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「同一労働・同一賃金」は職場の活性化とダイバーシティの実現に寄与するのか?実現に向けてのポイント

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2015年9月9日参議院本会議にて、いわゆる「同一労働同一賃金推進法」が可決、成立しています。派遣労働者と派遣先の正社員との賃金格差の是正に向けて審議されていた、この「同一労働同一賃金」というテーマについて改めて考えてみましょう。

そもそも同一労働同一賃金って何?

同一労働同一賃金とは、言葉どおり、労働内容が同じなら賃金も同じ水準で支給するということ。 しかし、実際は会社員が全く同じ職務・職責・労働時間・労働内容であった場合でも、雇用契約の内容が違えば賃金水準が異なる場合がありえます。
とはいえ、契約内容が違うというだけで給与に差をつけるということは、使用者による恣意的な差別につながることからこれを許さず、労働の価値に対する報酬は同一であるべきだ、というのが同一労働同一賃金(均等待遇)の理念なのです。

もう一歩進んで、全く同じ労働内容ではなくとも、労働の価値が同一であれば賃金も同一であるべき、という考え方を「同一価値労働同一賃金」とも言いますが、実際はあまり使い分けられていないようです。理念としてはまったく同じですので、本稿でも、「同一労働同一賃金」とします。

同一労働同一賃金推進法の内容

第189回通常国会で成立した「同一労働同一賃金推進法」ですが、正式名称は「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」です。
法案の特徴としては、国の努力義務を規定したもので、企業や社員に直接規制をするものではありません。「同じように働いたら同じだけの賃金が得られるようにしましょう」という「同一労働同一賃金」の基本理念を示し、国の責務等を明らかにして施策を進めていくという目的が、法律の第1条に掲げられています。

法律制定前からの流れ

労働基準法

これまで同一労働同一賃金の考え方が日本になかったのか? というと、そうではありません。
1947年成立の労働基準法の4条は、「男女同一賃金の原則」として、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」と定めていますが、これが同一労働同一賃金を定めたものと解釈されています。条文中にははっきりと同一労働うんぬんと定められてはいませんが、これまでこの条文を根拠として同一労働同一賃金が論じられてきました。

裁判例――丸子警報器事件

パートタイム労働法制定のきっかけとなり、裁判で同一労働同一賃金(均等待遇)に触れたものとしては、いわゆる丸子警報機事件(長野地上田支判平成8・3・5)があります。

この事案では、原告である労働者Xらは、臨時工という非正規雇用でY社に雇われていました。雇用期間は2か月ごとの契約で、それを更新し続けるかたちで最長25年超の者もいました。

Xらは、ほかの正社員らと同じ勤務時間・日数で同じ内容の仕事に従事してきましたが、正社員よりも賃金が低かったので、「同一労働同一賃金の原則に照らして不当な差別だ!」としてY社に対して損害賠償を請求しました。

裁判では、「同一(価値)労働同一賃金の原則」の基礎にある均等待遇の理念について、賃金格差の違法性判断において1つの重要な判断要素として考慮されるべきであるとし、その理念に反する賃金格差は、使用者の裁量の範囲を逸脱したものとして違法となる場合があるとしました。

そして、Xらの業務と同じ組立ライン作業に従事する正社員との業務と比べて、作業内容や勤務時間等が同じであること・勤務年数の長さなども正社員と変わりがないこと等を指摘し、Y社が顕著な賃金格差のまま長期間雇い続けたことは、均等待遇の理念に違反する格差であり、違法であるとしました。

ただし、均等待遇の理念も抽象的なものであって、均等に扱うための前提となる諸要素の判断に幅がある以上、その幅の範囲内で待遇に差を設けることについては使用者側の裁量も認めざるを得ないとし、Xらの賃金が、同じ勤務年数の正社員の「8割以下」となる場合は、許容される賃金格差の範囲を越えて公序良俗違反となるとしました。
このケースではその後控訴され、東京高裁で和解が成立しました。

判決当時は「同一労働同一賃金なんて、実定法上の根拠がないじゃないか」「どうして『8割』という基準を作ったのか根拠が無い」などと批判もされたようですが、パートタイム労働者と正社員の間の格差を是正する議論に一石を投じた事案として、重要な裁判例となっています。
なお、本件のような差別が現在存在すれば、後述のパートタイム労働法により違法となるでしょう。

パートタイム労働法の成立

上記の歴史・裁判の流れを受け、同一労働同一賃金の原則を明記した、「パートタイム労働法」が施行されています。

具体的には、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」について、賃金や教育訓練、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別をしてはならない内容の規定が盛り込まれました。

ここでいう「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」は、正社員と同じように考えられる短時間労働者のことです。
①仕事の内容・責任が同一で、
②人事異動の有無・範囲が全雇用期間を通じて同一
という要件を満たす場合をいうとされています。
(平成27年4月1日現在)

このような流れで、パートタイム社員との差別については立法的な解決が図られてきましたが、実際に労働現場において差別が残っていると思われていますし、派遣社員と正規社員の差別については法規制が存在しない状態でした。

「同一労働同一賃金」という言葉だけ聞くと簡単なように思えますが、実際には非常にむずかしい問題があります。

そもそも、同一労働同一賃金を積極的に取り入れているEU諸国では、一般的に仕事に応じて賃金が決まる「職務給制度」を採用しているため、この考え方になじみやすいのですが、日本では長期雇用を前提とした「職能給制度」を採用していることが多く、キャリアや勤続年数で個々の賃金が変わってくるため、同一労働同一賃金になじみにくいという問題があります。

職務文責・職務評価の考え方

そこで、パートタイム労動者や正社員についても、賃金の決定に際して職務評価を取り入れ、仕事の価値を数値化する試みが有効とされています。

正社員でなくとも、それぞれの活躍ぶりに見合った公正な待遇を確保できるよう、職務分析・職務評価の実施が推奨されています。厚労省により平成27年7月に公表された「要素別点数法による職務評価の実施ガイドライン」をぜひ参考にしてみてください。

※厚労省HPより引用
http://www.mhlw.go.jp/topics/2013/07/dl/tp0605-1-guide1407.pdf

今後はパートタイム労動者のみならず、派遣労働者その他、多様な働き方をするすべての労働者について、それぞれの働き方や実績に見合った待遇を実施することで、
①労働者のやる気を引き出し、職場を活性化させることができますし、
②会社のイメージをアップさせ、優秀な人材を獲得するチャンスを広げます。
また、
③正規雇用のキャリアを広げることにもつながりますので、会社にとっても労働者にとってもメリットがある
と言えるでしょう。

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家頭 恵氏

アルバイト先ピザ屋の労働環境を疑問に思ったことから労働法に興味を持つ。現在は労働事件の他、債務整理・過払金請求、交通事事件・企業法務等、幅広い法律問題を手がける。

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