リモートワークの弱点を克服するface to faceでコミュニケーションを活性化!

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プロフィール
Chatwork株式会社
代表取締役CEO兼CTO/山本 正喜
2000年、大学在学中に兄・山本敏行と共にEC studio(現Chatwork株式会社)創業。
以来、CTOとして多数のサービス開発に携わり、Chatworkを開発。2011年3月にクラウド型ビジネスチャット「Chatwork」の提供開始。 2018年、Chatwork株式会社の代表取締役CEO兼CTOに就任。

リモートワークを推奨する企業が増えている一方、顔を合わせないことによるコミュニケーション不足が問題にあがっています。そこで、リモートワークの弱点であるコミュニケーション不足を克服しているChatwork株式会社代表の山本様に、創業当初から「face to face」を大切にしており、その機会を設けるようになった理由や、そうした取り組み・工夫によって生まれたコミュニケーションの変化、社内に及ぼす好影響などについてお聞きしました。

リモートワークを成功に導くface to face

Chatwork社は創業当初からリモートワークを実施されていますが、どのような方法でおこなっているのでしょうか。

当社はリモートワークを実施していますが、基本的にオフィスに出社することを推奨しています。理由としては、仕事をするための環境設備が整ったオフィスに来たほうが生産性の向上を見込めるからです。例えるなら、スポーツジムのようなもの。ランニングマシーンやダンベルが備わっていて、トレーニングを伴走してくれるトレーナーがいる。そして、周囲にいる人たちも筋トレをやっているから、心理的にサボりにくい空間です。まさにオフィスはこの状態に近い。ただし、オフィスワークを強制してしまうと、時として勤務が難しくなってしまう社員もいるため、柔軟に選択できるようにしています。

一方で、恒常的な在宅ワークやリモートワークは、自宅での筋トレと同じ。最初は「よしやるぞ!」とスタートして何日かは続けられますが、それをストイックに継続できる人は限られてしまいます。なぜなら、自宅は寛ぐのに最適な環境になっているから。そういう意味では、在宅ワークやリモートワークに向いている人は、自宅での筋トレが継続できる人だと言えます。

そのような恒常的なリモートワークの場合は、どのような方策があるのでしょうか。

恒常的に数ヶ月以上が在宅メインで、たまにオフィスに来る働き方を望む社員がいた場合は、段階を経てジャッジするようにしています。まずは1ヶ月から3ヶ月トライしてみて、それでもパフォーマンスが落ちないような働き方ができれば在宅ワークを許可する。また、条件として家に仕事部屋をつくることや、ネット環境を整えてもらうようにお願いしています。

広島や山口、鹿児島にも当社の在宅スタッフがいます。そのような拠点のないエリアの方を採用する場合は、在宅を前提とした働き方になりますが、最初の1ヶ月から3ヶ月はこちらが出張費や宿泊費を出してオフィスに出社してもらう。そして、face to faceのコミュニケーションを行った後に、リモートワークへと切り替えるようにしています。

リモートワークを始める前にface to faceのコミュニケーションを行う理由は何ですか。

アナログなface to faceのコミュニケーションを最初に行う理由は、コミュニケーションコストを上げないためです。リモートワークに必須となるチャットやビデオ会議などのコミュニケーションは、相手のパーソナリティを想像できないという欠点があり、どうしてもコミュニケーションコストが上がってしまう。そのため、まずは顔合わせをしっかり行った上で、お互いのパーソナリティを理解してリモートワークを開始する。この流れが最も効率的というのが私たちの学びです。

商談などでも同じことが言えます。お会いしたことのない方とチャットで商談することも時にはありますが、一度face to faceのコミュニケーションが図れていると相手のパーソナリティを理解できるため、より良い関係構築ができる。このように、まずは対面でのコンタクトをとり、次回以降はチャットやビデオ会議などのコミュニケーションで効率化を図るという順番で進めることが大切です。

