人事お役立ち

介護離職を防ごう!仕事と介護の両立ができる職場作りに必要なこと

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親の介護のために仕事を辞めざるを得ない――。

そんな介護離職は、総務省の統計では年間10万件にも上っており、社会問題になっています。また、厚生労働省の調査では、2025年の高齢者数は3,600万人に上り、そのうち650万人が介護を必要とするという試算が出ています。介護離職の件数は今後も増加することが見込まれています。こうした状況下において、介護離職を防ぎ、仕事と介護を両立させるために人事担当者は何をすべきなのでしょうか?

介護に関するコンサルティング事業を展開する株式会社wiwiwの寺西知也さん(コンサルティング部部長)へのインタビューを通し、その答えを探りました。

プロフィール:寺西知也

株式会社wiwiw コンサルティング部 部長。大学卒業と同時に国家資格である社会福祉士を取得し、介護ビジネス会社へ入社。現場での生活相談員業務や、拠点責任者を経験後、エリアマネージャーとして、直営店の介護施設運営、スタッフへの研修や指導の他、採用や人事の業務を担当。全国各地で、介護施設のテナント開発及び立ち上げ、新規事業やクライアント法人の介護事業立ち上げのコンサルティング営業を実践。その後、株式会社wiwiwに入社。100社以上の担当営業に効果的なwiwiwサービスやセミナーを通じたアクションプランの提案を行う他、介護関連のサービス開発をはじめ、人事や従業員、管理職向けのセミナー講師として「仕事と介護の両立支援」講演・研修を行う。厚生労働省委託事業「平成26年度仕事と介護の両立支援事業」(100社の参加企業のニーズ調査や集合研修・コンサルティング)ではプロジェクトリーダーを務めた。

介護支援の施策はトップダウンで

介護と仕事をどうやって両立させるかというテーマでお話を伺えればと思います。そもそも介護の実態を正確に把握することは可能なのでしょうか?

従業員の介護の実態は非常に見えにくい部分があります。その理由の一つは、介護に直面していることやそれに関する悩みを人事部に相談しないことが多く、また、会社が設けた介護の両立支援制度の利用者はごくわずかだからです。

そうした中で、従業員の介護の実態を把握するには、アンケート形式による調査が有効です。また、その実施が難しい場合は、人事データにおける年齢構成から介護に直面している従業員の暫定数を出すことで大まかな状況を把握することもできます。弊社の企業調査では、介護に直面しているのは全従業員の約7~8%。40歳以上に限定すると約10%以上の数字になります。

その他、上司と評価面談で従業員が直面している介護問題を把握する企業もあります。しかし、評価に関わることを恐れて自身が置かれている介護問題を切り出せないリスクもあります。できれば上司や管理職が日常的なコミュニケーションの中で従業員の介護問題を把握し、人事へつなげるような仕組みづくりが大切だと考えています。

解決すべき介護課題を明確にするためには、どのようなことが必要になるのでしょうか?

先ほど申し上げたアンケート調査や、介護経験者や制度利用者からヒアリングをして、そこから得たデータを分析する必要があります。分析する際は、男女別や年齢別、役職、雇用形態、勤務場所などの個人属性や、介護経験の有無、介護に直面する可能性の有無などについてクロス集計したり深堀するために回帰分析したりします。そうすることで、従業員が抱えている介護の課題を様々な視点から明確化でき、アクションプランにつなげやすくなります。

従業員に仕事と介護を両立してもらうために、介護の支援制度を作る会社はたくさんあります。制度設計をするうえでポイントになることを教えてください。

先ほど申し上げた実態把握後の分析結果を基に制度を作っていくのですが、従業員の「介護支援」を中心にするのではなく、「両立」という視点での制度設計が必要です。制度設計と合わせて、相談体制等支援策の運用も含めて仕組みづくりを考えることが重要です。

作った制度を周知するうえで、気をつけるべきことはありますか?

作った制度を社内に周知させるのは根気が必要です。なかなか制度が浸透しないというのが多くの企業の悩みです。気を付けるべきことは3点あると考えます。

1点目は、経営層を巻き込んで、本気で仕事と介護の両立支援の取り組みが大切だと従業員に伝えていくことが大事だと感じています。たとえば、経営者が「仕事と介護の両立を支援します」と宣言するのがいいかもしれません。そうすることで、介護者はもちろん、理職も仕事と介護の両立支援の重要性を自分ごととして認識し、自分自身から情報を取るようになるからです。

2点目は、管理職は、部下が介護に関する相談をしやすい雰囲気をつくることが大切だと感じています。相談しやすい雰囲気がなければ制度があっても相談できず、活用しないで終わってしまうからです。

3点目は、人事部が定期的に仕事と介護の両立に関する情報を提供し、自社にどのような制度があるのか活用事例も含めて案内していくことです。年1回程度の情報提供ではなかなか周知は進みにくいと思います。

トップダウンでやったほうがよいのでしょうか?

