テレワークの進化系「ワーケーション」!休暇中に働くメリット・デメリットとは

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情報通信技術の発達により、場所や時間にとらわれない働き方「テレワーク」が一般的になりつつあります。すでに欧米のIT企業では、さらにこの「テレワーク」の進化系である「ワーケーション」が広まっており、日本でも導入する企業が見られているのをご存知でしょうか。

今回はワーケーションの概要や広まった背景、メリットとデメリットについて解説します。

ワーケーションとは?

「ワーケーション」とは、「仕事(work)」と「休暇(vacation)」を合わせた造語であり、国内外のリゾート地などでテレワークを実施する勤務形態のこと。ビーチや山荘など、休暇先(旅先)で仕事をすることによるリフレッシュ効果や、業務以外の時間を有意義に使うことが期待されています。

ワーケーションは2000年代のアメリカを中心に始まったとされており、日本でも2017年にJALが導入を発表。その存在が大きく知られることとなりました。

ワーケーションの最大の特徴は、普段とは異なる環境で仕事をする点にあります。テレワークはあくまでもオフィスの代わりに自宅やサテライトオフィスなどで仕事をすることが基本であり、テレワークの場所をあらかじめ定めている企業が多く見られます。一方でワーケーションは、場所にとらわれず勤務する形式であるため、国内外の自由な場所で仕事ができるのです。

ワーケーションが広まった背景

ワーケーションは、もともとアメリカにおいて有給休暇の取得率が低い状況を解決するために生まれたとされています。実はアメリカでは年次有給休暇を取得する権利が法律で定められていないほか、有給休暇の取得率は減少傾向にあります。

全米旅行協会の調査では、週の勤務時間が35時間以上で「有給休暇」のある18歳以上のアメリカ人7331人において、与えられた有給休暇の日数は平均22.6日であることに対し、実際に取得されたのは平均16.8日だったといいます。そんな状況を改善するべく、企業ではワーケーションによって休暇を得られるような働きかけがされていきました。

日本ではたびたび有給休暇が取得しづらいことについても報道されていますが、厚生労働省の調査によると、平成30年度の労働者1人平均有給休暇取得率は51.1%に留まっています。やはり、日本における有給休暇の取得率は、依然として伸び悩んでいることがわかります。

ワーケーションが制度導入されれば、従業員は旅先で休暇を楽しみつつ、業務にあたることができます。有給休暇の取得は、ワーク・ライフ・バランスの実現や従業員のモチベーションアップ、リフレッシュによって新たなアイデアが生み出されるなど、企業にとってもメリットは大きい。

ワーケーションは労働力の確保を目指す「働き方改革」の一環でもあり、政府も大きな期待を寄せています。それはワーケーションのためにネットワーク環境が整った施設を長野県や和歌山県などに整備し、受け入れを積極的に進めていることからも十分にうかがえるでしょう。

そして政府がワーケーションを推し進める理由として、「地方創生」と「2020年夏に予想される交通機関の混雑緩和」のふたつも関係しています。

以前より政府は地方への移住を促そうと、支援を行ってきました。しかし移住先とのミスマッチなどにより、思うように進まなかった事例も少なくありません。一方でワーケーションであれば、数日〜数週間の滞在となるため人々が地方にやってくるハードルも非常に低くなります。

そして2020年夏には国際的なイベントの開催により、世界中から多くの人がやってくることが見込まれています。開催中の交通混雑を避けるため、政府では開催の数年前より試験的なテレワークを呼びかけ。ワーケーションは、東京オリンピックによる人口集中の緩和にもつながるのです。

ワーケーションのメリット

日本では普及され始めたこともあり、ワーケーションがイメージしにくいのも事実です。では、ワーケーションの具体的なメリットとデメリットをそれぞれ見てみましょう。

メリット1.長期休暇の取得につながる

会社員にとって、長期休暇を取って旅行に行くことを困難に感じる人も少なくありません。厚生労働省の調査では、労働者の約7割が「みんなに迷惑がかかると感じる」、「後で多忙になる」、「職場の雰囲気で取得しづらい」といった理由から有給休暇の取得にためらいを感じていることが明らかになっています。

