人事お役立ち

女性活用を目指す企業がマタニティワーカーのためにできること

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社会への女性進出および活躍が叫ばれている昨今ですが、それでも約6割の女性が、妊娠や出産を機に退職しているという実態があります。
中途採用した女性社員が妊娠に気付かず入社して、仕事をスタートしたものの妊娠がわかり対応に困っている、といったケースも耳にしますが、このような時こそ会社として真摯に対応することが求められている時代です。

とはいえ、設立間もない会社や小規模企業の中には、産休・育休の取得実績がなく、どう対応すべきか苦慮している、というところもあるでしょう。

ここでは、社員が妊娠した場合に会社に求められる「母性健康管理措置」を中心に、対応のポイントを見てみましょう。

Q「産前休業」はいつから?

基本的に、本人から特段の申出もなく通常の勤務が可能であれば、そのまま勤務してもらってかまいません。
労働基準法では、「出産前の女性について出産予定日の6週間前になれば、女性が休業を請求した場合、会社としては就業させることができないこと」とされています。ただ、これはあくまで本人の請求があった場合です。
ときおり「出産前日まで普通に仕事をしていた」という話を聞きますが、本人さえよければ当日まで仕事をしてもらうことも、まったく不可能とはなりません。

ただし、妊娠している社員から以下のような申出があった場合は、会社として一定の措置を講じなければなりません。

Q 出勤・帰宅時のラッシュを避けたいのですが、どうすればよいでしょうか?

このような申出に対しては、会社は時差出勤などの措置を講じる必要があります。これは、男女雇用機会均等法に定められる「母性健康管理措置」の1つであり、会社に義務付けられているものです。

たとえば、

  • 通勤ラッシュを避けるために30分~1時間程度の時差出勤を認める
  • フレックスタイム制度がある場合は、これを適用する
  • 通勤経路を混雑の少ないルートへ変更する
  • マイカー通勤など、より負担の少ない通勤スタイルへの変更を認める

などの措置が考えられます。

フレックスタイム制がない会社の場合でも、柔軟に時差出勤を認めるように調整すべきでしょう。女性の身体への負担がどの程度かは、会社の立地や本人の住居地、電車・バス等の通勤ルートの混雑具合によってまちまちですので、どういった措置が本人にとってベストな選択肢で、会社としてどこまで許容できるのか、よく話し合って決めるとよいでしょう。

また、必要に応じて勤務時間を短縮することも考えられます。その場合、短縮した時間に相当する賃金については、給与から控除することができます。

Q 残業が難しいので、定時で帰らせてもらえませんか?

妊娠中の女性社員本人から残業ができない旨の申出があった場合は、会社は残業をさせることができません。このほか、休日労働や深夜労働(夜10時~翌朝5時)についても、本人の申出があれば就業させることができないとされています。

もともと残業が多く忙しい部署に配属されている社員の場合は、それまで可能だった残業ができなくなることで他の社員への負担が大きくなることもあるでしょう。当然、会社としては他の社員の残業が急激に増えないよう、部署全体の業務量を抑えたり、スタッフを増員したりといった工夫が求められますが、これには限界があることも多いと思います。

負担のかかることが予想される他の社員らに対しても説明をして、理解と協力が得られるような雰囲気を作っておくことで、後々の産前産後休業・育児休業の取得についても理解が深められるでしょう。

Q 今の仕事は身体に負担が大きいので、他の部署に配置換えしてほしいのですが……

女性の身体にとって負担の大きい作業とは、たとえば以下のようなものが考えられます。

  • 重たい物を持ったり運んだりする作業/li>
  • 連続してたくさん歩かなければならない外回りなどの業務/li>
  • 全身運動をともなう業務/li>
  • 階段の上り下りが頻繁にある業務/li>
  • 腹部が圧迫されるなどの姿勢を取らなければならない業務  など

本人から他の軽易な仕事へ配置換えしてほしい旨の申出があれば、配置換えを検討しましょう。
たとえばデスクワークなど身体への負担の少ない部署を提案し、どの業務なら無理なく就業できるか本人の希望をヒアリングして十分に話し合います。そして、できれば本人の希望する部署へ配置換えできるように調整しましょう。

なお、本人が「今の仕事で大丈夫」と言っているにもかかわらず、意に反して他の仕事へ配置換えをすることは認められませんので、十分注意してください。

Q 重度のつわり(妊娠悪阻)や切迫流産と診断され、医師から入院または自宅安静を命じられました。休むことはできますか?
またこの間の給与はどうなるのでしょうか?

つわりは一般的に妊娠初期に見られる症状で、吐き気やめまい等を感じたり、食事がとれなくなったりします。ほとんど自覚症状のない人もいますが、中には日常生活に支障を来す程度に重度の妊娠悪阻となってしまう人もいます。

また切迫流産とは、妊娠初期の段階で出血が見られるなど流産しかかっている状態をいい、妊娠を継続するためには入院や自宅での絶対安静が必要とされます。

これらの症状で、医師の診断により3日以上の休業を余儀なくされる場合もあるかもしれません。こういったケースでは自己都合の休業として無給扱いとする会社が多いと思います。
日数が少なければ有給休暇扱いするケースもあるでしょうが、それが難しい場合は「傷病手当金」の申請を検討してみてはいかがでしょうか。1日あたり標準報酬日額の3分の2に相当する金額が傷病手当金として健保から支払われます。

女性社員とのコミュニケーションを円滑にするために

会社は労働者本人の体調に即した適切な措置を講じるために、どのような健康状態であるかを把握する必要があります。

そこで、主治医の指導内容を正確に理解するために「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用してみてはいかがでしょうか。これは医師が記入するもので、自治体が配布している母子手帳に書式が記載されていることが多く、またインターネットでもダウンロードして使うことができます。

デリケートでプライバシーに関わることだからこそ、本人に聞きづらいこともあるはず。医師による客観的な指導が書かれたこのカードを活用して、ぜひ女性社員との適切なコミュニケーションを図りたいものです。

まとめ

一般的に妊娠5か月を過ぎた頃から安定期といわれ、初期の段階に比べると流産等のリスクは低くなると考えられています。しかし、妊娠中の身体の変化は人それぞれで、突然体調が変化することもよくあることです。
女性からすれば、周囲に迷惑をかけたくないという気持ちが強かったり、上司が男性の場合は言いづらいこともあったりして、うまく助けを求められないことも多々あります。

本人の申出がない場合でも、
「時差出勤もできますよ」
「何か辛いことがあったら相談してくださいね」
などと、会社としてできることをあらかじめ伝えておくと、本人も話しやすい雰囲気になります。

女性社員の妊娠・出産は、大変デリケートな話題ではありますが、今後の産休・育休に向けて周囲の社員の理解と協力を得て進めていくことになりますので、「会社としてサポートする」という姿勢を示しておくことが大切といえるでしょう。

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こばやし つかさ

元労働基準監督官。事業場への指導経験と、2児をもつワーキング・マザーの視点から労働問題を中心に執筆活動を行う。

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