はい。女性の活躍推進や働き方改革もそうなのですが、やはりトップダウンでやったほうが効果的です。

一人で介護を抱え込んでいる従業員がいたら要注意

仕事の生産性を落とさず、介護と仕事を両立するにはどうすればいいのでしょうか?

介護に直面すると入院・入所の手続きや、介護保険の申請、親族や兄弟との話し合い、介護環境の整備の業務などやるべきことが多く発生します。

一時的に介護を担う場合は、食事作りや洗濯、掃除、見守りなども行う必要が生じるため時間的な制約が発生し、長時間働けないこともあるでしょう。同時に生活面では、夜間の介護などで、睡眠不足になりがちです。あとは週末に帰省して親の介護をしたりすると、本来であれば休息しなければならない時間がなくなってしまうので、精神的・肉体的ストレスが長期にわたって溜まってきます。

なので、生産性を落とさないためには、その負担を軽減できるかを考える必要があります。お勧めしている方法としては、親族や兄弟などでプロジェクトチームを組んで、できるだけ多くのメンバーで介護の課題に対応すること。身体介護や食事作りなど外部サービスに委託できるものは外注し、親の介護方針など、自分自身が決定しなければいけないことに注力するといいでしょう。介護は長期にわたるので、自分に合ったストレス発散の方法を見つけることも介護を乗り切る大切なポイントです。

介護をする人は、再就職が難しいとか、年収が落ちて生活苦になってしまうとか、あるいは介護をする人自身のメンタルケアが必要だったりとか、いろいろ悩みがあると思います。そういうことも会社がある程度気にして解決してあげることは必要になってきますか?

そうですね。介護離職する層は主に40代50代が中心。経営の中枢を担う人材の離職は企業にとっても大きな痛手ですので、そうした方々が介護に直面しても継続的に安心して働ける仕組み作りはすごく大切です。

介護をする人が会社に相談することはよくあると思うのですが、その窓口は人事部に置いたほうがよいのでしょうか?

人事に置く他、一部の相談内容を外部に委託してもよいと思います。というのも、相談者の置かれた状況や利用しているサービスについてアドバイスするには、介護保険など専門的な知識が必要になるからです。弊社も「wiwiwコンシェルジュ」という自社サービスを活用し、専門家の相談窓口を用意しています。

また相談窓口ということではないですが、介護問題に直面した際に、従業員が最初に相談するのは上司であることが多いため、上司は相談を受けた際に適切なノウハウを持っている必要があります。弊社の調査によると、介護問題に直面した約3~4割の人が、上司に相談していることがわかっています。

もう一つは、相談窓口を作ったとしてもなかなか利用しない人もいるので、窓口が利用しやすいように継続的に周知することと、相談しやすい職場を上司や管理職が作っていくことも必要になります。アンケート調査では、勤務先に相談できない人は3割以上にのぼります。

3割の人はどうして相談できないのですか?

様々な理由があると思います。育児と違って親の病気や家族関係なども含めた介護の悩み自体が話しにくい傾向があります。もう一つは、話すことで本来与えられるべき仕事が与えられなくなるリスクを考え、キャリア形成に不利だと思い込んでしまうこともあると思います。

最後に、仕事と介護の両立を支援する人事部の方に対してメッセージはありますか?

介護は育児とは異なった質での精神的・肉体的な辛さがあります。企業の中には介護に直面している方が一定数いらっしゃいますので、そういった従業員に対して少しでも前向きになれるような具体的な両立支援策を作っていただきたいと思います。介護に直面すると、多くの従業員は目の前の介護のことしか見えなくなってしまいます。しかし、介護は、一時はとてつもなく大変な時期もあれば、容態や環境が安定して落ち着いたりする時期もあるので、今は大変だとしてもその先を見せてあげることが重要です。長い目で仕事をしながら介護を続けられる、今の状況よりも少し先を見せてあげるような支援をぜひともしてほしいと思います。

介護離職を防ぐために

社会問題になっている介護離職。それを防ぐために、人事部には各種の制度を作るとともに、気軽に相談できる雰囲気を醸成することが求められています。冒頭で述べたように、厚生労働省の試算では2025年の高齢者数は3,600万人に上り、そのうち650万人が要介護になるという調査もあります。どの企業にとっても介護の問題は他人事ではないのです。特に親の介護の必要性が高まる40歳以上は、企業の中でも中核を担う人材であることが多く、その人たちの介護離職によるインパクトは大きなものがあります。本稿で示した内容を参考に、介護離職を防ぐための取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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