2019年4月より有給休暇の取得が義務付けられたものの、改善されるには長い時間が必要かもしれません。そこでワーケーションは、有給休暇が取得しやすい環境づくりにつながると言われています。

たとえば、ワーケーションでは金曜はリゾート地で勤務を行い、土曜・日曜に加え月曜に有給休暇を取得すれば3日間をリゾート地で過ごすことが可能です。家族で過ごす時間も増え、従業員のワーク・ライフ・バランスを充実させることも難しくないのです。

さらにワーケーションでは、普段の勤務とは異なり通勤時間がありません。起床後から始業前にかけての時間や昼休み、終業後から就寝までといったわずかな時間にもリゾート地での生活を楽しめるのです。

メリット2.異なる環境での勤務によるパフォーマンスの向上

オフィスや自宅、近隣のカフェとは異なり、リゾート地での勤務は新たなアイデアが生まれやすくなります。普段は味わえない食事や風景、その土地ならではの体験から受ける刺激により、従業員のパフォーマンスに良い効果をもたらすでしょう。

また、「仕事を早く終わらせて、今日は◯◯をしよう」といったように、従業員の中で着実に仕事を終わらせるための計画が自然と作られ、業務効率が上がることも期待できます。

メリット3.企業の良いアピールにつながる

ワーケーションは、福利厚生のひとつとして良いアピールになります。長時間労働や休日出勤が平然と行われるブラック企業が問題視されているからこそ、ワーク・ライフ・バランスを充実させられるワーケーションが導入されている企業は、大きな注目を集めるでしょう。

メリット4.社員同士のコミュニケーションを促す

近年、ワーケーションを社内行事の一環として行う企業も増加しているといいます。普段とは異なる環境で研修などを行い、自由時間に現地でしか味わえない食事やアクティビティを楽しむことで、社員同士のコミュニケーションの場を作ることができます。

ワーケーションのデメリット

その一方で、ワーケーションは従来にはなかった制度であるからこそ、デメリットも存在します。メリットばかりに注目するのではなく、デメリットも踏まえたうえで導入を検討しましょう。

デメリット1.コミュニケーションコストがかかる

ワーケーションをする際、通常の勤務であれば発生しないコミュニケーションコストを懸念する声もあがっています。たしかに対面のコミュニケーションは従業員同士で些細な相談をしたり、相手のメッセージ内容に関する温度感を直接理解することが容易です。ワーケーションでは相互のコミュニケーションに齟齬が生まれる可能性もあるため、事前の対策が求められています。

デメリット2.周囲の理解を得る必要がある

先述した通り、日本が依然として有給休暇を取りづらい風潮なのは、「みんなに迷惑がかかる」という心境によるものです。これは実際に自分が休暇を取った後、業務が滞った経験があるからでしょう。

休暇を取る本人が罪悪感を持つことなく、休暇を満喫するためには周囲の理解が欠かせません。制度を導入する際には、企業内で説明会を根気強く行い、制度の利用者が気持ち良く休暇を楽しめるような環境づくりが重要です。

デメリット3.メリハリがつきにくく、休暇を満喫できない可能性がある

ワーケーションでは、「仕事の連絡が気になるあまり、ついついパソコンやスマートフォンを見てしまって気が休まらない」という事態も考えられます。

そのため、あらかじめ休暇先で行う業務の範囲を決めて、「この時間帯は確実に休む」というスケジューリングをしっかりしておくと、業務と休暇のメリハリがつきやすくなる。勤怠管理をしっかりとできるよう人事の意識も求められています。