リモートワークに必要な環境づくりとは

リモートワークが違和感なく社内に浸透している状況をつくる上でのポイントを教えてください。

私たちが支障なくリモートワークを実施できているのは、リモートワークが日常茶飯事という環境づくりにあります。例えば、会議をする際にリモートの方が毎回参加している状態にするのです。日常的にその状態が当たり前になれば、特別視することも無くなります。これが、たまに参加する程度になってしまうと、接続方法を忘れてしまったり、会議を始めるまでに時間が掛かってしまったり、無駄なコストが増えてしまいます。

また、久しぶりで慣れていないと、会議自体もリモートの方をそっちのけで進行して、後ほど議事録を共有するというやり方が常態化してしまうケースもある。その場合、リモート側が得られる情報量が減るだけではなく、会議の中で意思決定に参加できなくなってしまうため、なるべくハードルを下げることが大事です。

リモートワークが当たり前という状況を意図的につくることが大切なのですね。ハード面でも工夫されていることはありますか。

全ての会議室にビデオカメラとモニターがあり、コードひとつで全てが繋がるハード環境になっています。現状おこなっている会議だと、6~7割くらいの方がリモートで参加していますが素早く繋がることができるのでストレスもありません。

それが日常的におこなわれているので、リモートワークの方が参加することに抵抗がなくなり、その場にいないことでみんなに迷惑が掛かってしまうのではないかという申し訳ない気持ちや、オフィスに来ないと仕事にならないという考え方は誰ひとりとしてもっていません。

社内の全員が、リモートでの参加をイレギュラーとして捉えていない状態であれば、確かに後ろめたさはなくなりますね。

他にも、自席会議を頻繁におこなっています。今では多くのパソコンにカメラ機能がついていますし、イヤホンマイクも全員に支給しているので、オフィス内にいる社員も会議室には行かず、自席でビデオ会議をよくしています。内線のような感覚で、急に隣のデスクにいる社員がビデオ会議を始めるというシーンも私たちの中では日常的なこと。

これによって、会議室が空いていなくても、ビデオ会議をするという選択肢が生まれます。物理的に会えない時にリモートでコミュニケーションを図るという習慣の第一歩として、他の企業でも十分にできることだと思います。そのためには、カメラ付きのノートパソコンやイヤホンマイクを全員に支給して、ビデオ会議をおこなう社内ツールが統一されているなど、ハードウェアやワークフローをシームレスにしておくと理想的です。

リモートワークをする際の勤怠管理に不安を抱く企業も多いと思うのですが、そこでのコツはあるのでしょうか。

隅々まで監視しようとすると難しいので、私たちの場合は性善説で勤怠を入力してもらっています。これを性悪説で行った場合、すべてのパソコンに監視ツールを入れて常にチェックをすればできるのかもしれませんが、管理コストが相当かかってしまう。当社は従業員が100名の上場企業ですが、リモートワークをしている社員の働き方や状況については、マネージャーが把握しているので問題なく管理できています。

もし、アウトプットの頻度やパフォーマンスが悪ければリモートワークを終了すればいい。実際に、在宅でのリモートワークが禁止になった社員もいます。オフィスではなく在宅ワークをすることで、生産性が上がるという前提がある中で、生産性が落ちてしまっては意味がありません。そこはしっかりと線引きすることが重要だと考えています。

アナログの時間を最大化する

性善説で管理できるのも、アナログのface to faceによるコミュニケーションが大きく影響していそうですね。

face to faceのコミュニケーションは創業期から大切にしていて、当時は東京に3名と大阪に5名の計8名という人員構成でしたが、リモートだと価値観の共有などがとても難しかったのです。そのため、3ヶ月に1回のペースでよく合宿をしていました。今でも出張や合宿は推奨していて、1泊2日でワンチームごとに実施しています。チャットを運営する会社ということもあって、よく「コミュニケーションはチャットになっていくのでしょうか?」と質問されますが、大事なのは“使い分け”だと思っています。

チャットはとても便利ですが、相手の表情やボディランゲージ、言葉の抑揚が伝わりにくいのです。特に、エモーショナルな情報伝達は難しいので、対面とリモートを使い分けるようにしています。例えば、キャリアの相談やプロジェクトのキックオフ、打ち上げなどはface to faceのコミュニケーションをしましょうと伝えています。それ以外の、報連相のような情報共有はチャットを使うなど、アナログの時間を最大化するためにデジタルを徹底活用する、という考え方です。

