「女性活躍推進法」の施行から3年経っても2018年男女平等ランキング110位!?日本の「働く女性の現在と未来」

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2016年4月から女性活躍推進法が施行され、そろそろ満3年が経過しようとしています。既婚女性の就業率や、男女間の所得格差などは改善の方向に向かっているものの、国際的な統計データで「男女平等」指標を比較してみると、世界全体で見ても日本はまだまだ社会における女性の地位が男性に比べて著しく低いままなのが現状です。当然、日本政府としても女性の地位向上を目指して懸命に取り組みを続けています。

そこで、今回は現在働く女性が置かれている現状と、政府が目指している最新のヴィジョンや施策などを俯瞰しつつ、今後各企業が女性活躍を推進するためにどのような対策を講じればよいのか、人事担当として何をすべきなのかを解説していきます。

日本の働く女性の現状

出産・育児を経験しても働き続ける女性は着実に増えている

内閣府がまとめた『女性活躍加速のための重点方針 2018』によると、2016年の「女性活躍推進法」制定をはじめ、政府は保育の受け皿整備の加速化、女性役員の登用に向けた企業への働きがけなどの取り組みを進めてきました。その結果、出産・育児を乗り越えて働く女性の比率は年々改善し続けています。たとえば、子育て世代の女性就業率は74.3%まで上昇し、第一子出産前後の女性の就業継続率は戦後初めて50%の大台に乗りました。

進まない女性たちの社会的地位向上

政府の一連の働く女性支援策によって、一定の労働人口増加が達成された反面、働く女性の企業内での地位向上は未だ立ち遅れたままとなっています。例えば、世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」2018年版によると、日本の経済、教育、保健、政治の各分野における男女平等を数値で算出した「ジェンダー・ギャップ指数」は0.662と、世界149カ国中110位にとどまります。国際的に見ても日本の女性の社会的地位は未だ低いまま置かれているのが現状なのです。

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また、企業における各ポストでの女性比率も国際的に見て著しく低い状態となっています。「平成29年版男女共同参画白書」によると、管理職に占める女性比率はわずか13.0%にとどまります。欧米各国が概ね30~40%の水準にあることを考慮すると、管理職登用が極めて遅れている現状が見て取れるでしょう。さらに、役員に占める女性比率は、わずか3.7%と壊滅的な状況。一方、賃金面でも変化は見られぬまま大きな男女格差が存在しています。厚生労働省の最新の「賃金構造基本統計調査」(平成29年度版)によると、2017年度の全女性の給与額平均値は、全男性に対して未だ73.4%にとどまっているのです。

日本において、女性の活躍推進が立ち遅れている理由とは?

では、なぜ日本において女性が企業内で十分に活躍する機会を得られていないのでしょうか?職場における女性の地位向上を妨げる要因は何なのでしょうか?

いくつか考えられる中で最大の要因となるのが、いまだ日本には「男社会」が根付いており、「男は外で働き、女は家庭を守る」という高度経済成長期に固定化した男女間の役割意識が残っていることです。これにより、出産・育児といったライフイベントで断続的に仕事を離れざるを得ない女性よりも、安定的に就業し続ける男性を優遇し続けてきたのが、現在の日本企業なのです。

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それを裏付けるかのように、6歳未満の子どもを持つ夫婦の育児・家事関連時間の男女別比較(内閣府まとめ「平成28年社会生活基本調査」の結果から~男性の育児・家事関連時間~)によると、女性1日あたりの家事・育児関連時間が週平均454分であるのに対して、男性はわずか83分と非常にアンバランスな分担比率になっていることが見て取れます。

また、2017年度の男女別育休取得率を見ても、根強い役割意識が残っているのは一目瞭然です。女性の取得率が83.2%であるのに対して、男性の育休取得率はわずか5.14%にとどまります。

これらのデータを見る限り、日本では結婚・出産・育児といったライフステージを経験しながらも、女性が安心して仕事におけるキャリアを構築するための基盤整備は、まだまだ不十分であるといえるでしょう。

日本(政府)が目指す女性活躍の未来

ここまで見てきたように、2010年代になって女性の社会進出が進む一方で、硬直化した「男性中心」の就労モデルに阻まれ、女性が活き活きと働ける就労環境が実現できているとは言い難いのが現状です。このような行き詰まった状況を打破するため、政府は女性、若者、高齢者、障害者等一人一人が能力を発揮して働ける「全員参加社会」づくりに着手。その目玉政策の一つが、『女性活躍推進法』なのです。

女性活躍推進法とは?

