申告に基づいた勤務時間により行われるため、従業員と会社の信頼関係が軸になります。とはいえ、信頼関係だけでは不安なのも事実です。 そこで重要になるのが、労働時間を裏付ける資料を残すことと、長時間労働のインセンティブをなくすことです。

テレワークの根底には従業員との信頼関係が必要

テレワークの根底にある従業員と会社との信頼関係の問題を解決するためには、どうすれば良いでしょうか。

テレワークを厳密に検証する技術は無い

現在、テレワークにおける従業員の勤務実態を完璧に把握し、検証する技術はありません。プライバシーの観点から、個人宅の中を映して逐一勤務の様子を中継するのも非現実的です。しかし、ツールを活用すれば、完璧ではありませんが、その時間帯に確かに働いていたであろうという証拠を残すことはできます。後ほどどのようなツールがあるのかをご紹介します。

従業員との信頼関係構築は大前提になる

どのようなツールを使っても厳密な検証は不可能なのですから、最終的に従業員を信じることが重要です。従業員との信頼関係構築は大前提であり、最優先事項です。

長時間労働のインセンティブをなくす

従業員が長時間テレワークをして残業代を稼ぐ発想にならないためには、就業規則でテレワークの勤務時間についてきちんと規定を作ることが必要です。

「テレワークの場合は残業代がつかない」と言われることがあります。しかし、会社側が労働時間を把握できるという前提で、法定労働時間を超えて働く場合は、従業員は残業代を請求することができます。テレワークの場合、従業員が会社からの指示にすぐ応答できる状況にあることや、時間外にも業務の指示を受けることがあるので、労働時間が長くなるケースも少なくありません。

したがって、必要な残業時間はテレワークであっても認める必要があります。 テレワークに伴って導入・運用できる可能性がある制度としては、以下の制度があります。

  • 裁量労働制・・・実労働時間に関係なく一定時間働いたものとみなす制度。
  • 事業場外みなし労働時間制・・・社外で業務を行う従業員の労働時間の把握が客観的に困難な場合に、実労働時間に関係なく労働時間を一定とみなす制度。
  • フレックスタイム制度・・・業務の始業時刻と終業時刻を労働者の判断に委ねる制度。労働時間を一定とみなすものではない。

裁量労働制は、適用できる職種が限定されてしまうのが現実です。事業場外みなし労働時間制は、要件が厳しいことが特徴です。

厚生労働省によると、事業場外みなし労働時間制を導入する際の要件は以下の通りです。

「事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務です。(中略)次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)については、原則として、労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます。

  1. 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
  2. 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
  3. 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。」

事業場外みなし労働時間制が適用されるのは「労働時間の算定が客観的に困難な業務」ですが、現在では様々な勤怠管理のツールがあるので、要件に当てはまらない場合も考えられます。

さらに、スマホやパソコンでテレワークの社員とすぐに連絡が取れる状態になっている場合も、要件に当てはまらなくなってしまうでしょう。

現実の運用としては、裁量労働制(適用業種は限定的)、またはフレックスタイム制度を導入するなどして労働時間に関するルールを構築していくことになるでしょう。フレックスタイム制度の導入の際には、就業規則などへの規定や、労使協定が必要です。導入の際には、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

急速にテレワークが拡大したこともあり、就業規則の見直しに動いている企業は多いです。実際、筆者の知っている何人かの社会保険労務士は、現在就業規則の見直しの相談で忙しいそうです。また、厚生労働省の助成金(テレワークコース)の受給相談を受けることもあるとのことでした。急なテレワークの導入で大変な状況ですが、このような状況下だからこそ、働き方を前向きに変化させていきたいですね。

テレワークの勤怠管理の必須ポイント

テレワークにおける勤怠管理のポイントは、労働時間を記録することと、作業状況を把握することです。

労働時間の記録については、始業時と終業時、メールを使って確かにその時間に働いていたという記録をつけることができます。

作業状況については一定時間毎に画面の撮影をするソフトや、数時間毎の進捗報告、チャットアプリの記録などを活用できます。

勤怠管理に使えるツール

勤怠管理において、始業時刻と終業時刻の記録は外せません。簡単なものでは、始業と終業をメールなどで上司に報告する方法がありますが、他には専用のソフトやアプリを使用して記録する方法があります。

以下のソフトやアプリも提供されています。

  • ネットワーク機能つきのタイムレコーダー
  • パソコンの起動とシャットダウンの時間を記録するソフト
  • GPS情報を記録できるスマホアプリ

これらのソフトには、給与計算機能や年末調整、マイナンバーの管理機能などと連動させることができるソフトもあります。給与計算や年末調整のシステムをまだ導入していない場合は、勤怠管理のツールと共に導入しても良いでしょう。便利なツールを使って、労働時間の検証を行いましょう。

働き方別必須ポイント

下記の働き方は、通常の労働時間制度と違いますので、以下の点に気をつけてください。

裁量労働制・・・業務を進める方法や手段、時間配分などを労働者自身で決めて働くスタイルです。専門業務型裁量労働制は研究者や士業など19の業務に限定されています。企画業務型裁量労働制は、業務が所属する事業場の運営に関するものであり、企画立案などの業務であって、企画・立案・調査・分析についての実施時期や方法を労働者が決められることが要件です。つまり、どの会社でも導入できる働き方ではありません。専門業務型の場合は業種が、企画業務型の場合は何についての企画で進め方や方法を労働者に任せられるのかという点に注意が必要です。

→労働時間が長くなってしまいがち(そして労働時間が何時間であってもみなし労働時間分労働したことになる)なので、労働時間を把握し、業務量に見合っているかどうかを検証する必要があります。健康面も含めて管理が必要です。

事業場外みなし労働時間制・・・みなし労働時間制の一つですが、職種による制限はありません。しかし、使用者の指揮監督が及ばない業務であることが必要です。労働時間を算定しづらい部分に関してみなし労働時間を採用する仕組みです。時間外労働、深夜労働、休日労働の全てに関して割増賃金を払わなければいけません。

→この働き方の場合は、所定労働時間以外の労働時間の部分をきちんと把握しておく必要があります。

フレックスタイム制度・・・会社が決めたコアタイムに就業していれば始業時間と就業時間を自由に決められます。ただし、所定労働時間分(1日あたり8時間)働かないといけないので、フレックスタイムで出勤が遅くなると、退勤も遅くなってしまいます。労働者からすれば、労働時間の開始と終了の時刻については自分で決められても、労働時間そのものの長さは決められません。

→労働時間そのものの長さは所定労働時間通りになります。しかし、労働者の出勤、退勤の時間がバラバラですので、朝礼や早出命令ができなくなります。顧客からの連絡があった時も、何時に出勤するかわからないと、対応に困るでしょう。勤務実態把握が複雑になりますので、社内でいつ誰が出勤するか報告・共有する仕組みづくりが必要です。

まとめ

テレワークの難しさの根本は、従業員の自己申告をどこまで信じていいのかという点です。従業員の姿も働きぶりも見えない中で、究極的には自己申告を信じることになります。したがって可能であればテレワークを導入する前か導入時に、従業員との信頼関係を構築し、不正が起きないように配慮することが重要です。テレワークの制度を作るときに、不正が起こりにくい働き方を導入することも忘れないでください。その上で、各種ツールを使って勤怠管理をし、業務の効率化を目指しましょう。