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評価制度を語る|360度評価は是か?非か?

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良い組織を作るために人事担当者がすべきことは、組織を構成する人材を得るための、採用や育成業務だけではありません。

せっかくの良い人材も、その働きを正しく評価し、見合った報酬を与えなければ、力を発揮することなく宝の持ち腐れになります。それを防ぎ、組織を円滑に回すために必要なのが「評価制度」です。

しかし、評価制度はその他の人事業務と比べて、指標や手段が多種多様で難しいところがあります。経営や人事側の意図が、一般社員になかなか伝わらないことも多々あるでしょう。

加えて、「完璧な評価制度はない」とよく言われるように、どの評価方式も一長一短です。適応を間違うと、組織にとって逆効果になりかねません。

そこで本連載では、各評価制度についての概要やメリット、そして適応にあたり注意すべき点などを解説していきます。第1回目である今回は、その中でも「360度評価」にフォーカスを当ててみましょう。

筆者:株式会社人材研究所 代表取締役社長、組織人事コンサルタント 曽和利光

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。また多数の就活セミナー・面接対策セミナー講師や上智大学非常勤講師も務め、学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。大企業から中小・ベンチャー企業まで幅広い顧客に対して事業を展開。

360度評価とは

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360度評価とは、上司だけが直属の部下を評価する一般的な評価方法と異なり、被評価者を取り囲む上司や部下、同僚、顧客など複数の人たち(これを“360度”と表現しています)によって評価を行う手法のこと。

上司からの一方向からの評価だけでは得られない多面的な評価を行うことで、より精緻で客観的な評価結果を得られるのが特徴です。

基本的には、周囲の人からつけられた評価点の平均を取ったり、上司の評価点は少し重みづけをするなど加重平均を取ったりして、それを最終的な評価点とします。

どんな人たちへ適応されることが多いのか?

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360度評価は主に、以下のような人たちを対象に用いられることが多いです。

① 管理職層

適応領域として多いのは、まず管理職層への評価です。彼らを評価する立場にある専務や社長クラスの方々はとても忙しいこともあり、管理職たちの日頃の行いが案外見えていません。そのため、評価の精度はあまり高くないことも多々あります。

むしろ管理職達をもっともよく知るのは、その下で働く部下たちであることも多い。だからこそ、管理職層の評価に360度評価が導入されるわけです。

管理職はリーダーシップが必要なポジションであり、人を惹きつける力が必要。そのため、部下が評価をすることは、管理職の評価方法としては妥当ではないかという考え方です。

② 専門職層

もう1つ多いのは、専門職層への評価です。専門職に就いている人たちの上司が、部下の専門性を完全に理解していないケースはよくあります。専門職は、専門職にしかわからないことも多々あるからです。

そのため、上司だけが自信のないまま無理やり評価をつけるのではなく、周囲の同じ専門職の同僚の評価を導入することで、精度や納得度を高めようとするケースがあります。

どんな目的で使われることが多いのか?

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360度評価は主に、以下のような目的で用いられます。

① 行動規範の評価

360度評価がよく使われるのは、行動規範(バリュー)についての評価です。これは、会社が社員に取って欲しい行動や体現して欲しい価値観を指します。

目標管理制度のように具体的な達成基準が明確に定められているようなものではないため、行動規範の実現レベルを評価する手法として、周囲からの評判を利用するというわけです。

成果がきちんと出た場合は成果評価でよいのですが、ちゃんと行動していても残念ながら成果につながらなかったというのはよくあること。そのため、周囲の目でプロセスを評価しようという意図もあります。

② 育成のための評価

評価とは、通常は昇進やそれに対応した報酬を決定するために行われるケースが多いですが、それ以外にも育成のために評価をすることもあるでしょう。

その際に、その人は何ができていて何ができていないのか、周囲から評価のフィードバックを得るために360度評価を用います。というのも、被評価者自身の自己評価は高くなることが多く、自分を美化するものだからです。

360度評価と合わせて、同じ項目で自己評価もしてもらい、そのギャップを比較するという方法も多く実施されています。自己評価と360度評価が異なることが、1つのショックとなり、内省を導くからです。

360度評価のデメリット「集合知が誤ることがある」

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360度評価は、「専門家の見解よりも、一般的な人々の意見や感覚をまとめたほうが、予測精度の高さや適応力の高さを示すことがある」という思想に基づいています。つまり、個々人よりも多くの人が考えたこと(集合知)の方が、より正確であるという考え方です。

ただし一方で、集団浅慮(グループシンク)と言って、優秀な個々人が集まって、愚かな判断をすることがあるというのも事実。集合知は常に正しいというわけではありません。集団による評価が優れた集合知になるのか、愚かな集団浅慮になるのかによって、360度評価の成否は大きく左右されます。

では、どうすれば集団での評価が優れたものになるのでしょうか?次項目から解説していきましょう。

360度評価を成功させる条件とは

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集合知や集団浅慮については様々な研究がありますが、集団での評価を正しく優れたものにする条件は、まとめると以下のようなものになります。これらをクリアしていれば、360度評価が上手くいく可能性は高いでしょう。

① 多様性があること

評価をしている集団が、似たような価値観や意見を持つ人々である場合、その評価も彼らの価値観を反映した歪みを持ち、客観性を欠くものとなってしまいます。

様々な多面的な視点があるからこその360度評価です。そうでない場合は、評価の高い人は過剰に高く、低い人は過剰に低くなるなどの悪影響が出てしまうでしょう。

② 凝集性が高すぎないこと

集団の凝集性とは、結束力が強いことや、組織内での内輪の評価を重視するような度合いを言います。これが高すぎると、周囲の意見に同調する圧力が生じたりして、評価が歪むわけです。

コミュニケーションの過剰さは、悪く言うと馴れ合いを生みます。そのため、みんなが同じであることを求めたり、全会一致を理想としたりするなど、考え方の偏りを生んでしまうでしょう。

③ 匿名性が保たれていること

周囲に明らかにすることなく、匿名性を保ったままで自分の評価を表明できる。自分がどんな評価をしたかについては被評価者には知らされないなど、評価を適切に集約できるシステムになっているかも重要です。

④ 十分な評価者数がいること

1人の被評価者に対する評価者数が十分でない場合、個々の評価者の評価特性(中心化傾向、厳密化傾向、寛容化傾向など)に引きずられてしまう場合があります。

どうしても人数を増やせないときには、多少恣意的にはなりますが、全員に低い点をつけまくっているような厳しすぎる評価者に対して一定のアラートを出し、評価を修正してもらうことも必要かもしれません。

⑤ 評価者として適切であること

また、人数は十分だとしても、本当に適切に評価をできる人かどうかをチェックすることも大切です。日々その人の行動を見ることができない立場だったり、その人の評価ができるレベルに達していなかったりする場合は、評価者として不適切かもしれません。

360度評価をする場合には、被評価者に対して、誰を評価者にするのかというのは大きなテーマとなってきます。上司や直属の部下は入れるとしても、横の部署の同じ職位の同僚はどうか、クライアントはどうか、仕事の上のつながりは間接的でもメンターとなっている人はどうか。

これには簡単な解はなく、各社で個々の事情を考えながら決めていく必要があります。

“目的”を考え、360度評価を導入する

360度評価は万能ではなく、効果的なものとするためには様々な条件があります。しかし、これは別に360度評価に限ることではなく、普通に上司が部下を評価する場合でも、それはそれでメリットもデメリットもあるわけです。

評価したい対象や、評価したい側面、目的が本稿にあるような360度評価に適したものであれば、本手法はきちんと効果を発揮してくれるでしょう。

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