アナログの時間を最大化することで、社内にはどのような変化が生まれているのでしょうか。

雑談する時間を意図的に増やしています。例えば、朝礼では仕事以外の話を持ち回りで発信するというのをずっと続けています。内容は、先週末に行った場所の話だとか、趣味の話、子どもの話など。私たちはそれをアップデートする自己紹介と名付けています。最近ハマっているゲームの話をすると、同じようにそのゲームをやっている人が話しかけるきっかけをつくれる。つまり雑談のきっかけづくりになるわけです。

なぜ雑談が必要かということ、これもコミュニケーションコストが下がるからです。例を挙げると、家族とするメッセージの送受信は短くなるという法則があります。今から帰るとか、了解とか、今日ご飯いらないとか。これを知らない人に送ると、何だか怒っているのかなとか冷たい人だなという印象になってしまう。要は、相手のパーソナリティが分かっているとコミュニケーションが短くて済む。さらに、相手の気分を害させることも減り、ネガティブな人間関係が形成されることも防げるので、社内にポジティブな空気感を醸成できることにも繋がるという好影響をもたらしてくれるのです。

デジタル化が進む時代だからこそ、アナログのコミュニケーションを意図的に作り出すことが重要なのですね。

リモートワークで難しいのは、生産性が落ちる可能性があることと、アナログなコミュニケーションが減ってしまうことだと言えます。だからこそ、その課題を払拭する仕組みづくりを会社としておこなう必要があります。デジタル化が進む中で何もしなければ、確実にface to faceのようなコミュニケーションをしなくなっていくので、いかに意図的に作り出せるかが重要。

オフィス環境では、コミュニケーションスポットをつくることもおすすめです。当社の場合は、オフィスの真ん中にバーカウンターをつくって、他部署の社員たちが顔を合わせるスポットを意図的に設けています。月に1回、スタッフがバーテンダーになってお酒をつくってくれるので、帰り際にちょっと立ち寄って様々な社員がそこでのコミュニケーションを楽しんでいます。また、デスクもレイアウトを柔軟に変えられるようにローラーを付けました。組織の型に人をはめるのではなくて、今いる人で組織を設計するほうが、さまざまな働き方ができる今の時代に合っているように思います。

リモートワークをはじめ、柔軟な働き方を選択できることで、社員だけではなく企業にとってもメリットに感じることはありますか。

リモートワークなど柔軟な働き方ができる環境があることで、間違いなく企業の採用力は高まります。特に中途採用においては、結婚や出産、親の介護などを機にリモートワークや在宅ワークなど、柔軟な働き方ができる企業を希望する求職者が増えています。

外国人採用においても、最初はカルチャーの共有が必要なのでオフィス勤務が必要だと思いますが、エンジニアやクリエイターなど、アウトプットがリモートでも出しやすい職種においては、今後ますますニーズは増えていくはずです。特にエンジニアは優秀な人ほど、柔軟に働けるリモートワークを求める傾向があるので、競合に負けない採用力の強化にも繋がるはずです。

デジタル化が進み、リモートワークが広がる時代だからこそ、face to faceのようなアナログのコミュニケーションが組織の魅力や一体感を育むことが分かりました。本日はありがとうございました。

リモートワークを成功に導くのは、デジタルよりもアナログ。

デジタル化が進み、働き方としてリモートワークを選択する求職者も増えてきました。一方で、便利さや効率化が重視され、パーソナリティを無視したコミュニケーションが増えているのも事実です。企業としてのパフォーマンスを高めるためには、心の通った社員の存在は必要不可欠。それは、オフィスで働く社員も在宅でリモートワークする社員も同じです。リモートワークによってコミュニケーション不足を感じている企業は、ぜひface to faceのコミュニケーションを定期的に行い、アナログの大切さをお互いが再認識する機会をつくってみてはいかがでしょうか。