休職社員の「職場復帰まで」と「職場復帰後」の注意すべきポイント

目次

近年、メンタルヘルスなどの不調により休職を余儀なくされる社員が、以前に比べて増えてきています。その際、休職する社員とのコミュニケーションの取り方や復帰のタイミング、復帰後の仕事内容など、あまり経験のない出来事に四苦八苦する人事担当者も多いのではないでしょうか。そこで、本稿では休職者との向き合い方について詳しく解説していきます。

「休職」とは“労働者の都合で休むこと”

始めに「休職」と「休業」の違いについて説明します。休職とは、「自分(労働者)の都合によって長期的に会社を休むこと」を言います。似たような言葉で使われる休業は、「会社の都合によって仕事が休みになること」を言います。前者の「休職」は、労働者の都合のため給与は出ません。その反対に後者の「休業」は、会社の都合のため天災などのやむを得ない事情を除いて原則給与は全額支給されます。

「休職」の内容とは

休職内容は、法律による決まりはなく、就業規則に定められていることがほとんど。そして、定められた休職期間内に「復職」できないと「解雇」や「当然退職」になります。休職は会社からの命令による場合もあれば、社員と会社との話し合いによって決める場合もあります。

一般的な休職には「傷病休職」「自己都合休職」「留学休職」「事故欠勤休職」などがあり、メンタルヘルスやうつ病などの精神疾患やケガなど、会社の業務とは関係のない傷病で休むときは「傷病休職」になります。セクハラやパワハラなどのハラスメント行為によるうつ病なども傷病休職に該当します。自社がどのような休職内容になっているのか、就業規則を確認して、しっかりと把握しておくことが大切です。

休職社員の職場復帰まで

<出展:心の問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

厚生労働省によれば、日々の仕事を通じて強い不安やストレスを感じる労働者は約6割にも上っているとの調査結果が出ています。メンタルヘルスを理由に過去1年間で連続1ヶ月以上も休職した労働者の割合は0.4%。この割合は事業所が大きくなればなるほど高くなり、従業員数300名未満の中小企業でも0.5%という結果になっています。心の健康問題が拡大し、休職社員が増えている今、どのようなサポートをしたらもう一度職場に戻ってこられるのか。職場復帰までに必要なことを解説していきます。

職場復帰までの5ステップを紹介

ステップ1:休職開始&休職中のケア

社員の休職が開始される前に、社員から管理監督者に主治医の診断書が提出されます。そして、管理監督者は人事労務管理スタッフなどに診断書が提出されたことを伝え、休職が始まります。会社は休職社員が安心して療養に専念できるように、下記のことを行なっていく必要があります。

  • 必要な事務手続きや職場復帰支援の手順説明
  • 傷病手当金などの経済的な保障の情報提供
  • 不安・悩みの相談先の紹介の情報提供
  • 公的または民間の職場復帰支援サービスの情報提供
  • 休職の最長(保障)期間の情報提供

ステップ2:主治医からの職場復帰可能の診断

休職社員から会社に職場復帰の意思が伝えられた場合、主治医の診断が記載された診断書の提出を会社側は休職社員に求める必要があります。そして、診断書に就業上の配慮など、主治医の意見を記入してもらいましょう。なぜなら、主治医の診断には、日常生活による病状の回復程度によって職場復帰の可能性を示唆していることが多く、必ずしも会社が求める業務遂行能力まで回復しているとは限らないためです。

ですから、あらかじめ主治医に会社で求められる業務遂行能力に関する情報を提供し、休職社員が回復レベルに達していることを主治医の意見としてもらうことが、職場復帰可能の判断基準になります。

ステップ3:職場復帰の可否判断&職場復帰支援プラン作成

休職社員が再休職となってしまわないように、安全でスムーズな職場復帰支援をする必要があります。そのためには「情報の収集と評価」を行った上で職場復帰の可否を判断します。職場復帰が可能と判断された場合には、職場復帰をするための具体的な支援プランを作成していきます。その際、注意しなければいけないのは、業務内容や業務量、就業制限などの配慮。休職社員が無理なく、ストレスを感じることなく、職場で働ける環境や状況を作ってあげることが大切になります。

ステップ4:会社による最終的な職場復帰の決定

休職社員の状態を最終確認し、産業医に「職場復帰に関する意見書」を作成してもらいます。その上で、休職社員を職場に復帰させるかどうかの決定を会社側が行います。その際、就業上の配慮内容なども併せて休職社員に通知し、主治医にも配慮の内容が伝わるようにすることが大切です。そうした手順を踏んで、正式に職場復帰となります。

ステップ5:職場復帰後のフォローアップ

「休職していた社員が職場復帰を果たせた」という事実はとても重要なことですが、復帰した後のフォローアップが、再休職といった事態を招かないためにも大切になります。そのために下記フォローアップを実施する必要があります。

