ワークライフバランス2.0――時間単位での有給休暇とリフレッシュ休暇の導入

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株式会社クララオンラインは、アジアに軸足を置いたインフラ事業とコンサルティングの会社として、堅調な業績を上げています。同社がワークライフバランスの改善に向けた取り組みを始めたのは2005年頃。1時間単位で有給休暇を取れる制度や、通年でいつでも3日連続して休みを取れるリフレッシュ休暇などの制度を導入しました。同社の代表取締役社長である家本賢太郎さんは、自身も5人の子どもを育てるイクメンで、制度の恩恵を受けていると言います。家本さんがどんな思いで制度を導入してきたのか、話を伺いました。

子育てがワークライフバランスを見直すきっかけに

御社の業務内容について教えてください。

弊社は1997年に創業しました。私が15歳の時に、中学を卒業して創業した会社です。もともとは企業のWebサーバやメールサーバを提供することから始めました。その後、そのビジネスを日本の外に出していこうと考え、主に中国と日本の間のクラウドネットワークビジネスとその領域においてコンサルティングを展開してきたのです。

社員は、だいたい1/3がエンジニアです。いわゆるインフラエンジニアなので、スケジュールがタイトでゴリゴリ開発するみたいな感じではありません。また、休日や深夜の時間帯はすべてアウトソーシングをしています。コアな部分だけを自分たちでやるというスタンスで仕事をしています。

ワークライフバランスの改善に向け、いろいろな制度を導入されたと思いますが、その前にどんな課題があったのでしょうか?

小さなベンチャー企業なので、ワークライフバランスを考える以前に、社員の採用と定着率の向上が大変でした。大企業と比べてよい条件が出せるわけではなかったので。

最初にワークライフバランスという言葉に近い動きを取ったのは、今から10年以上前です。社員はみんな20〜30代だったので、各々のライフスタイルにおいて、恋愛をして、結婚をして、子を持つというのが同じ時期に重なっていたのです。

私自身は結婚が早く、最初の子供が生まれたのが23歳の頃でした。子育てをするのは大変だとわかった一方で、せっかくだったら自分も子育てに参加したいという気持ちもあって、休みを取ってみようと思ったのが一つのきっかけでした。そういう背景からワークライフバランスという言葉に興味を持つようになり、自社でも改善の取り組みをしていくことにつながったのです。

現在、家本さん自身は、お子さんが5人いるとお伺いしました。仕事と子育ての時間配分をどのようにしているのでしょうか?

子育てに限らず、家庭にあてている時間は、平日の朝5時〜8時と土日のすべてですね。仕事柄、家に帰る時間はまちまちですが、できるだけ家庭の時間を持つようにしています。家事も役割分担していて、私自身も掃除、洗濯、食事、子供を送る、寝かしつけ、買い物、地域の活動への参加などを担当しているんです。また子供が体調崩してしまった時は、家のことを優先にしています。

大手の事例を真似るだけでは上手くいかない

新制度を設計するにあたり、苦労した点を教えてください。

2006年頃からワークライフバランスの施策を導入しました。この時は、育児休暇の取得にフォーカスを当てすぎてしまい反省しました。現実的には、子育てをし始める社員はほとんどいなかったのです。

それと、大企業のワークライフバランスの取り組みを参考にしようとして、いろいろな制度を取り入れすぎたかもしれません。中小企業が大企業の真似しても、うまくいくわけがないのです。そうしたこともあって、ワークライフバランスという旗を下げていた時期があります。

私自身は子供が5人いるので、毎日いろいろなことが突然起きます。ですから、ある程度柔軟に働きたい。また、弊社で働く私と同世代の人たちの未来を開いていくためには、働き方も、休み方も、育児に関わることも含めて、柔軟に働ける環境づくりが大切なのです。

いきなり制度ができたわけではなくて、運用でこの辺りの取り組みをできるだけ柔軟にしました。そして「子供の保育園への送り迎えがあるので、出退社の時間を前後にずらしたい」など、そういう取り組みは最初から制度として決めていたわけではなくて、運用でカバーしてきたのです。