周囲もワーケーションの利用者に対し、緊急時を除いて連絡を控えるといった気遣いをするように心がけましょう。

ワーケーションの成功事例

日本では年々、ワーケーションを導入し、成功した企業が増加しています。

  • 株式会社JTB(行き先:ハワイ)
  • 日本航空(JAL)(行き先:自由)
  • 三菱UFJ銀行(行き先:軽井沢)
  • セールスフォースドットコム(行き先:和歌山県白浜)

◆株式会社JTB(行き先:ハワイ)

株式会社JTBは、社員が休日や休暇を利用して訪れたハワイでテレワークを行う「ワーケーション・ハワイ」という制度を2019年4月より導入しています。

以前より在宅勤務やモバイルワークを中心に、柔軟な働き方に向けた取り組みを行ってきた株式会社JTB。トライアルとして社長自らハワイでのワーケーションを体験していたという点からも、ワーケーションに対して積極的な姿勢が見受けられます。

この制度では、ネットワーク環境が整えられた専用スペースでの勤務が可能です。ネットワーク環境の整備がネックになりやすいワーケーションでも、普段と変わらないパフォーマンスが期待できます。

◆日本航空(JAL)(行き先:自由)

日本にワーケーションを広めたきっかけの日本航空(JAL)では、導入初年度の2017年7月、8月において実際にワーケーションを取得した人数は34人(男性24人、女性10人)だったと報告されています。利用者の「休暇の日程を短縮せずに帰省できた」、「上席の不在時にもワーケーションであれば進捗が止まらないのでスピード感が生まれる」といった声からも、好事例であったことがわかります。

日本航空(JAL)は社内でのワーケーションの周知のため、目的や概要、実施にあたっての注意点や実施例紹介の講座を行っていました。参加できなかった社員にも資料を共有するほか、人事部からも社員に対して制度を説明しています。

それだけでなく、会社からセキュリティ要件を満たしたパソコンやスマートフォンを貸与しており、セキュリティを守りつつ環境を整えています。社内への地道な働きかけにより、ワーケーションが成功したといえるでしょう。

◆三菱UFJ銀行(行き先:軽井沢)

三菱UFJ銀行は、避暑地として人気を集めている軽井沢でのワーケーションをスタートさせました。以前よりあった保養所の一室にITオフィスを新設、社員は在宅勤務の申請で利用することができます。家族と軽井沢に滞在しながら、勤務も可能になるワーケーション制度は社員からも好評です。

軽井沢に加え、三菱UFJ銀行ではシンガポールの拠点にも専用オフィスを設け、海外でのワーケーションも可能にすることを検討しています。

◆セールスフォースドットコム(行き先:和歌山県白浜)

和歌山県白浜市にサテライトオフィスを構えているセールスフォースドットコムでは、社員の意思で勤務先を白浜に決定できる制度を導入しています。

同社は白浜で勤務している社員は東京で勤務している社員より、20%ほど生産性が高いという結果が出たことを明らかにしています。また、この要因は通勤時間によるものだとしています。満員電車で往復2時間かけて通勤していた東京オフィスに比べ、車で10分かけて通勤する白浜オフィスでは、ストレスから解放されるだけでなく、自由な時間が作れます。ワーケーションでは、通勤時間の短縮により社員の生産性を高める効果が期待できます。

この他にも、企業によって「3週間など期間を決めてワーケーションを行う」、「部署全員でリゾート地に赴き、合宿形式でワーケーションを行う」といった形式が取られています。企業の規模や設備に合った形でワーケーションを進めるのが良いでしょう。

「働きすぎ」の日本を変える、ワーケーション

元来「働きすぎ」とされていた日本の労働環境を大きく変える可能性が、「ワーケーション」には秘められています。成功するためには、ワーケーションによるメリットや課題点を踏まえ、企業内で「無理なく休むこと」が当たり前になるよう呼びかけていくことが重要です。

政府の取り組みから、今後さらに広がっていく「ワーケーション」について、まずは検討をしてみてはいかがでしょうか。