仕事にまつわる9つの嘘

目次

『Nine Lies About Work(仕事にまつわる9つの嘘)』というタイトルがついたこの本には、仕事の基本として一般的に受け入れられていることが、どれも嘘であると述べられています。人間の強みを重視したコンサルタントとして知られるベストセラー作家のマーカス・バッキンガム氏と、シスコリーダーシップ・アンド・チームインテリジェンスのエグゼクティブであるアシュリー・グドール氏が、データや事例を元に多くの人が信じている考えを次々と否定していくスタイルは、ビジネス書としては一風変わった面白い本です。私たちが職場でどのような間違った推測や、誤った考えに出合っているのか、概要をご案内します。

  1. 嘘その1 人はどの企業で働くかを気にする
  2. 嘘その2 優れた計画を立てることが重要
  3. 嘘その3 よい企業にはカスケード型の目標がある
  4. 嘘その4 優れた人材は均整がとれている
  5. 嘘その5 部下はフィードバックを望んでいる
  6. 嘘その6 人はほかの人を正確に評価できる
  7. 嘘その7 人にはポテンシャルがある
  8. 嘘その8 仕事と生活のバランスが最も大切である
  9. 嘘その9 リーダーシップが重要である

嘘その1 人はどの企業で働くかを気にする

企業ランキングで上位になっている企業に就職しても、業績が伸びている企業に就職してもうまくいかないことがあります。従業員にとっては、どの企業で働くかということよりも、自分に合ったチームで働くことのほうが重要です。直接かかわる同僚や上司とうまくいくかどうかのほうが、企業全体の評判よりもはるかに大切なのです。

あなたのチームが気にするべき8つのこと

エンゲージメントが高く生産性のあるチームでは、チームメンバーが次の8つのことに満足できています。チームリーダーは、メンバーがこの8つに満足できているかアンケートや面接などで確認するようにします。

  1. 企業が掲げるミッションが素晴らしいと信じている
  2. 職場では、自分に何が求められているかはっきりと理解できている
  3. チームの中では、自分の価値を認めてくれる人に囲まれている
  4. 自分の強みを仕事に生かせる機会が毎日ある
  5. チームメイトが自分の支えとなってくれる
  6. 自分がよい仕事をすれば、それが認められると分かっている
  7. 企業の未来を信じている
  8. 職場には、いつでも成長のためのチャレンジがある

嘘その2 優れた計画を立てることが重要

チームリーダーの役割として3か月計画のようなプランを立てる役割を与えられている人は多いかもしれません。正しい計画を立て、それを企業の計画に織り込むことができれば、必要な人材が割り当てられ、正しいタイミングと順序で物事が進み、みんなの役割が明確になり成功がついてきます。ただし、そのようなことは滅多に起こりません。

優れた計画を立てることよりも、その計画を実行するための知恵が重要です。例えば、明らかに人員不足なのに計画を実行しようとしていないでしょうか。また、チームリーダーは、メンバーの進捗状況を毎週確認して任務が遂行できるように調節できているでしょうか。優れた計画を立てることよりも、どのように実行するかが大切です。

まず、チームリーダーがするべきことは、計画実行に役立つ情報をチームメンバーにできるだけ多く提供することです。さらに週に1度メンバー全員に進捗状況を確認し、今週の最優先事項と、助けが必要な部分を聞き出します。変化のスピードは速く、計画したときと状況がどんどん変わっていきます。情報を与えることと、個々のチームメンバーの知性に頼りながら、リアルタイムでチームの努力を調整していくほうがうまくいきます。

そしてリーダーが進捗状況の確認を週に1度できる環境を整えることが、とても大切です。調査によると、週に1度の進捗状況確認ができれば平均でチームエンゲージメントが13%上がりますが、月に1度の確認ではエンゲージメントが5%下がってしまいます。

嘘その3 よい企業にはカスケード型の目標がある

組織のトップが立てた目標を達成するために、部署目標、チーム目標、個人目標と滝のように目標をつなげていくカスケード型の目標管理法は人気があります。しかし著者は、成功する企業は目標をカスケード型にしているのではなく、企業が存在する意義をカスケード型にしているのだと指摘します。

目標とは人々のやる気を正しい方向に向かわせるものです。しかし現実にはやらなければいけない仕事が目標として掲げられていることがあります。それは目標ではなく、単なる仕事です。

企業が存在する意義をカスケード型に上から下に伝えることで、先に述べた「あなたのチームが気にするべき8つのこと」の「企業が掲げるミッションが素晴らしいと信じている」という項目と「企業の未来を信じている」という項目が向上します。

一つの例としてマーク・ザッカーバーグがFacebookに書き込んだ投稿が挙げられています。投稿の中でザッカーバーグは、Facebookの目的を「世界をもっとつなげること」であると述べFacebookの構造を変えることを宣言しました。そしてプロダクトチームに課した、ユーザーがソーシャル上でもっと意味のある交流ができるようにするという新しい目標を発表しました。

それ以来少なくとも10年にわたり、半年ごとにFacebookが存在する意義を、世界中の人々と彼のもとで働く人々に向けて発表しています。ザッカーバーグはFacebookが正しい道を歩むための微調整を含めて、自分の考えを伝えることを重視し発表しているのです。

嘘その4 優れた人材は均整がとれている

均整がとれて何でもできる人が優れている人材とは限りません。個性のほうが大切です。優れた人材は均整がとれていると思っている人は、自分の弱みを鍛えて何でもできるようになろうとします。しかしハイパフォーマンスの研究を見ると、個々に違いがあり、自分の強みを理解しその開発に力を入れた結果として高いパフォーマンスを実現しています。