  • 疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
  • 勤務状況及び業務遂行能力の評価
  • 職場復帰支援プランの実施状況の確認
  • 治療状況の確認
  • 職場復帰支援プランの評価と見直し
  • 職場環境等の改善等
  • 管理監督者、同僚等の配慮

以上のフォローアップを実施して、適宜、職場復帰支援プランの見直しや評価を行うことで長く働けるようになっていきます。

>>職場復帰までの5つのステップの詳細はこちら

休職社員の職場復帰のタイミング

5つのステップをしっかりと理解していても、休職社員の職場復帰のタイミングはとても判断が難しいもの。「休職社員は体調が回復したと言っているが、職場に戻すタイミングはいつがいいのかわからない」といった声が実際に増えています。また、元の職場に戻すのがいいのか、新たな職場に配属するのがいいのか、という判断も難しいところ。元の職場はメンタルなどの不調の原因を引き起こした部署だったり、新たな職場では今までやったことのない仕事を任せられるためストレスを感じる可能性があります。

そこで大切にしてほしいのが「主治医との面談」と「家族の意見」です。なぜ主治医との面談が大切かというと、診断書は休職社員の意思・意見に基づいて作成しているケースが多いため。休職社員の気持ちを大切にすることも主治医には重要なことですが、可能であれば休職社員の同意を得て、主治医との面談に同席しましょう。その際、「再発する危険性」「業務を十分に行えるか」「業務の中での注意点」など、入念に確認してください。

また、休職中の姿を見守ってきた家族からの意見も大切。休職社員がただ単に退職させられることが怖いからと、復帰を望んでしまうケースもあるので、状況をしっかりと把握して職場復帰のタイミングを探るほうがいいでしょう。

休職社員の職場復帰が決まったら

主治医から復帰しても問題ないとの診断が出され、会社としても職場に戻ってきて大丈夫だと判断。休職していた社員が再び仕事に励めるのは、とても喜ばしいことです。少しずつ慣らしながら職場復帰できたとしても、再発の可能性があることを忘れてはいけません。職場復帰した後、休職していた社員に対してどのような対応を取っていくべきなのかを解説していきます。

慣れるまでお試し出勤

長期的な休職に入っていた社員が、急にもとどおりの職場生活を送ってしまったら、反動でまた調子を崩してしまうかもしれません。そうならないために、通勤訓練や短時間出勤を繰り返し行い、試してみるといいでしょう。お試し期間中は、その様子をしっかりと記録し、いつでも主治医や家族に報告できるような準備をしておくことをオススメします。

復帰後の就業上の配慮

原則として、復帰先は慣れ親しんだ元の職場です。しかし、その職場が原因でメンタルヘルスなどに不調をきたした場合には、復帰先を配慮する必要があります。また、復帰後は労働負荷を軽減し、少しずつ戻していくことが何よりも重要です。そのため「残業禁止」や「出張制限」「軽作業・定型業務への従事」といった配慮をしていきましょう。

また、特にストレスを感じる可能性が高い「危険作業」「高所作業」「窓口業務」「苦情処理業務」などは制限して、負担がかからないように徹底した注意が必要です。

通勤できることも重要なポイント

お試し出勤の時は通勤時間を外して出勤してもらったとしても、いつかは元の時間どおりに出勤してもらう必要が出てきます。その際、満員電車に揺られることになるため、その大きなストレスに耐えられるかどうかも確認する必要があります。難しいようであれば、「フレックスタイム制度」の導入も検討し、通勤ラッシュの時間帯を外して通勤できるような配慮を考えることも必要です。

気まずい思いをさせないために

復職することになった社員は少なからず、気まずい思いを抱いているもの。そこで迎え入れる会社側は、歓迎ムードを演出することが大切です。海外では自分の家にお客様を招き入れる時、大げさと言ってもいいほどの満面の笑みで迎えてくれます。それと同じくらい、心を込めた歓迎を行いましょう。病み上がりなので、いきなり全員の前で迎えるのではなく、まずは復職する社員が心を許している上司や同僚とのあいさつから。その後、みんなへのあいさつと段階を踏んでいきましょう。

休職トラブルに「備え」を

「休職」と判断する。「復職」をまだ認めない判断をする。復職が難しいため「解雇」や「当然退職」という判断をする。会社側は様々なケースを想定して決定しなければいけません。そうした中、誤った判断をしてしまったことで、労使トラブルに発展することもあります。場合によって休職社員は職を失うため、トラブルはさらに激化することもあるのです。

そのため、「休職」や「復職」の判断をするときは、トラブルが起きる可能性が隠れていることも想定しなければいけません。訴訟などへの備えも忘れないようにしましょう。