人事お役立ち

人事なら知っておきたい「健康診断」の基礎知識 part2.
受けさせっぱなし厳禁!健診結果こそ人事が活用すべきリスクマネジメントの判断材料。

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前回のコラム「人事なら知っておきたい「健康診断」の基礎知識。健康診断の実施は会社の義務」では、一般健康診断の法的な根拠と、受診を拒む労働者についてどういった対策ができるかを考えました。
しかし、健診を受けさせたら会社としては義務を果たしたから、あとは個人で健康管理してね、と「受けさせっぱなし」で放置している会社はありませんか?
実は、事後措置までフォローしてこその健康管理です。社員の健康について、会社として何をすべきかどこまでやるか、今一度考えてみましょう

健康診断を実施する趣旨

そもそも会社が費用負担をしてまで労働者に健康診断を受けさせなければならない理由は、「使用者責任」を果たすためです。会社は人を雇って働かせ、利益を上げている一方で、使用者である責任を負っています。その「使用者責任」の一環として、従業員の健康や身体の安全を管理しましょう、と法律上の義務を課せられているのです。

会社に求められる受診“後”のフォロー

実は健康診断を受けた後の措置についても法律上の決まりがあることをご存じでしょうか。以下では、順を追って解説します。

■労働者への結果通知
健康診断は、受診してしばらくすると結果通知が送られてきますので、会社はこの結果を労働者個人へ通知する義務があります。

■個人健診結果表の保存(5年間)
健康診断の結果をもとに個人結果表を作成し、これを5年間保管する義務があります。なお、健診結果は当然ながら個人情報ですので、その管理や保存には細心の注意を払いましょう。

■健診結果を労基署への報告
労働者を常時50人以上雇っている会社であれば、所轄の労基署へ健康診断の結果を所定の様式で報告する義務があります。

■結果について医師からの意見聴取の実施
もし「要所見」「要再検査」など、異常が見つかった労働者がいれば、会社はそのまま就労させてもよいか、産業医などから意見を聴取しなければなりません。この就労判定には、①通常勤務が可能、②条件付きで勤務が可能、③すぐに休職、の3パターンがあります。

■事後措置の実施
医師などの就労判定①~③に従って、会社は適切な事後措置を実施します。

①であればそのまま問題なく勤務させることとなりますし、③の場合は休ませる措置が必要となります。②の「条件付き」というのが分かりにくいかもしれませんが、必要に応じて適切な措置を講ずることとされています。

「適切な措置」とは、ポストを変えたり、労働時間を短くしたり、出張の回数を減らしたりするなどの措置が考えられます。業種やその労働者の健康状態に照らして、医師などと連携しながら進めていきましょう。

■保健指導・受診勧奨の実施
特に就業する上で条件を付けなくてもよい場合でも、そのまま放置しておくと仕事に支障が出てくるケースもあります。健康な状態をキープできるよう、医師や保健師、衛生管理者の保健指導・受診勧奨を実施することが、企業の努力義務とされています。

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社内に産業医がいない場合の対処法

産業医の選任が法律上求められているのは、「常時 50 人以上の労働者を使用する事業場」です。この規模の事業場においては、産業医を選任して、労働者の健康管理などを行わせなければならないこととなっています。
しかし、50人未満の中小規模の事業場であれば、産業医の選任は「望ましい」ものの、必ずしも必須ではありません。そういった場合は、地域産業保健センターや産業保健推進センターに相談するのも一案です。認定産業医の活用について有益なアドバイスが得られるかもしれません。

健康診断を「受けっぱなし」のリスク

健康診断を受けさせただけでおしまいにしていると、後であらゆるリスクが生じる可能性があります。

例えば、健診で「要精密調査」とされている労働者に長時間労働を強いて、結果的に体調を崩してしまった、というケースではどうでしょうか。

まず、過重労働が原因で仕事に来られなくなったということで、会社としては労災を申請することになるでしょう。長時間労働を強いた事業場として労基署から厳しく追及され、労働時間の見直しなどの行政指導を受ける可能性もあります。

また、民事的なリスクについては、労働者本人から損害賠償を求められるケースもあります。そして何より、その労働者が働けなくなってしまった分、会社の業績が落ちるリスクがあるかもしれませんし、代替要因を補充するための手間やコストもかかります。
対外的にも、コンプライアンスがしっかりしていない会社であるとして、社会的な評判を落としてしまうかもしれません。

このように、行政のリスク・民事のリスク・人事上のリスク・社会的リスクなど、様々なリスクを抱えることになってしまいます。健康診断といえども、受けっぱなしで放置していると、万が一のときにこういった様々なリスクがあるのです。

社員の健康管理にかかる負担は「将来への投資」

健康は自己管理が原則です。特に、転職を繰り返している中途採用者であれば、会社側が一括して管理することはできませんから、個人レベルで意識を持って健康を心がけることが必要になってきます。

前回のコラムでも触れたとおり、健康診断にかかる費用については、健診の実施が会社に課せられた法律上の義務であることから、当然に会社が負担すべきものとされています。
その理由は、法律的に解釈すれば「使用者責任があるから」ということになりますが、社員の健康管理をしっかり行うことによって、会社にとってもメリットがあるのです。

メンタルヘルスチェックが義務付けられるなどの昨今の時流を見れば、社員のメンタルを含むヘルスケア全般について、会社には高い意識が求められているといえるでしょう。
その今だからこそ、社員の健康管理を「将来への投資」としてとらえ、今後の企業活動に役立てていきませんか。

  1. 健康診断にまつわる企業の義務
    □ 定期健診を実施する
    □ 労働者へ結果を通知
    □ 個人結果表を保存(5年間)
    □ 労基署への報告
    □ 結果について医師からの意見聴取の実施
    □ 事後措置の実施
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こばやし つかさ

元労働基準監督官。
事業場への指導経験と、2児をもつワーキング・マザーの視点から労働問題を中心に執筆活動を行う。

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