個々の苦手なことに注目するのではなく各自の強みを鍛えるのを助けることによって、よい結果が生まれます。優れたチームリーダーは、メンバーそれぞれの強みを見いだすだけでなく、個人が受け持つ役割や責任範囲をその人に合わせて微調整することが上手です。そうすることで、メンバーは毎日の仕事の中で自分の強みが鍛えられているのを感じることができます。

嘘その5 部下はフィードバックを望んでいる

ミレニアル世代がコンスタントなフィードバックを望んでいるという話題が、ビジネス書やウェブメディアにあふれています。また、メンバーにネガティブなフィードバックをきちんと伝えることがチームリーダーの役割であると思っている人もいるかもしれません。しかし著者によれば、部下はフィードバックを必要としていません。ネガティブなフィードバックよりも自分に注意を向けてもらいたいと思っているのです。

調査によれば、ポジティブな注意を向けることは、ネガティブなフィードバックをすることよりもチームのパフォーマンスを高くする効果が30倍あることを示しています。もちろん問題が起きている場合は解決しなければなりませんが、チームメンバーの強みを生かして上手くいかない部分を埋められるようにアドバイスするほうが効果的です。もしチームメンバーが問題を抱えて相談をしてきたら次のように伝えてみましょう。

  • まず現在について。上手くいっていないことにフォーカスするのではなく、上手くいっていることを3つあげてもらいます。
  • 次に過去について。過去に現在起きているような問題をどのように解決したか尋ねます。
  • 最後に未来に目を向けます。「いま何をすればいいか、もうわかっていますか?」とチームメンバーがすでに決定をしていると仮定した質問をします。こうするとチームメンバーが自分で解決策を見つけることを手助けできます。

嘘その6 人はほかの人を正確に評価できる

人はほかの人を正確に評価できません。言い換えれば能力や性格を数値で表すことは不可能です。もし「この人は戦略的思考ができる人である」と推測した場合でも、その能力を正しく10段階評価することは難しいことではないでしょうか。能力に対してレーティングを出す測定方法では、評価を出す人の裁量に頼ってしまいデータに不純物が含まれます。その結果、正しいデータは得られません。

しかし、人は自分の経験であれば正確に評価することができます。ある人のパフォーマンスを10段階で測定するのではなく「絶対に成功させなければいけない場面で、あなたはこの人に仕事を依頼しますか?」という質問であれば、その回答には信頼性があります。ほかにも信頼性のある評価を出すために次のような質問が役に立ちます。

  • このチームメンバーと一緒にできるだけ多くの仕事をしたいと思いますか?
  • このチームメンバーについて、すぐに報告しておいたほうがいいパフォーマンス上の問題があると思いますか?
  • もしあなたに権限があったら、今日この人を昇進させますか?

嘘その7 人にはポテンシャルがある

潜在能力や可能性を表す言葉としてポテンシャルがあるという言い方をします。ポテンシャルが高い人と低い人という区別が本当にできるのでしょうか。著者は、人に必要なのはポテンシャルではなく、勢いの強さやスピード、そして方向性だといいます。ポテンシャルの高い低いで区別することをやめ、各チームメンバーの勢いやスピードのレベル、方向性を気にするべきです。誰もが成長のチャンスを持っています。

嘘その8 仕事と生活のバランスが最も大切である

仕事と生活のバランスに悩むよりも、チームメンバーが仕事を好きになるよう励ましましょう。なぜならば、ライフ・ワークバランスのアイデアは、仕事は悪、生活は善という考え方が前提になっているところがあります。そしてこのバランスを取ることは、ほとんど誰もできないほど難しいことです。バランスが取れないことにストレスを感じるよりは、好きな仕事に打ち込みましょう。

人は自分の好きなことに打ち込んでいるときに最も生産性が上がり、クリエイティブで、寛大で、立ち直りやすく、革新的、協力的、オープンで、パワフルになります。

嘘その9 リーダーシップが重要である

私たちはリーダーシップを訓練で獲得できる特色としてとらえがちですが、それは間違いです。リーダーシップとは状態です。ついてくる人がいればあなたはリーダーとなり、ついてくる人がいなければリーダーにはなれません。ですから「優れたリーダーになるためにどうすればいいか」と考えることは無意味で「なぜその人に人がついていくのか?」と考えるほうが自然です。

歴史を振り返ってみても、私たちが考えるリーダーの要素を持っていない人が、優れたリーダーになっていることはよくあります。私たちは突出した人物についていきたくなるのです。

私たちがリーダーについていくのは、その分野に優れているだけではなく、私たちの未来への展望を彼らが変えてくれるからです。特に未来を確信させてくれる人に私たちはついていきたくなります。リーダーシップは重要ではありません。重要なのは、どうしてその人についていきたくなるかというフォロワーシップなのです。そしてこれは、訓練で手に入れるものではなく、人間関係から生まれるものです。

疑問を持ち、何のために実行するか考えてみること

著者は、全編を通して、本当に大切なのは最初にあげた「あなたのチームが気にするべき8つのこと」であると繰り返します。この本は、仕事に関して「こうするべき」と一般的にアドバイスされていることでも、疑問を持ち何のためにそれを実行するのか、そして自分のためにどう生かすのか考えることが大切だと気づかせてくれます。

Nine Lies About Work:A Freethinking Leader’s Guide to the Real World
著者 Marcus Buckingham, Ashley Goodall
出版社 Harvard Business Review Press(初版2019/4/2)
ISBN: 9781633696303