退職勧告は未来への扉。気持ちよく送り出す退職勧告のコツとは
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企業には業績がよい時期もあれば悪い時期もあり、社員に対して退職勧告を行わなければならないこともあります。仲間との別れはつらいものですが、退職勧告を行う際は、送るほうも送られるほうも、お互いの未来が明るくなるように心がけることが必要です。退職勧告によってムードが暗くなってしまえば、退職する側はネガティブな意識で次の道を探すことになり、そのような状態では前向きな転職活動は難しいでしょう。また、残った社員にとっても、退職する仲間の未来を祝福できるようでなければ、社内の空気が悪くなってしまい、業績はさらに悪化の一途をたどることになりかねません。
解雇の種類と退職勧告
解雇とは、雇用者が被雇用者との間に結んでいる労働契約を解除することをいい、次の4つに分けられます。
- 懲戒解雇:企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分として行われる解雇。再雇用リスクも伴う最も重い処分。
- 整理解雇:いわゆるリストラ解雇。人員削減を目的とした解雇のこと。
- 普通解雇:労働者が雇用契約に定められた契約内容の履行ができない、あるいは不完全にしかできないという状況を理由にした解雇。
- 論旨解雇:会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇のこと。
退職勧告とはこのうち、整理解雇、懲戒解雇になる以前に、論旨解雇、普通解雇へと進める手続きのことをいいます。解雇形態によっては会社側、退職側双方にとってマイナスになることもあるので、退職勧告を行う場合はお互いによって良い形で退職・解雇するための歩み寄りが必要です。整理解雇・懲戒解雇は再雇用や再就職に関して条件がつき、双方にとってデメリットが多いもの。退職勧告はそのような解雇形態にしないための和解調停ともいえ、決してネガティブな側面だけではありません。
お互いの未来を心がけて
退職勧告を行ううえでは、退職者に対して会社の立場を説明し、退職者の今後の希望を聞くよう努めることが必要です。退職勧告はあくまで勧告であり、退職者側には断る権利があります。理解を得るためには、誠意を持って対応することが求められるでしょう。
退職勧告には揉めごとが起きがちなことが知られている以上、よい別れ方ができれば会社の評価を向上するチャンスともいえます。お互いの未来にとってプラスとなるチャンスを、小さな利害や感情的のもつれでマイナスにしてしまわないよう、人事側は特に配慮しなければなりません。
退職勧告はネガティブなことではないという認識を
退職勧告というとどうしてもネガティブなことと受け止めてしまいがちですが、これまでその社員がしてくれた仕事をしっかりと引き継ぎ、今後のキャリアパスの相談にも乗ってあげることが、ポジティブな未来につながります。
会社側も、退職する社員のために何か役に立てることがあれば、推薦状を書いたり、人や企業を紹介したりするなど、できる限りのことをするべきでしょう。また、退職する社員にとっても、前職の現場にリファレンスを取ることはしばしばあります。退職勧告を受けたからといって、ネガティブな姿勢ではだれも幸せにならないもの。まずはこうした認識を、双方で持つことが必要です。
新たな門出をよいものに
これまでともに働いていた社員が退職するということは、その社員の新たな門出を意味します。
退職勧告をしなければならない人事の立場は非常につらいものですが、門出を後味のよいものにするのも、悪いものにするのも当事者同士にほかなりません。現在まで働いてくれた、雇ってくれたという感謝の意を持つことが、お互いにとってよりよい門出を後押しするために最も大切なことなのです。