2012年12月に成立した第2次安倍内閣では、政権発足当時から「日本再興戦略」を掲げ、その中で女性の活躍推進を最重要課題と位置づけて取り組みを進めてきました。2014年には、安倍首相自ら本部長を務める「すべての女性が輝く社会づくり本部」を首相官邸に設置。すべての女性が輝くための「暮らしの質」の向上を目指して、一連の政策パッケージを急ピッチで策定していきました。

その取り組みのハイライトとなったのが、2016年4月から施行された女性活躍推進法(※正式名称「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)です。この法律の画期的なポイントは、各企業に対して、職場における女性登用の具体的なアクションプランや改善策を実施させることができるようになったことでしょう。

具体的には、労働者を301人以上雇用する民間事業主(いわゆる大企業)を対象に自社における女性採用比率・勤続年数男女差・労働時間・女性管理職比率等のデータを調査し、今後女性活躍を推進するための具体的な「行動計画」を当局へ提出するとともにHP等で取り組み状況を公表しなくてはならなくなりました。

これにより、各企業での女性活躍に関する積極性や具体的施策内容が求職者にガラス張りとなったのです。女性活躍に積極的な優良企業は女性採用がしやすくなる反面、女性社員比率が低い会社、取り組み内容に魅力が乏しい会社は、男女問わず採用が厳しくなると予想されます。

女性活躍を促進する意外なメリットとは?

女性活躍推進法の施行により、各社は具体的に女性活躍を推進するための具体的な行動計画の遂行と、PDCAサイクルによる改善への取り組みを強化しなければなりません。このことは、単に優秀な女性労働力を確保しやすくなるという直接的な効果だけでなく、企業の業績改善や、企業文化の改革、より優秀な男性労働力の確保といった副次的なメリットも見込めるのです。

なぜなら、産休後のスムーズな職場復帰支援や、女性が育児や介護と両立しやすい職場づくりに取り組むことは、高齢者・障害者も含めた総合的なダイバーシティ政策の推進につながり、男性も含めた全社員の福利厚生におけるクオリティの向上を伴うからです。

また、モノやサービスを購入する最終消費者の半数は女性です。職場における女性の発言力が増すと、女性目線に立った優れた製品・商品開発が可能になるため、拡販や新たな市場開拓が見込める可能性も高いでしょう。

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実際、経済産業省がまとめた資料によると、女性取締役が多い企業ほど、ROE(株主資本利益率:Return on Equity)が高い傾向が見られるというデータもあるのです。

各企業が今後取るべき女性の採用・キャリアアップ体制

まずは「女性活躍推進法」を遵法するところから始める

政府は人口減少・少子高齢化による働き手の減少に対して強い危機感を抱き、「働き方改革」「最低賃金引き上げ」「休み方改革」「同一労働同一賃金」など、特に労働法改革に強く踏み込んで取り組んできています。その中で、男女の機会均等・共同参画や女性の働き手確保の観点から、「女性活躍推進」には内閣府での特命チームを立ち上げ、2016年に成立した「女性活躍推進法」を強力に推し進めようとしています。

「女性活躍推進」に対する国を挙げてのマクロレベルの取り組みは、そのまま各企業での採用方針や組織運営に応用することが可能です。人事担当としては、これを千載一遇のチャンスと捉え、「女性活躍推進法」をテコにして、経営陣を巻き込んだ全社一丸となった女性採用の強化や、女性が活躍できる会社づくりを進めていく必要があります。

「女性活躍推進法」を巡って、各企業が達成すべき目標は非常にシンプルです。組織内で女性社員比率を上げ、優秀な社員を管理職~役員へと引き上げるとともに、女性採用を積極的に推進する。そのために女性が働きやすい会社づくりを行い、離職率を下げなければなりません。

まずすべきことは、マクロレベルでの詳細な分析が書かれた政府資料に目を通すことです。政府がまとめた資料に書かれた女性活躍推進を巡る現状分析と対策案は、各省庁のHP上からPDFやプレゼン資料の形でダウンロードすることで簡単に入手できる上、ほぼそのまま自社での政策立案に応用が可能なものばかり。検討のためのとても強力な基礎資料となりえます。

いくつか紹介しますので、ぜひダウンロードして目を通してみてください。

女性活躍推進のための具体的な施策内容とは?

