新しい評価方法「ノーレイティング」のメリット・デメリットとは

目次

環境の変化が激しく、グローバル化が進む日本。長く続いてきた評価制度では、正当な評価ができない時代になってきました。すでにアメリカなどでは、社員個人の業績評価制度を廃止する企業が増え、日本でも新たな評価方法である「ノーレイティング」を導入した企業が増えています。これまでの評価とは異なるノーレイティングについて、どのような評価方法なのか、ノーレイティングによるメリット・デメリット、企業事例などを解説していきます。

ノーレイティングとは

ノーレイティングは採点を付けない新しい評価方法

各企業で働く多くの社員は、半年ないし1年という期間で設定目標の達成度を「A評価・B評価・C評価」といった具合に採点され、ランク分けした評価制度の中で判断されています。このような社員個人の業績評価制度を見直し、レイティング(評価)しない新しい評価方法として注目を浴びているのが「ノーレイティング」。とはいえ、まったく評価をしないわけではありません。ここでお話しているのは“ランクや数値による評価を行わない”ということ。上司との面談や社員同士のコミュニケーションによるリアルタイムでの評価を行うのが、新しい評価方法の「ノーレイティング」です。

ノーレイティングが日本で広まっている背景

近年、日本の事業環境の変化は加速を続けています。そのため、今までの社員個人の業績評価制度は機能しなくなっているのが現状です。さらに、人的リソースの確保が難しくなり、社員の長期的な育成が求められるようになってきました。持続的な社員の育成が企業の成長につながるとの考えから、密なコミュニケーションを重視する企業が増えているのです。このような変化から、成果主義のレイティング(評価)ではなく、ノーレイティングに移行する企業が外資系企業を中心に広まっています。

レイティングの問題点とは

問題①:評価による従業員のモチベーション低下

これまでの社員個人の業績評価制度では3段階(A・B・C)または5段階(S・A・B・C・D)の評価ブロックに沿って、予め定められた分配人数に合わせてランク付けを行っています。内訳は上位20%がA、70%がB、下位10%がCといった具合です。このような評価をしたときに中間層の社員が多くなり、さらに評価の不透明性からモチベーションの向上や維持が難しくなる傾向にあります。社員個人が思い描くキャリアプラン。その実現の夢が霞んでしまうことで、仕事への意欲低下を招いてしまっているのです。

問題②:心理的不安による生産性低下

「失敗できない」「間違えられない」「ミスは許されない」といった不安を助長し、社員の仕事に対する姿勢を低下させていると指摘されているのが、従来のランク付けによる評価です。市場環境の変化が激しく、PDCAサイクルを回してパフォーマンスを高めていく現代において、レイティングによる評価制度の構造は機能しなくなっています。また、上司のさじ加減が評価に反映されてしまうレイティングによって、社員にやらされ感を植え付けてしまい、さらなる意欲低下に陥らせてしまう可能性もあります。

問題③:リアルタイムに変化する環境への低い対応力

廃止する企業が増えてきたレイティングによる評価制度。その要因は、評価面談や目標設定などが年に数回しか実施されず、企業を取り巻く外部環境の急速な変化に対応しきれないため。これから各企業がさらに競争力を高めていくためには、市場環境の変化を鑑み、しっかりと対応できるリアルタイムな評価方法が求められているのです。ですから、「ノーレイティング」を導入する企業が増えています。

ノーレイティングのメリット

メリット①:双方が納得できる目標設定・評価が可能

これまでの評価制度は、期末や年度末のタイミングで面談を行っていましたが、ノーレイティングは1on1ミーティングを行うことが前提にあります。短スパンで上司と部下が面談を行うため、「部下が今どの状況に置かれているのか」「どんな壁にぶつかり、何に悩んでいるのか」「どういうプロセスを経て成長しているのか」といったことを常に知ることができます。このようにノーレイティングは、リアルタイムの成果が評価につながるため、上司の記憶や感情に左右されることなく、フィードバックが可能。新たな目標も半年後、1年後といった遠いものではなく、成長に合わせたリアルタイムな目標を設定することで双方に納得感が生まれます。

メリット②:上司・部下のコミュニケーションの活性化

これまでの評価制度では、お互いに向き合って面談するのは半年後や1年後のフィードバックの機会のみでした。ノーレイティングは1on1ミーティングが前提ですから、上司と部下の密なコミュニケーションが生まれるのもメリットの1つ。コミュニケーションの回数に比例して、意思の疎通がしっかりと取れるようになり、認識のズレなども解消されていきます。また、コミュニケーションを密に取ることによって、チーム力も向上。上司・部下のコミュニケーションの活性化が、高いパフォーマンスにつながっています。

メリット③:優秀な人材の採用と離職率の低下

社員はノーレイティングにより、リアルタイムな評価を受けることができ、個々が自ら成長を実感できる。そんな、モチベーションを向上させる環境があることで、離職率を低下させ、働き方が重視される現代において優秀な人材の確保につながります。リアルタイムな評価を受けることで、上司から部下へのフィードバックの時間・質も増え、成長意欲を高めるため、飛躍的に成長する社員が増えていきます。社員が成長できる企業には優秀な人材が集まり始めるので、競争力の高い組織が形成することができるのです。

