データを用いて強い組織をつくる!「ピープルアナリティクス」の活用方法とは

目次

情報技術の発達により、課題解決に向けてさまざまなデータを収集、分析することも一般的になりつつあります。

人事の領域においても、社員の行動データや人事情報をもとにした情報を活用し、改善につなげる「ピープルアナリティクス」が大きな注目を集めています。海外ではすでに導入されている企業も多い「ピープルアナリティクス」は、どのようなメリットや活用方法があるのでしょうか。導入事例とともに解説します。

ピープルアナリティクスとは?

ピープルアナリティクスとは、最新のテクノロジーを用いて社員の行動データを収集、分析し、組織づくりに生かす手法のことです。従来、人事は課題に直面した際、判断基準はそれまでの経験や勘に頼るほかありませんでした。

ピープルアナリティクスでは、IT技術の活用によって得られた科学的にも根拠のあるデータに基づいた結果から課題解決のためのヒントを探り、具体的な施策の実行に繋げます。

ピープルアナリティクスが導入される背景

そもそも、なぜピープルアナリティクスを導入する企業が増加傾向にあるのでしょうか。その背景には、少子高齢化と働き方改革が大きく関わっています。

現在の日本では、平均寿命の伸びや出生率の低下により少子高齢化が進んでいます。加えて2015年時点で7,592万人だった生産年齢(15歳〜64歳)人口が2030年には6,773万人、2060年には4,418万人にまで減少することが見込まれており、大きな問題となっています。つまり、将来的に生産年齢人口が減少するからこそ、人事はハイパフォーマンスを出してくれる人材の確保や採用における精度の向上が必須となっているのです。

ピープルアナリティクスを活用できるシーン

人事は収集したデータを、以下のようなシーンで活用できます。

1.採用

採用を行ううえで、「採用のミスマッチ」は絶対に避けたいもの。「期待して入社したものの、いざ業務に取り組んでみたらミスマッチだった」という問題が起きれば、本人のモチベーションは激しく低下することでしょう。加えてパフォーマンスの質が落ちれば、周囲の生産性にも大きく影響します。

ミスマッチが起こる原因のひとつは、意思決定の際に採用担当の感情バイアスがかかることにあります。「この人なら頼れるかもしれない」、「あの部署に配属すれば、きっと活躍できるだろう」という理由から採用、配属した結果、思うような働きが見られないケースも珍しくありません。同時に、応募者が実施したその場限りの対策が偶然にもプラスイメージにつながれば、能力不足だったとしても選考を通過してしまうこともあるでしょう。

ただ、これらの判断基準はあくまでも採用担当の先入観であり、応募者の中にはイメージと実際の働きに差異があった場合はミスマッチとなります。だからこそ、ピープルアナリティクスは応募者の属性を分析、客観的な視点から「本当に自社とマッチするのか」をもとに採用を行うことに優れているのです。

2.業務効率の向上

ある企業では、カード型やウェアラブル型の機器を従業員に身につけさせ、休憩のタイミングやコミュニケーションを取っている相手、業務を行っている場所をデータとして収集しているといいます。ここで得られたデータを分析することで、数値的な面から業務効率を向上させるための取り組みが可能になります。

実際にアメリカのあるコールセンターでは、業務効率を重視していた背景から「シフトに穴を開けないため、休憩は各々でとること」を決めていました。しかし、ピープルアナリティクスとして従業員の行動を収集、分析した結果、「同じタイミングでチームごとに休憩をとったほうが、コミュニケーションが活発化、生産性が向上すること」が明らかになりました。この事例からもうかがえるように、ピープルアナリティクスでは、数値をもとに確実な業務効率の向上が叶えられます。

