離職原因は上司!?退職代行「EXIT」創業者に聞いた退職者を減らす対策

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プロフィール
EXIT株式会社
新野 俊幸(にいの としゆき)さん/写真右
岡崎 雄一郎(おかざき ゆういちろう)さん/写真左
2017年に退職代行事業開始。同年、センシエス合同会社を設立。2018年に“退職代行サービス「EXIT」”を提供するEXIT株式会社を設立。

売り手市場の中で一人でも多くの人材を採用し、長く働いてもらいたい。採用と離職率の改善は、人事担当者ならば誰もが目指す思いです。しかし、退職希望者にも様々な葛藤、思いがあります。その思いに寄り添うユニークなサービスとして注目を集める“退職代行サービス「EXIT」”の利用者が急増しています。

なぜ退職者が減らないのか。今回は、同サービスを開発したEXIT株式会社創業者の新野俊幸さんと岡崎雄一郎さんのお二人に、退職代行サービスを通じて感じている「退職者が多い企業の特徴」や「退職者を減らすポイント」についてお話を伺いました。

「退職代行サービス」の利用者が増えている理由

まずは退職代行サービスについて詳しく教えてください。

新野俊幸(以下、新野):「辞めたいけど言い出せない」「辞めさせてもらえない」など、退職したくてもできずに困っている方々のために、退職に必要な連絡を代行するのがEXIT株式会社の提供しているサービスです。「もう上司に会いたくないから出社せず辞めたい」「今すぐに辞めたい」など、利用者様のご要望にお応えしています。

退職代行を利用される方の年代や特徴などはありますか?

岡崎雄一郎(以下、岡崎):20代の利用者様が圧倒的に多いのですが、20代から50代まで幅広い年代の方に利用していただいています。最近では各メディアに取り上げられているおかげで、特に30代・40代の利用者様も増えています。このサービスを始めてからわかったのですが、どの年代でも退職したい理由は20代と同じでした。抱えている悩みに、世代ごとの差はない。なので、「だから20代は…」という論じられ方はちょっと違うのではないかと思っています。

新野:また、利用者様のタイプも共通している傾向にあります。「気の弱い方」や「真面目な方」「責任感の強い方」が多い。たとえば、無責任な人間であれば明日から職場に行かないということもできる。それができないのは、責任感が強いんですよね。その性格につけ込まれて「辞められない」という方もけっこういらっしゃいます。

幅広い方々から利用されていますが増えている理由はなんですか?

岡崎:昨年から退職代行サービスを提供し始めて、当初は月数人しか利用者様はいませんでした。それが今は月に300人くらいの利用者様がいます。増えた理由としてはTwitterでバズったことも挙げられますが、もともと需要があったんだと思います。退職したくても退職できずに困っていた人たちがようやく行動に移せるサービスが生まれた、ということ。だから、利用し始める人の数が伸びているのだと思います。本格的に需要が増えるのは、これからじゃないでしょうか。

すぐ始められる退職者を減らす方法

退職代行サービスを提供しているお二人から見て、退職者が多い企業の特徴を教えてください。

新野:「社員の悪口を言い続ける人」「あいつは本当に使えないからいらないと言う人」など、部下に対して言う言葉ではないことを平気で言う上司の方々が実際にいる。こういう上司のもとでは困ったことがあっても相談はできません。なぜなら、強い口調で言われて萎縮してしまい、仕事のパフォーマンスは低下して、成績も落ちて怒られる。だから、さらに萎縮してしまう。という負のサイクルが、社員のモチベーションを奪い、退職者が増えるケースが多くみられます。

岡崎:実際の労働環境から判断するのは難しいですが、上司の方と話してみてわかることがあります。たとえば、利用者様が出社せずに退職を希望される際に私たちが電話するのですが、ずっと僕に説教をしてきます。本人が電話に出られない状態で、会社にも行けないのに、30分も説教に時間を使う。これがもし部下だったら、もっと酷いんだろうという想像がつきます。日常的に圧というか、ピリピリしている。こういう環境では、仕事への意欲は下がっていく一方です。

なるほど。では「こうすればもう少し退職せずに、前向きに働いてくれるのでは?」と感じる部分はありますか?どのようなことをすれば良い方向に進むのでしょうか?

岡崎:そうですね。「精神的プレッシャーからの解放」じゃないでしょうか。これがとても大切だと思います。「辞めたい人はいつ辞めてもいい」という雰囲気をつくること。それが精神的な余裕を生んで、居心地の良さにつながったり、最終的には働きやすい職場になると考えます。ただし、「会社がこれだけやってあげているんだから辞めないでね」という押しつけは禁物。辞めたいと思っていなくても、それがプレッシャーになってしまうこともある。このバランスが重要だと思います。

新野:当社で成功している事例では「絶対に怒らない」という取り組みがあります。たとえば、寝坊して遅刻しても、ミスしても「次は気をつけようね」でとどめる。これが「早く寝ろ」「ふざけるな」と言ってしまうから、部下のモチベーションが下がってしまうのです。

当社の社員に、入社して3日目くらいで何の連絡もなしに1時間半くらい遅刻してきた社員がいました。出社してきたら「家で仕事をしたい」と。普通なら怒るところです。でも私たちは「絶対に怒らない」と決めているので、それすらも怒らなかった。その結果、遅刻した社員は少しずつ時間にルーズな部分は改善され、仕事への姿勢が変わり、最終的には社内で一番の成績を出すまでに成長しました。「絶対に怒らない」という取り組みは、社員の前向きに働きたくなる気持ちを醸成するきっかけになるのではないでしょうか。

心のゆとりが定着率を上げる

退職者を減らすには、「プレッシャーを無くす」や「怒らない」という方法はとても効果的だと感じました。では、定着率を高めるにはどんな方法があるのでしょうか?

岡崎:「退職したい旨を1ヶ月前に言う」とか、「所定の引き継ぎ業務をする」とか、就業規則に書かれていると思います。ですが、正直なところ、会社に対して反発心を持ってしまった退職希望者は協力的ではありません。それならば、辞めたい人が辞められるシステムを整えておくことが大事なのではないかと思います。

新野:当社の制度に「即日退職OK」という福利厚生があります。退職代行サービスの事業を行なっていることも制度を導入している理由ですが、社員の「心理的安全の確保」という意味も含まれています。いつでも辞められることの安心感が、仕事のパフォーマンスを高めるのです。実際に、Googleでも心理的安全を大切にしていて、社員が堂々と発言できるような空気感を作ることに注力しているんですよ。

あれだけの世界的大企業が重視している「心理的安全」を、どのようにして会社に取り込むのか。その1つの取り組みとして「即日退職OK」の制度は、定着率アップに大きな効果が期待できると私たちは思っています。

「いつでも辞められる」というのは心理的に安心感が大きいですね。退職代行サービス「EXIT」を制度として取り入れる企業も出てくるのではないかと思いました。本日はありがとうございました。

退職者側の視点で対策を

退職代行サービス「EXIT」を通じて、退職したくても退職できずにいた多くの人たちに手を差し伸べてきた創業者のお二人。「退職者を減らす対策」をテーマに、普段はなかなか知る機会のない退職代行者側の視点でお話をお伺いしました。

上司がどんなに理不尽でも将来に希望を持てた終身雇用時代は終わり、先行きが不透明でなかなか将来に希望を見出しづらくなった現代。その中で、社員に長く働き続けてもらうためには、今までのやり方を変える必要があります。その1つが「いつでも辞められる安心感」を職場の中につくること。もし、退職者が多いと感じているのであれば、対策の参考にしてみてはいかがでしょうか。