賃金制度の種類とメリット・デメリットについて

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プロフィール
株式会社アウトソーシングテクノロジー
採用キャリアアドバイザー 若林聖子
求人広告代理店で営業職、エンジニア派遣会社で人事労務事務を経て現職。どんな任務にアサインされても常に1カ月目で成果を報告できるよう、垂直立ち上げを自らのテーマとしている。メンバーと共に業界トップクラスの採用に向けての組織構築を実行中。

こんにちは、若林です。みなさんの会社で使用されている賃金制度は、どのタイプになるでしょうか。職種や職位に応じて活用される賃金制度の違いもあるかもしれません。昔の日本と現代の日本で主流となっている賃金制度にも違いはありますし、現代の日本と海外を比べても主流となる賃金制度には違いがあります。その時代や国民性に合せて変化していく賃金制度ですが、皆さんの会社に一番適した賃金制度はどのタイプになるでしょうか。今回は、過去に日本で主流として使われてきた賃金制度を振り返りながら、それぞれの制度のメリット・デメリットを振り返ってみたいと思います。

賃金制度は大きく分けて2種類

賃金制度の種類は、仕事を基準に考えて作られるものと、人を基準に考えて作られるものの大きく分けて2種類があります。日本の人事制度は、人を基準にして作られており、「その人の能力があがると給与も上がる」という考え方。より国際的な人事管理を行う会社、諸外国では、「この仕事をしている人は、この給与額」という風に、仕事内容に対して金額が決まり、過去のキャリアや能力はそのポストにつくために必要とされます。

日本の人事制度のように人間基準で考えられる「属人給」といわれる賃金制度の代表としては、勤続年数・年齢・学歴など個人の属性に合わせて支払われる「年功給」や、個人の職務遂行能力を見越して支払われる「職能給」などがあります。諸外国で多く用いられる「仕事給」とされる賃金制度の代表としては「職務給」というものがあり、その人がどの業務範囲で契約を結んでいるかによって支払われる賃金制度が主流といえます。

日本のように属人給を用いているのは、国際的にみると少数派です。仕事給と属人給それぞれの特徴を見ながら、その効果について考えていきたいと思います。

高度経済成長期に主流だった「年功給」制度

年功序列という言葉は、現在ではほとんど使わなくなりましたが、高度経済成長期では年功序列・年功給制度が多く用いられてきました。これは、勤続年数、学歴、性別などにより給与が決まっていく制度になります。終身雇用の時代、能力が低い人にとっても他の人と同じレベルの昇給が期待でき、そういった人にとっては最高の制度だったと思います。

年功給のメリット

社員の会社への帰属意識を高め、長期間会社へ従事させることに効果的なこの制度は、長く従事することを前提に働くため技術やノウハウの伝承をその企業で行っていく意識が社員同士で高まり、チームワークも発揮しやすいといった効果が得られます。

年功給のデメリット

しかしその一方で、社員高齢化によって人件費が高まり、販管費が高騰してしまうことや、現状維持をしていても給与が上がることが保障されているため挑戦する文化が起きにくくなる、などのデメリットもありました。また、能力の高い人財より低い人財のほうが高給与になるという事象も発生するため、不平不満が溜まりやすくなっていました。

高度経済成長期では年功給を維持できていましたが、昇給昇格の前提となっていたピラミッド型の人口構成が崩れ社員の高齢化が進み、低成長にシフトした背景から、次第に維持することが出来なくなりました。

現代も多く用いられている「職能給」制度

人は成長するということを前提に作られたのが、「職能給」です。学歴や勤続年数よりも、働く人のレベルをいくつかの等級に設定し、その等級に応じた賃金を支給するという考え方です。

職能給のメリット

人事側のメリットとしては、仕事に紐づいているわけではないので、ジョブローテーションさせても問題なく、人事異動を柔軟に行えることがひとつ、その他にも人財レベルの底上げを行う文化を醸成できる、人財教育により成長を支援するため、離職抑制の効果もあり安定的な労使協力関係を作りやすくなる、賃金への納得感も高まるなどが挙げられます。

年功序列の時に不十分であった“人の成長”という軸で制度が作られているため、離職も抑制でき、ジョブローテーションすることで社員の能力開拓にも挑戦でき、且つ能力UPに対する社員の意欲も醸成できるというのが最も大きな特徴になります。

職能給のデメリット

ですが、良いところばかりに見える職能給も、運用が広がるにつれて課題が多く見受けられるようになりました。等級を設定するものの、正しく評価されない現実もあり、運用が年功的になることがしばしば見受けられたことが問題のひとつ、併せて“役職者のポストが空いていなくても能力さえ高められれば役職に就かずとも給与額が保障される”という意図も含まれていたため、多くの社員が高い等級に昇格し、結局人件費の高騰を招いてしまいました。

職能制度自体は非常に良く出来た制度であり、運用がうまくいけば現在でも十分通用する制度でしたが、運用面が非常に難しく、多くの企業は負担に耐えられなくなり、次第に別の賃金制度を導入することになりました。

成果を出した人にその分の評価を行う成果主義賃金制度

成果主義賃金制度とは?

