本業+副業はもう古い!?新しい働き方「ポートフォリオキャリア」とは

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日本で「副業」とは、週末の空いた時間を利用した働き方を指すことが多いですが、世界では2つのキャリアを同じように歩んでいくことが主流となりつつあります。そこでミレニアム世代で増えている「ポートフォリオキャリア」について解説していきます。

ポートフォリオキャリアとは

近年の働き方改革により、キャリアデザインにも多様性がみられるようになりました。2017年に経済産業省が提言した「パラレルキャリア・ジャパンを目指して」でも、副業と兼業の推進が記されています。しかし、ポートフォリオキャリアは「本業と副業という考え方」とは異なる新しい働き方です。

ポートフォリオキャリアの“ポートフォリオ”とは、金融業界用語の「金融商品の組み合わせ」からきており、「複数の仕事を掛け持つ働き方」「複数の肩書きを持つキャリア形成」を実現したワークスタイルを意味します。また、ポートフォリオキャリアとして活動する人は「ポートフォリオワーカー」と呼ばれています。

ポートフォリオキャリアが生存戦略になる理由

IT技術の急速な発展により、当たり前のようにAIがワークフローに浸透すると考えた時に、人にしかできないスキルの線引きがより明確になります。それによって、今まで以上に知識とアイデアの合成能力や適応力に優れた人材の存在価値が高まるといえるでしょう。

企業側の視点に立てば、これらの優秀な人材の採用や育成はもちろん大切ですが、彼らの流出防止に向けた対策は必須。デロイト グローバルが行った「ミレニアル世代の意識調査(2019.05)」では、現在勤めている企業を2年以内に離職しようと考えているミレニアル世代は全体の49%に及ぶという結果も出ています。

複数の仕事やキャリアを持つことができるポートフォリオキャリアは、優秀な人材を定着させたいという企業にとって人事的な生存戦略のひとつといえます。従業員側からみても、人生100年時代といわれる社会で生き残るための価値を得られる働き方になるでしょう。これより、その価値やメリットとなるポイントをいくつかご紹介します。

市場価値(希少性)が高まる

ポートフォリオキャリアとして、複数の仕事や肩書きを掛け持ちすることで、多彩な実績や能力を獲得することが可能です。ひとつの企業内だけの経験に留まらないことにより、オリジナリティの高いキャリアを磨くことができ、市場価値(希少性)の向上が期待できます。

社内では得られない知識・スキルをもつ自立した従業員がいることで、社外でも通用するスペックの保有や企業の活性化にも好影響を与えてくれるでしょう。

収入源が1つという不安の解消

離職理由として毎年多い傾向にあるのは「報酬」への不満。そのため、複数の収入源を持つことは不安材料の解消につながります。また、本業のみに注力していた場合、倒産や減給などの問題が起こった際、路頭に迷うことが起こるかもしれません。

ポートフォリオキャリアとしての選択肢があることで、それら収入源がひとつであることで発生するリスクを軽減することができます。企業にとっても、従業員が抱える不安解消の突破口となり、自由で創造的な働き方を容認することで高いパフォーマンスと生産性を生み出すマネジメントが可能になります。

将来が広がる

ひとつの会社や業界に縛られない働き方で、「本当にやりたいこと」「チャレンジしたいこと」「世界に発信したいこと」などの自己実現を叶えることができます。受け身ではなく自ら生み出していく思考が加わるため、日々の満足感や達成感を得ながらポジティブに将来を描けるはずです。

一方で企業にとっては、新たな経営資源を獲得するチャンスでもあります。複数の業界や事業に携わる従業員がいることで、社外の情報や新たな人脈・顧客を獲得するケースもあり、事業拡大やイノベーションなどのきっかけを生み出してくれる可能性もあります。

事例:ポートフォリオキャリアの働き方をしている人たち

「2枚目の名刺を持つ」と表現されることもあるポートフォリオキャリア。本業として培ってきた経験や知識を活かして新たなキャリアを創り上げる人や、本当にやりたいことを模索するために複数の企業でオリジナルの価値や新たなマーケットを開発している人など、徐々に日本でも増えています。そんなポートフォリオワーカーの働き方についてご紹介します。

出産を機に見つめ直した「やりたい仕事」の実現手段

「人の成長や変化に携わりたい」という想いからHR(ヒューマン・リソース)領域の企業で働き始めたAさん。出産を機に産休をとっていたのですが、復帰した時には仕事内容や働く環境などが変化しており、ただただ仕事をこなすので精いっぱいの状態でした。

仕事と子育てに追われる中で、自分のやりたいことだったはずの仕事が目的になってしまったことに気付き、「本当にやりたいこと」「大事にしたいこと」を追求した結果、人の変化に携わる「コーチング」を学び、本業では人事のポジションを担当。その後、ポートフォリオキャリアとして外部向けの「人事・採用コンサルティング」や、“自分らしく働いて生きるきっかけづくり”を提供する「ワークショップ」、コワーキングスペースでの「コミュニティ・マネージャー」と、自分のやりたいことを次々と表現しています。

経営アドバイスの経験を活かして新ビジネスに繋げる方策

銀行マンとして、長きにわたり様々な企業・経営者の相談に乗りながら、経営アドバイスや支援を行っていたBさん。新たなビジネスとして「商業出版」にチャレンジしたいという想いで起業しました。しかし、軌道に乗せるまでには時間がかかる。

その課題解決と売り上げを繋ぐための方策がポートフォリオキャリアでした。得意な法人向けの経営アドバイスやコンサルティング、そして顧問業に着手。今後は、大学のオープンカレッジやセミナーの講師にも事業を拡げながら、専門性を活かした執筆などを行い、それらの著書を商業出版に繋げていきたいと考えているそうです。

ポートフォリオキャリアを実現するために

優秀な若手の離職率の悪化や流出を防ぎ、高い専門性をもつスペシャリストとのコラボで事業の活性化を図るなど、ポートフォリオキャリアは企業にイノベーションをおこす影響力をもっています。まだ日本では浸透していないこの働き方を実現(受容)するためには、企業が従業員に対して生涯学習をシステム化したリカレント教育を徹底するなどして、社外でも通用する人材を増やすことが重要です。その風土・文化が根付いた企業は、従業員のエンゲージメント向上やポートフォリオキャリアとしての働き方をメリットとして捉えられるようになります。

成功させるための取り組み方

企業内でのシステム化や人事制度も大切ですが、さらに視座を高めて考えると、社会インフラとしての支援促進が必要になるでしょう。それは、本業のみで働く正社員とポートフォリオキャリアを実践する人が同等の信用性をもち、保険や年金、ローン(住宅など)においてネガティブポイントがない状態になること。例えば、海外ではポートフォリオワーカーが団体をつくり、一般の企業と同レベルの福利厚生を得られているケースがあります。

柔軟な働き方の実現は、企業の未来に好影響を与えてくれる。

新しい働き方について、日頃から研究されている企業は多いと思います。同じように、企業で働く方たちも世界の情報をスピーディにキャッチできる時代。今まで通用してきた働き方や雇用関係は「もう古い」と認識すべきところまできています。

海外を中心に広がっているポートフォリオキャリアという新しいワークスタイルは、副業のようなサブとしての働き方ではなく、自分の強みを積極的に活かして人生をより豊かにする「生き方」といえます。その生き方を受け入れることで、優秀な人材は辞めることなく、高いパフォーマンスを維持できる。つまり、企業が従業員ファーストの働き方を考えることは、変化の激しい時代を生き抜くための強い味方を得ることに繋がるのだと思います。