「パラレルキャリア」とは、ワークスタイルに2つの軸を持つこれからの働き方
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ひとりで複数の名刺を持つ「パラレルキャリア」。同じ会社や組織で仕事を続けるのではなく、身につけてきた知識や技術などを、社会でより広く活用したいと考える人に選ばれている制度です。従来の兼業・副業とは異なる「パラレルキャリア」とはどのようなワークスタイルなのかご紹介します。
「パラレルキャリア」とは?
パラレルキャリア(またはパラレルワーク)とは、経営学者P.F.ドラッカーが著書の中で提唱した考え方で、明確な定義がある訳ではありませんが、本業と並行して、ボランティア活動や自営業、別の団体・企業への所属など、第二の活動を実施することを指します。
パラレルキャリアのメリット
パラレルキャリアのメリットは大きく2つ。社会人キャリアで培ってきた人脈や知識・経験などを本業以外で発揮し個人が活躍する場を広げる、社会的承認を得る機会を拡大させるメリットと、「パラレルキャリア」の実施で得た、新しい人脈や知識・経験が本業へ還元され、本業で一層の成果を残すことができるスキルアップメリットがあります。
育成面における「パラレルキャリア」の機会と効果
- 人脈の拡大
- 多様なシチュエーションでの実務経験
- マネジメント力の向上
- タイムマネジメント力・コスト意識の強化
- 福利厚生・社会貢献活動に熱心であるとの企業ブランディング
パラレルキャリアと副業の違い
一般的に副業(副職)は、「収入の増加」を目的としたワークスタイルです。一方、パラレルキャリアは個人の自己実現やスキルアップ、社会福祉に主眼を置いた活動となり、「収入の増加」は必ずしも目的になるわけではありません。
企業として「パラレルキャリア」をどうとらえるか?
従来の兼業・副業と同様に禁止する企業もまだ多くありますが、「パラレルキャリア」を認めている企業でも、「仕事にプラスの影響を与えると判断できるもの」「仕事にマイナスの影響を与えないと判断できるものである場合に限り、認めている」というケースがほとんどのようです。
社員の「パラレルキャリア」を応援することは、ワーク・ライフ・バランス重視の考え方から、企業としても一種の社会貢献活動としてとらえることができます。さらに、社内教育だけでは得られない、社員のモチベーションアップとして、期待される部分もあります。
「パラレルキャリア」の導入事例
サイボウズ社の事例
グループウェアの「サイボウズ」には、ボランティアや業務にプラスと考えられる副業を認める制度があります。ある女性社員は、アフリカへの「青年海外協力隊」に2年間参加するために、ボランティア休暇制度を活用する「パラレルキャリア」を認められました。会社の「育自分休暇制度」という制度を利用して、いったんは退職し、帰国後にまた復職するというものです。また、専門職の社員の中には「サイボウズ」とIT関連の「ダンクソフト」、2つの企業に所属している例もあるのだとか。
サイボウズの代表である青野氏は「会社の中にないものを外の世界から引っ張ってきて結合できる、これこそがイノベーション。そう考えると、みんな僕の知らない世界で複業して、どんどんイノベーションを加速してくれればと思うくらいです」と語るなど、「パラレルキャリア」のメリットを感じているようです。
複数の団体や企業に所属することで、お互いのいいところを共有できるメリットがあるのでしょう。ボランティアの事例は通常の業務とは異なるプロジェクトへの取り組みとしてとらえられ、専門職の事例は協力関係にある他社の技術やアイデアを、自社への技術アップにつなげるというメリットが考えられます。
「パラレルキャリア」の導入アイデア
比較的取り入れやすい「パラレルキャリア」の導入例をいくつかご紹介します。
1.ボランティア休暇
ボランティアが目的のための有給休暇や、休職制度などがあります。
2.キャリアアップ支援制度
業務に直接の関わり合いのない資格(趣味も含む)でも、会社が認めたものであれば、受講料や受験料などを補助するというものです。
3.チャレンジ制度
スポーツや絵画など趣味を含む内容でも、大会やコンテストなどにあらかじめ挑戦することを会社に申請して、達成できた場合に賞金などを贈るというものです。
これからの「パラレルキャリア」
業界再編や経済状況の変化、ITの活用などによって、業務内容も多様化してきています。「仕事」が人生の大きな割合を占めることには変わりありませんが、それ以外の家庭や社会奉仕、趣味なども人生の大切な要素であると考えられるようになりました。
企業にとっても「パラレルキャリア」を充実させることは、社員の自己管理、特に時間管理が必要とされ、優秀な人材の育成につながるとも考えられています。
「パラレルキャリア」は、社内だけで業務をするという「会社人間」ではなく、社外でも活躍できる「社会人」としての視野や考え方、人脈を取り入れて、業務を活性化する可能性があります。企業の実態に合わせて「パラレルキャリア」を導入することで、採用から人材育成までの新しい仕組みを考えるのもいいのではないでしょうか。