今までのような能力や年功を基準とした賃金制度の運用が時代の変化と共に上手く進まなくなり、仕事の成果に応じて賃金やボーナスなどに大きく格差をつけるという賃金制度が多く用いられることになりました。

成果主義賃金制度の導入がすすんだ背景

不況が進む中、労働基準法の改正もあったため短時間労働を強く推進される状況となり、現場では同じ業務量を任せていても「能力の高い者の労働時間が短く」「能力の低い者の労働時間が長くなり残業代を多く支払う」という矛盾が大きく浮き彫りになるようになりました。よって、多くの企業が成果主義賃金制度を導入し、残業代の圧縮と人件費の伸びを抑制しようと試みました。

ですが、残念ながらこの成果主義賃金制度は理想と実態に大きくかい離が生まれてしまう制度となりました。例えば、企業側としては達成した際の報酬を抑えようとして目標を高く設定するため、目標未達が続きやる気を失う社員が増えてしまうことや、目標設定を社員と相談する際もマイナス評価になることを避けようとして高い目標を設定しない社員が増えてしまうなどの結果となってしまいました。

それだけではなく、全員が自分の成果だけを重視するようになり、チームワークが弱まり、同僚をサポートする姿勢が弱まってしまうということも起き始めました。日本の国民性にとっても、あまりマッチしづらい賃金制度となりました。

成果主義制度の一種である職務給と役割給制度

では、海外で主流となっている制度も見てみたいと思います。成果主義制度の一種ともいえる「職務給」が、主に一般的に用いられている制度となります。

職務給とは?

事前にどの業務に対しての対価であるのかが契約で決まっており、賃金額が決まります。働く人にとっては非常に公平な運用が行われ、企業としても長期的な人件費の高騰も防げて人件費の予算を見込むことが容易となります。ただし、自己成長や能力開発は、原則として社員自身で行うことが求められます。

業務内容が変わらない限り、昇給額も小さく昇給スピードが遅いのが特徴であり、且つ解雇は容易だが異動により業務内容を変えることは賃金変更なども発生するため簡単には行えません。契約内容にない業務は、社員が引き受けずに断ることもしばしばあります。離職も多くなりがちで、自分の業務時だけ効率的に業務が出来ればいいため、社内にノウハウを蓄積して後進を育成するという考え方を浸透させるのが難しいという問題もあります。

もう一方で、成果主義の一種に挙げられるのが管理職などに適用されている「役割給」制度です。

役割給とは?

一定の裁量を認め成果で評価する制度になります。任された役割を達成するための費やす時間や業務の進め方などは本人の判断に任されます。業績評価は1年ごとに行われることが多く、「年俸制」として運用されるケースが多いようです。

役割給のメリット

成果に応じて報酬が決まっていくので、人件費の高騰を抑制することもできながら、業績に対して高いチャレンジ精神を醸成することも出来るというメリットがあります。

ですが、現実としては成果が芳しくなくとも大きな年俸ダウンが難しい、役割給対象者の事前の綿密な目標設定が大変、ブルーカラーや育成段階の人財には適用しづらいなどのデメリットも目立つようになりました。

今後の日本で活用される可能性が高い「役割行動給制度」

日本と海外の文化の違いや、時代に応じて変化してきた賃金制度ですが、今後の日本で活用しやすい賃金制度が「役割行動給制度」だと考えられています。

役割行動給制度とは?

職能給のように等級を設定するのですが、職能給は「能力」を元に等級設定をしたことに対し、役割行動給は「優れた業績を出し続ける人の思考・行動特性(コンピテンシー)」を元に、行動を軸とした等級設定を行うというものです。

経営理念に基づいたすぐれた社員像と現場からの実績評価を用いて事前に作り、それをどこまで実践出来たかで賃金額の増減を行います。属人給と仕事給の良いとこどりのような制度といえるかと思います。

等級それぞれの設定が、行動出来れば成果に繋がるものになっているため、職能給に比べて成果主義の要素が含まれています。成果主義での教訓も反映出来ているだけでなく、管理職クラスの等級設定まで行えるため、広い役割の社員に対しての評価体系に組み込むことが可能となります。ただし、この運用でも等級の設定は非常に難易度が高く「会社の発展に必要不可欠な行動」とはどんなものかを言語化するのは簡単ではないでしょう

以上が、主な賃金制度のご紹介でした。みなさんの会社ではどの賃金制度が用いられているでしょうか。賃金制度ひとつをとっても、社員教育や離職率など様々な人事制度に影響を及ぼします。15年に1度の頻度で大きく主流が変わるといわれている賃金制度ですが、企業の体質や文化・企業が迎えている時期などによっても、見直していく必要があるように思います。是非、それぞれの賃金制度についてのメリット・デメリットを参考にして頂ければと思います。