経営・ビジネスを加速するための人材育成プログラムの考え方とは?(前編)

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プロフィール
株式会社グロービス
グロービス・コーポレート・エデュケーション シニアコンサルタント
小林美沙
大学卒業後、求人メディアサービス等を運営する企業に入社し、企画営業に従事。その後、ITベンチャー企業に人事として転職。人材開発室のマネージャーとして、採用、配置、人事制度、育成、メンタルヘルス等幅広い業務に携わる。2016年より現職。人・組織の面から顧客企業の変革を支援する今の仕事にやりがいを感じている。

こんにちは、株式会社グロービスの小林美沙と申します。グロービスは『経営に関する「ヒト」「カネ」「チエ」の生態系を創り、社会の創造と変革を行う』ことをビジョンに掲げ、経営大学院やビジネススクールの運営、また、法人企業様向けのサービス提供などを行っている会社です。その中で私は、法人企業様向けに、カスタマイズ型の研修プログラムを企画・設計する仕事をしています。

現職で携わっているプロジェクトや、前職での人事経験を踏まえて、今回は「人材育成プログラムの考え方」についてお話しします。事業環境が急速に変化するなかで、企業の戦略、そして、人材に求められる知識や能力も変化しており、プログラムを企画する難易度は増していると思います。この記事が人材育成に関わる方々の課題やお悩みを解決する一助となれば幸いです。

まず前編では、「プログラム内容を検討する前に考えるべきこと」についてお話しします。

まず、目的をおさえる

プログラムの検討に入る前に、「トレーニングを企画する目的」をおさえ、関係者間の認識を合わせることが重要です。例えば、「将来の経営リーダーを育てる」のか、「今の管理職に必要な知識・スキルを習得する」のかでは、研修の対象者が同じであっても、用意すべきプログラム内容は大きく異なります。

当たり前のように感じられるかもしれませんが、具体的な検討を始めると、「最新のビジネス事例を学ぶのがよいのではないか」「いやいやリーダーシップを高めることが重要だろう」などと、プログラムの中身について、議論が白熱しがちです。

そのような時に立ち戻るのが、「今回の企画は何を実現するために行うか」、即ち「目的」になります。具体的な検討に入る前に、目的をおさえること、また、目的がズレないように、目的を意識し続けることが重要です。

次に、対象者を考える

次に考えるのが「育成の対象者として誰をどのように選ぶか」です。ある階層や部署の全員を対象とするトレーニングの場合は問題ないのですが、何かしらの方法で対象者を選ぶ必要がある場合は、対象者を選ぶ「基準」と「選び方」を決める必要があります。

この基準と選び方を決め、関係者に理解と協力を得ることはとても難しく、各社がそれぞれに工夫し、ブラッシュアップを重ねているポイントです。

対象者を選ぶ「基準」

対象者を選ぶ基準として設定する項目は、「実務能力」「基礎能力」「実績」「意欲」などがあります。どの項目を重視するかは、トレーニングの目的によります。

例えば、「あるポジションの候補者となる人材を、一定数育てたい」といった目的の場合や、若手層を対象にしたトレーニングの場合には、将来のポテンシャル、即ち、論理思考力や経験から学ぶ力といった「基礎能力」や、問題意識の強さや好奇心などの「意欲」を重視して対象者を選ぶことをおすすめします。

ただ、このような基準を設定したとしても、「各項目の優先順位はどのように考えればよいか」「各項目を候補者が満たしているかを判断するために、より詳細な定義が欲しい」など、協力をお願いする現場から質問や要望が出ることもあります。そのため、「斜め上(他部署のひとつ上)のポジションの仕事ができそうな人」といった定性的な基準を設ける会社もあります。

対象者の「選び方」

対象者の選び方は、「指名制」と「公募制」の2つの方法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。

「指名制」とは、人事部や上司が対象者を決定する方法です。会社として期待できる人材を明確に選ぶことができるメリットがある反面、本人の参加意欲を喚起できるよう、本人への通知方法や動機付けを適切に行うことが重要です。

「公募制」とは、参加者を募集し、本人の立候補をベースとする方法です。希望者が多く集まった場合は、そこから選考を行います。公募制は、参加意欲のある人材を集めることができることがメリットです。一方、選考から漏れてしまった希望者をどのようにフォローするかに留意が必要です。例えば、あらかじめ選考の基準や方法を明確にしておく、結果は面談を通じて伝える、次の受講機会を案内する、といった対応が考えられます。

選考の方法

選考の方法には、「業績評価による選考」「現場上司の推薦」「面接の実施」「レポートによる選考」などさまざまな方法があります。

「業績評価」は、本人がそのトレーニングを受けることに対して周囲からの納得を得るためにも、一定の水準にあることが必要でしょう。

「現場上司の推薦」は、人事部からは見えない対象者の日常の行動について情報を得ることができます。

「面接」は、本人のやる気やコミットメント、基礎能力や価値観など、多岐に渡る項目を確認することができます。

「レポート」は、本人の姿勢や思考力、視野の広さなど、日頃どのようなことに問題意識を持っているか、何をどこまで深く考えているかなどを読み取るのに向いています。

対象者を選ぶ「基準」に合わせて、適切な選考方法を選んだり組み合わせたりすることが重要です。

まとめ

今回の前編では、「プログラム内容を検討する前に考えるべきこと」についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?

プログラムの内容を検討する前に考えるべきことがたくさんあり、やや不安に思われたかもしれません。しかしながら、この前段の議論が後半のプログラムの内容を検討する際のヒントにもなりますので、人事チーム内、そして、経営陣や現場の方々とも議論を重ねていきましょう。

次回は本テーマの主題である、プログラム内容について、企画のプロセスや各プロセスの留意点などについてお話ししたいと考えています。また次回お会いしましょう!