人事お役立ち

競合企業への転職にまつわる倫理的問題
RIM とMotorolaの場合

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競合企業へ転職することが、就業規則のなかで禁止もしくは制限されているケースは少なくありません。しかし、リストラで職を失った社員が競合企業へ再就職するとしたらどうでしょうか?

自社の情報をもった社員が競合企業に転職することは企業にとって大きなダメージですが、職を失った社員が一日も早く就職先を見つけたいと考えるのは当然です。そこに倫理的ジレンマが発生します。このジレンマが企業同士の訴訟問題にまで発展した事例をご紹介します。

RIMとMotorolaの引き抜き合戦と倫理的問題

カナダの通信機器会社RIM(Research In Motion)は、現在のBlackBerry Limited。ブラックベリーのメーカーです。Motorola(現在は、2社に分割)も大手の携帯電話メーカーでした。この2社は、2008年の2月に、お互いの社員を引き抜くことや退職後まもない社員を勧誘することを禁止する協定を結びました。しかし、Motorolaが大規模なリストラを決定したことで事態は一変しました。

お互いに提訴しあう泥沼に

まず、2008年の9月にMotorolaがRIMを提訴し、5万ドルの損害賠償を要求しました。RIMがフロリダで40人のMotorola社員を引き抜いたこと受けての行動でした。

そして、2008年の12月にはRIMがMotorolaを提訴。お互いの社員を引き抜かないという協定が2008年の8月に終了しているにもかかわらず、RIMに転職しようとしているMotorolaの元社員に対し、転職できないようMotorolaが不法な圧力をかけているという内容でした。Motorolaは当時3000人のリストラを実施。RIMは解雇されたエンジニアを有利な条件で雇用しようとしており、裁判所に協定が無効であることを訴えたのです。

専門家が倫理的問題に頭を悩ませている間に、2社の争いはどんどん激しくなりました。

2社の争いからうまれた議論

RIMとMotorolaの争いは、引き抜き行為の倫理的問題について多くの議論を呼びました。シリコンバレーの人事アドバイザーとして知られるジョン・サリバン博士は、競合企業への引き抜きや転職には法的な問題は全くないという意見をもつ専門家のひとりです。博士は、その理由として社員が会社の所有物ではないことを挙げています。

サリバン博士は人事系情報WEBサイトERE MEDIAのなかで、競合企業から技術や経験のある人を雇用することは、経験のない人を雇用してトレーニングするよりコスト面ではるかに有利であると述べています。そして、企業は競合企業を憎むよりも、社員が他社に転職しないよう待遇を改善するべきだとアドバイスしています。

一方で、引き抜きや競合企業への転職を倫理的ではないと考える人や企業もあります。National Law Journalによれば、アメリカではITや金融業界を含むすべての業界で、引き抜きや競合企業への転職に関連する訴訟が急増しているそうです。

日本でも起こる、競合企業への転職にともなう問題

RIMとMotorolaのように大企業同士が争うケースはまれですが、日本でも競合企業への転職によって問題が起きた事例があります。例えば、東京都労働相談情報センターの労働問題相談室(労働相談Q&A)で紹介されているのは「同業他社に転職したら退職金が支払われない」というケース。企業側では、就業規則の特約で競業避止義務を定めていることを理由に、同業他社へ転職を決めた社員には退職金を払わないと主張しています。

しかし、企業が気をつけるべきは「退職後は労働者に職業選択の自由があり、一般的に競業避止義務を負うものではない」ということ。そして、「就業規則などの特約で競業避止義務を定めていた場合であっても、その適用の可否は具体的事情によって異なる」という点です。社員が明らかに裏切り行為をしていないかぎり、競業避止義務を犯しているとは認められません。実際に同じような事例で提訴され、企業が退職金を全額支払うことになった判例もあります。競業避止義務を定めていても、悪質な背信がない普通の転職であれば、効力はないと思ったほうがよさそうです。

まとめ:競合企業を憎むより待遇の改善を

競業企業に社員が転職してしまうことは、企業にとって大きな痛手です。研修やトレーニングによって育ててきた社員であれば、裏切られた気持ちになってしまうかもしれません。しかし、社員が転職するということは、なにかしら理由があるはず。サリバン博士がいうように、倫理的ではないと競合企業を憎むより、社員が他社に転職しないような待遇の改善を目指すべきでしょう。

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