では、実際に「行動計画」を立てるにあたり、何をすれば良いのでしょうか?対策は、多岐にわたります。いくつか列挙してみましょう。

育休・産休制度の整備

労働法で定められた労働者の権利を遵守するのはもちろん、産休・育休中の金銭的な支援や産休・育休の延長、私設託児所の設置、外部託児サービスとの法人契約などが考えられます。

◯柔軟な労務管理の推進

育児・介護に柔軟に対応できるよう、フレックス制度の導入やテレワークの仕組み構築、あるいは総労働時間や残業の抑制を通じた負荷軽減などを図ると良いでしょう。

◯職場における女性差別の撲滅

より女性が働きやすい職場を実現するため、セクハラ・パワハラ防止のための社内セミナーや懲戒等の罰則強化、ホットラインの整備等を通じた相談・内部告発がしやすい仕組みづくりを推進する必要があります。

◯女性採用に特化した取り組み

女性専用の採用ホームページ設置、女性限定の転職・就職フェアへのブース出展、採用現場への現役女性社員の立会いなど、様々な施策が考えられます。

大切なのは、これらの施策は経営トップを先頭に、全社一丸となって取り組む必要があるということ。なぜなら、組織における中核メンバーである中高年層の意識に根強く残っていると思われる前時代的な男女間の役割分担の考え方を取り払わなければ、制度や仕組みだけが活用されずに空洞化し、改革は失敗してしまうからです。経営トップを巻き込んだ上で、自社の問題点・課題をまずしっかり分析し、できることからまず手をつけて、着実にPDCAサイクルを回していくように心がけましょう。

優良企業の取り組み事例研究がおすすめ

その際、女性活躍を積極的に推進している「お手本」となる優良企業の事例を参考にしてみると良いでしょう。女性活躍推進法では、「行動計画」は広く一般公開されていますので、これを利用しない手はありません。特におすすめなのが、経済産業省が東証1部・2部、マザーズ、JASDAQの各市場へ上場する企業約3,500社の中から、特に女性活躍推進のお手本となる企業を選定した「なでしこ」銘柄に指定された企業です。「なでしこ」企業の中から、女性の活躍が成功している企業をいくつかピックアップして紹介します。

島津製作所

磁気や光、レーザー等を活用した分析機器・精密機械製作を得意とする同社は、HP上に「SHIMADZU×Diversity」と名付けた、人材多様化政策についての取り組みをPRするための専用サイトを設置。「女性採用・活躍推進」においても、将来の女性正社員比率や新卒採用女性比率の目標値をはじめ、女性活躍に対する取り組みをわかりやすくまとめています。

ブリヂストン

5年連続でなでしこ銘柄に選定されるなど、女性活躍推進法が制定される以前から、女性の働きやすさやワーク・ライフ・バランスに配慮した職場環境の整備に力をいれてきた同社。働きやすい社内制度を用意するだけでなく、育児・介護ガイドブックの全社員配布、育児休職者セミナー、ワーク・ライフ・バランスに関する社内講習会、女性向けのキャリアデザイン研修など、社員教育の徹底による「女性活躍推進」への意識付けを強化しています。

味の素

同社では、担当執行役員を中心に経営企画部・人事部・各事業所人事責任者で構成した「ダイバーシティ推進タスクフォース」や「女性人材の育成委員会」といった社内特命チームを相次いで立ち上げ、社内の意識改革を促す一方で、全国にサテライトオフィス設置・軽量モバイルツールの提供、所定就労時間の変更、コアタイムなしフレックスの導入など、女性の働きやすさを追求。さらに、同社の2019年度新卒採用サイトには、「女性社員×女性内定者」という対談記事を掲載し、同社の女性人気に気を緩めず、女性求職者に対して訴求するコンテンツもきっちり用意されています。

粘り強い取り組みを

2012年に大底を打って以来、国内の労働市場における需給状況は厳しくなる一方です。サービス業を中心に人手不足の解消が安定的な企業成長へのカギとなっている昨今、各企業における女性活躍推進への取り組みは待ったなしとなっています。

しかし、他の労働関連分野での改革と同様に、女性活躍推進への取り組みも一朝一夕では劇的な改善を手にすることは難しい。常に政府の動向や優良企業の具体的な取り組み事例にアンテナを張りつつ、自社でできる取り組みを地道に試行錯誤することで、少しずつ前進するしかありません。ぜひ、粘り強く取り組んでみてはいかがでしょうか。