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クールビズはどこまで進化するのか?社員の身だしなみと法律を考える

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室温 28℃でも快適に過ごすことのできるライフスタイルとして、2005年に環境省が「クールビズ(COOL BIZ)」を提唱して以来、夏場の日本のビジネスシーンは軽装・カジュアル化してきました。

ノーネクタイ・ノージャケットでの勤務を認める職場も定着してきており、最近では一歩進んだ「スーパークールビス」と称して、アロハシャツやTシャツなど、より軽装なスタイルを認めるケースも増えてきています。

その一方で、社員のあまりにも行き過ぎた自由な服装や身だしなみに頭を悩ませる人事担当者もいるようです。こういった社員の身だしなみは、果たして個人の自由で済まされるものなのか、会社として何らかの処分の対象としてよいのか……。本格的な夏を迎える前に、今一度考えてみることにしましょう。

服装・身だしなみは、本来は個人の自由。しかし――

どのような服を着て、どのような髪型にするかなどは、自己表現の手段として本来は自由なはずです。個性的なファッション、明るい髪色、ヒゲ、長いネイル、ピアス。こういった行為は、「自己決定権」や「表現の自由」として保障されています。しかし、会社で勤務する場合も私生活とまったく同じに考えてよいものでしょうか?

行きすぎた身だしなみが企業活動に悪影響?

極端な例ですが、昨日までスーツ姿だった営業担当者が、ある日突然タンクトップ姿で両腕にタトゥをして現れたら、取引先や顧客はどう思うでしょうか? あるいは、食品を扱う業種の担当者が、不衛生な服を来て、無精ヒゲを生やしたとしたら……。

一般的に、企業活動に支障をきたす恐れがある場合には、会社としては従業員の身だしなみについて、就業規則を定めるか、業務命令を出して一定の規制を及ぼすことができると考えられています。

ではどの範囲まで規制ができるのか?

ある裁判の基準では、身だしなみの規制内容について、

「労働者の髪の色,形,容姿,服装などといった人の人格や自由に関する事柄については,企業の制限行為は無制限に許されるものではなく,企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内にとどまるべきであり,具体的制限行為の内容は,制限の必要性,合理性,手段方法としての相当性を欠くことのないよう特段の配慮が要請される」

とされています。

この文言だけではよく分からないので、結局はさまざまな事情から総合考慮になるのですが、噛み砕くと以下のようになると考えられます。

相当性および妥当性があるか

「一切の髪染め禁止」「ヒゲはすべて禁止」「服の色は黒に限る」といった包括的な規定は無効とされやすいでしょう。「カラーリングについては○号まで」「無精髭・奇抜なひげは禁止」「清潔で社会人としてふさわしい服装」等、ゆるやかな規制は有効とされやすいと考えられます。

私生活への影響の大小

髪型、ヒゲといったものについては私生活に直接影響することから、規制しにくいと思われます。一方、制服を定めることや、装飾品等着脱が容易なものを規制することについては、比較的認められやすいでしょう。

業務上の必要性

タレント、モデルといった職種については、取引先(クライアント/スポンサー)の要望に応じて髪型や服装を規定できるのは言うまでもありません。しかしながら、これは一種特別な例といえます。
取引先だけでなくエンドユーザー、すなわち消費者と接する職種、たとえば販売店員、外回り営業担当については、広い規制が認められやすくなると考えられます。一方、内勤事務、システムエンジニア等といった業務については、規制が認められにくいと考えられます。

社員への対応のポイント

業務命令に従わない社員に対して、使用者は懲戒処分ができるでしょうか。
就業規則に懲戒規定があることが前提ですが、業務命令に従わないことについては一般的に懲戒処分が可能です。

上司による口頭注意から始めて、改善がみられるまで話し合ってみましょう。「そのような服装はけしからん」と怒るのではなく、職場みんなで気持ちよく働くためのマナーとして重要であること、会社の企業活動に悪影響を及ぼしていることについて、根気よく伝えていきましょう。

それでもダメなら、業務命令違反として懲戒処分を科すことを検討してもよいでしょう。口頭注意の次には文書の戒告、それでも改善されない場合に減給処分などの処分を科します。このように、処分は軽いものから段階的に行うようするということと、さらには就業規則に段階的処分ができる旨の記載をしておくとよいでしょう。また、服装等の乱れで懲戒処分をするには、業務命令に違反した事実のみならず、実際に業務に与えている悪影響について説明できるようにしておく必要もあると思われます。

「服装・髪型の乱れ」だけを理由とした解雇は難しい

裁判例を見ると、

  • 髪を黄色に染めたトラック運転手が、髪色を戻す旨の業務命令に従わず諭旨解雇された事案(東谷山家事件)
  • 性同一性障害を有する社員(戸籍上は男性)が、女性の容姿で勤務しないよう求めた業務命令に反したこと等をもって懲戒解雇された事案(S社事件;東京地裁決定平成14年6月20日)
  • 就業規則上、口ひげを禁じられているハイヤー運転手が、ヒゲを剃るように求めた業務命令を無視したところ、事業所内に待機を命じられた事案(イースタン・エアポートモータース事件)

などでは、いずれも会社の処分は認められないと判断されています。

また、今回、取材したある弁護士事務所においても

  • 遊技店の従業員につき、髪型や服装規定に違反したとしてトラブルになって解雇された事例につき、解雇無効を前提に解決金が支払われた事案

が見られたということです。
今回の取材では、今のところ、直接的なクールビズについての裁判例は見つかりませんでしたが、上記裁判例からすれば、現状の法律はクールビズに寛容だとみるべきでしょう。

まとめ

働き方や価値観が多様化している現在、個人の服装や身だしなみについて会社がどこまで介入できるか、という点もケース・バイ・ケースで難しいものです。

大切なのは、いかに会社の風紀を保ち、皆が気持ちよく働くことのできる職場環境をつくり出すか、という視点。そして、こういった会社の姿勢が社外からの信頼獲得につながるといえます。そのためにも、個人の自由を尊重しつつも、ある程度のところで線引きはしっかりとしておくことが必要といえるでしょう。

いざというときの対応に困らないように、就業規則の服務規程を今一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

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