ノーレイティングのデメリット

デメリット①:管理職の負担の増加

リアルタイムなパフォーマンスを評価するノーレイティングは、部下との1on1ミーティングによるコミュニケーションが何よりも重要です。管理職が率いている部署やチームの社員全員と定期的に面談を行い、フィードバックするため、これまでの評価制度と比べて時間の確保や物理的な負担は大幅に増加してしまうのがネックになります。

デメリット②:上司のマネジメント力に依存する

ノーレイティングは、上司と部下の信頼関係があるからこそ成立している評価方法です。そのため、管理職には今まで以上のマネジメント力が求められるようになります。信頼関係がきちんと築けていないと「正当な評価をされない」といった不満も噴出してしまう恐れもあります。そこで、マネジメントに対する意識改革を行うことが重要です。セミナーや各種研修を受講して管理職のマネジメント力の向上も検討する必要があります。

デメリット③:コミュニケーション過剰による混乱

1on1ミーティングを行うたびに、フィードバックを行います。定期的に振り返り、アドバイスを行いますが、社員に「評価がコロコロ変わる」と間違った認識を持たれ、本来の目標などを見失ってしまうケースがあります。そうした混乱をさけるためにコミュニケーションを密に取ることは大切ですが、過度なコミュニケーションはさらなる混乱を招く可能性もあります。適度な回数を決めて面談やフィードバックを行わなければ、効果的とは言えません。

ノーレイティングの取り入れ方

1on1ミーティングの導入

上司と部下が1対1で定期的にミーティングを行うのが「1on1ミーティング」です。とはいえ、これまでの評価面談のような堅苦しさはなく、双方がリラックスした状態で月に数回程度のペースで行います。上司は部下の情報を引き出すために、日々の業務進捗(目標の達成度合い、置かれている状況)を把握し、ヒアリング。そして、適切なフィードバックを通して評価します。ノーレイティングは、レイティングによる評価とは運用の仕方が異なるので、正しい知識を持って1on1ミーティングを行っていきましょう。

360度評価の導入・活用

これまでのレイティングによる評価制度に慣れてしまっている管理職の意識を変えることは容易ではありません。そこで、オススメなのが「360度評価」です。立場の異なる複数の社員から評価される360度評価は、管理職も含めて全社員を多面的に評価できると定評。理想のノーレイティングの実現に向けて、管理職が必要とするマネジメント力の把握、習得に役立ちます。

給与・昇進・昇級の権限委譲

ノーレイティングは、上司と部下が納得して目標設定、フィードバック、評価ができます。双方にメリットの多い優れた評価方法ですが、上司に給与や昇進・昇級を決められる権限がないと、ただ単に評価しただけで終わってしまいます。それでは部下からの信頼は崩れてしまう。そこで企業側は、上司に権限委譲する思い切った判断が求められます。ノーレイティングをより効果的なものにするためにも、上司に権限を与える必要があります。

ノーレイティングを導入している企業事例

株式会社メルカリ

2018年1月に人事評価制度を刷新した株式会社メルカリ(以下、メルカリ)。会社のバリューの1つに「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」という行動指針があり、個人のパフォーマンスを最大限に評価する新しい評価制度として「ノーレイティング」を盛り込みました。

メルカリの経営陣は「役職で仕事をしない」とよく口にするとのこと。メルカリではマネージャーは「職位」ではなく、あくまでも「役割」。そう考えているからこそ、マネジメント力に長けている社員はマネージャーの道を選び、プレイヤーとしてのキャリアを高めたい社員はその役割のまま自らの評価を上げていくことが可能です。

A評価、B評価、C 評価といったような評価制度を廃止したことで、個人のパフォーマンスが評価される仕組みが生まれました。メルカリでは、納得感を持って働ける評価が、社員のモチベーションを高めています。

日本マイクロソフト株式会社

ノーレイティングの評価制度を採用した代表企業として有名な日本マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト)。一人ひとりの社員に対して2週間に1度のペースで、上司と部下の1on1を実施しています。行なっている理由は、社員に働きがいを感じながら仕事を進めてもらいたいからです。

社員には、どのように評価しているかの仕組みを公開。クライアントと自社への貢献度によって評価と給与が決まるので、とてもシンプルな評価制度になっています。そのため、社員一人ひとりがモチベーションを維持しやすい環境があるのです。

その他にも、年に1回、社員の意識調査を実施。その調査結果をもとに、より働きやすい環境づくりを追求し続けています。だからこそ、優秀な社員が育っていくのです。

コミュニケーションの量と質が企業力を左右する

優秀な人材の採用が益々難しくなっている今、社員のモチベーションを高めていくために新しい評価の在り方である「ノーレイティング」を導入する企業は増えています。上司と部下の日々のコミュニケーションによって、部下の成長スピードは上がり、業績への好影響を期待できるのも魅力です。採点しない新しい評価方法の「ノーレイティング」を導入してみてはいかがでしょうか。