3.職場環境の改善

ピープルアナリティクスにより得られる従業員のデータからは、休憩スペースの設置や普段の席順など、職場環境の改善に向けたヒントを得られます。

職場環境の改善は、従業員と人事の間に生じたギャップによって大きな効果が得られないケースも見られます。「話題だから、この制度を導入してみよう」、「成功事例が多いから、新しくこの設備を入れてみよう」と人事の判断により福利厚生を追加しても、プラスにはたらくとは言い切れません。満足度の向上につながらないどころか、「社員の要望を拾ってくれない」という不信感がつのり、退職する社員が出てくることも考えられるでしょう。

しかし、ピープルアナリティクスでは実際の社員の行動にもとづいたデータを収集するため、本当に必要とされているものがわかり、職場環境の改善ができるのです。

ピープルアナリティクスで集めるデータ

ピープルアナリティクスでは、主に以下の分類でデータが集計されます。個人情報を取り扱うということは、個人情報保護法に接触する恐れがあるため、データの取り扱いには十分に注意しましょう。

1.人事データ

従業員の年齢や性別、住所といった基本的な情報が含まれています。このほかにも業績や健康診断の結果、評価がこれにあたり、ピープルアナリティクスにおいて基本となる情報といえます。

2.デジタルデータ

デジタルデータは、メールの送信履歴やチャットでのコミュニケーション内容、社用の携帯電話の使用履歴です。コミュニケーション状況の向上に生かされますが、「データの活用目的を明確に提示する」、「第三者にデータを譲渡しない」といった事前に説明しておくことも有効です。

3.施設データ

オフィス内の電気や水道の使用量、エレベーターの稼働率など、オフィスの施設に関するデータもピープルアナリティクスでは収集されています。会議室の利用時間を分析することで無駄を削減し、業務効率の向上につなげられたケースも見られます。

4.行動データ

従業員ひとりひとりの行動に関するデータは、従業員の位置情報やリアルのコミュニケーションにまつわるものとなっています。ウェアラブル端末によって心拍数や体温の計測を行う企業も多く、モチベーション管理やメンタルヘルスに関して役立っているといわれています。

ピープルアナリティクスの成功事例

実際にピープルアナリティクスを導入した企業では、どのような効果が得られたのでしょうか。

◆採用の業務効率化を叶えた電気通信事業会社

日本のある電気通信事業会社では、ピープルアナリティクスを新卒採用においてエントリーシートの合否を判断する目的で活用しています。これにより膨大な人数のエントリーシートを見る採用担当の負担を減らすことに成功しました。

◆選考フローの簡略化を実現したgoogle

ピープルアナリティクスが広まったきっかけを作ったgoogleでは、過去の応募者の履歴書をデータ化・分析し、履歴書評価のアルゴリズムを作成。より効率良く採用活動を進められるようになったほか、不採用者の再評価を実現化させています。

また、googleでは採用する人材をしっかり見極めるという目的から、25回もの面接を実施していました。しかしピープルアナリティクスを導入、面接回数と採用した人材が発揮するパフォーマンスの予測精度を分析した結果、5回目以降の面接を行っても精度が変わらないことが明らかになりました。結果として、それまで面接に費やしていた時間をスリム化することができたのです。

◆早期離職率を減少させた航空会社

アメリカのある航空会社では、採用の一環としてピープルアナリティクスを導入したといわれています。

それまでこの企業では顧客対応を行う際に必要な対人スキルを持った人材の見極め、早期離職率の減少が大きな課題となっていました。そこで企業はピープルアナリティクスをもとに貢献度の高い従業員のスキルを分析し、模擬演習を選考フローに取り入れたことで優秀な人材の選抜と早期退職者の減少につなげられました。

人事領域を未来に導く、ピープルアナリティクス

ピープルアナリティクスの登場により、「勘と経験と気合い」の3Kをもとに行われていた採用は、もはや過去のものとなりつつあります。根拠のある理由をもとに、ミスマッチの防止やハイパフォーマーの採用を確実にできるようになるのは、企業にとっても大きなメリットといっても過言ではないでしょう。

採用の精度を向上させるために、ピープルアナリティクスの導入を一度検討してみてはいかがでしょうか。