時間単位で有給休暇を取れるようにしたのもその一例です。実際、1日や半日も有給休暇がいらないのだけど、時間単位で取れたら便利だし、そういうのがあったらいいなという話の中で「じゃあ,みんなが使えるように制度化しようか」というふうに、みんなの声を聞きながら制度にしていったのです。

苦労したというよりは、実際に運用をしてみて、みんなのニーズに合わせて制度化してみたという感じです。一方で、制度の中にはリフレッシュ休暇というものもあります。これは、もともと「夏休みを取りましょう」というものなのですが、お盆の時期に夏休みを取りたくない人も多いので、通年で3日連続して休んでもらうことにしました。1日や2日だけ休むことはできません。「必ず3日連続で休んでもらいます」という制度です。

大企業の真似をしてもうまくいかないとおっしゃっていましたが、具体的にどのような真似をしようとしたのですか?

様々なサポートプランや勤務時間の変更をポイント制でやろうとしたのです。例えば1日時短勤務すると10ポイントといった具合です。いかにも大企業の取り組みですよね。これは失敗しました。でも最初にこのような失敗があったから、試行錯誤して来られたのだと思います。

無理をしすぎないでワークライフバランスを改善させることが大事だと思います。短期間で新制度を導入しても、働き方はいきなり変わりません。それに、いろんな意見があるから、時間をかけて取り組むべきだと思います。

トップが意志を持って改革を進めるべき

社員からの評判のよい制度はどれですか?

時間単位で有給が取れる制度が一番人気です。例えば、子供がぐずるとか熱があるとか、パパとママで役割分担をタッチするのに、1時間や2時間くらい必要なことはあります。半日休むほどではないけれど1時間出社を遅らせたり早退したりすれば済むという話はたくさんあるのです。

他には何かありますか?

リフレッシュ休暇は通年にして良かったと思っています。さまざまな国籍の従業員がいるので、夏休みだけではなく、クリスマスや冬に取りたいというニーズはかなりあります。

有給休暇とリフレッシュ休暇を絡めると最長でどのくらい休めるのですか?

2週間くらいになると思います。業務の都合がつけば、エンジニアの場合はプロジェクトの合間で休んだりする人もいますよね。取得率はほぼ100%です。

新制度を導入することで、どのような効果が得られましたか?

定量的な効果は、なかなか説明できません。ただ、一つ言えるのは、従業員のためにやっているとか、格好をつけるためではなく、ワークライフバランスの実現は会社として当たり前だという大前提でやっています。新制度については、実際に利用率が高い状態なので、従業員のロイヤルティも高まっていると思っています。

中途採用はどうなりましたか?

これを前面に押し出して採用をしているわけではないので、そんなに大きく変わったということはありません。ただ、お子さんがいる女性は弊社に転職しやすくなっていると思います。

ワークライフバランスを高める取り組みはうまくいく会社とそうではない会社があると思います。なぜ御社の場合はうまくいっているのでしょうか?

端的に言うと、経営者として自分が「こうあるべき」というビジョンを持っているからだと思います。制度のコンセプト作りとか、ワークライフバランスを向上させたいという経営サイドの思いがすごく強いのです。他の会社でうまくいっているところは、経営者のリーダーシップがはっきりされているところがほとんどです。最後は会社がこうやるんだと言い切ってくれるのはトップだと思います。

ワークライフバランスに近道はない

2005年以降、同社はワークライフバランスの改善に向けた取り組みを続けてきています。従業員から最も好評を博しているのは、1時間単位で有給休暇を取れる制度と、365日いつでも3日連続して休みを取れるリフレッシュ休暇。こうした制度に行き着くまでに「少なくとも5年の歳月がかかりました」と家本さんは語ります。ワークライフバランスに近道はなく、むしろ時間をかけて試行錯誤することが、良い制度を作るうえで欠かせないのかもしれません。みなさんもクララオンラインの例を参考に、取り組んでみてはいかがでしょうか。