人事お役立ち

既存組織にとらわれない働き方「アグリゲーター」に見る、これからの企業に求められる人材とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
467358850

経営コンサルタントの柴沼俊一氏らによる著書「アグリゲーター 5年後に主役になる働き方」が注目を集めています。標題にもなっている「アグリゲーター」とは、アグリゲート(Aggregate=集める)できる、すなわち既存の組織にとらわれずに、「短期間に社内外の多様な能力を集め・掛け合わせて、徹底的に差別化した商品・サービスを市場に負けないスピードで作り上げることができる」職種・働き方だと定義されています。そこで今回は、アグリゲーターとはいかなる人材なのか、その能力を詳しくご紹介したいと思います。

なぜ今、アグリゲーターが必要とされるのか

柴沼氏らによれば、ITの発達するこれからの社会では、企業と個人との関係が劇的に変化し、明確なビジョンと行動力を兼ね備えた人材が、企業の枠を超えて活躍し、複数の企業で働くことも起こりえるとしています。こうした人材のモデルとして提唱されているのが、アグリゲーターです。

アグリゲーターの仕事は、企業が抱える課題に対して自らのビジョンを示し、社内外から人材やモノ、技術、企業などを適宜集めて、与えられたミッションを遂行することです。特定の分野における知識や技術に精通している「プロフェッショナル」の要素に加え、アグリゲーターにはプロジェクトの管理能力やビジネスの目利き力、ネットワークなどが必要とされます。

成熟した社会となり、人口減少の時代を迎える日本では、新製品の開発や海外への販路拡大など、さまざまな人を巻き込みながら新しいことを立ち上げる熱意と実力を兼ね備えた、アグリゲーターが求められているのです。

大企業の改革に外部から参加するアグリゲーターの働き方

アグリゲーターが必要とされる背景を把握したところで、実際にアグリゲーター的な人材として大企業で活躍されている人物をご紹介しながら、その働き方や資質を理解していきましょう。

老舗企業コクヨをアジア企業へと転換させた立役者

企業変革のプロフェッショナルである北条元宏氏は、アグリゲーターとしての資質を持ち、そうした役割を期待されて、コクヨのグループ戦略担当執行役員として入社、現在は同社の顧問として活躍されています。

北条氏は大学卒業後、三菱商事に入社、11年近く同社で働いたのち、米系戦略コンサルティング会社ベイン&カンパニー、コンサルティング会社A.T.カーニーを経て、2010年にコクヨ幹部としてリクルーティングされました。

コクヨは、オフィス家具や文具を扱う国内最大手の老舗企業であり、1991年までは順調に成長を続けていましたが、バブルの崩壊、リーマンショックを経て2009年までは右肩下がり、赤字による経営の危機に直面していました。そこで、M&Aも含めた成長戦略を手がけるプロとして北条氏に白羽の矢が立ったのです。

北条氏は日本の100年企業であるコクヨをアジア企業へと転換させるビジョンを描き、国内事業を再生して国内での過当競争に勝利しつつ、新興国における内需を獲得すべく、グローバルに事業を展開する成長戦略を立てて、実践していきました。

インドでの事業展開に見るその手腕

コクヨがグローバル企業として成長するための足掛かりとして、まずはインド・中国・ベトナムといったアジアの国でバリューチェーンを確立することを目指し、世界戦略拠点としてインドでの事業開始に取り組みました。北条氏は、現地の企業やインド人たちと喧々諤々の議論を繰り広げ、問題が生じれば電話で日本側と調整し、事業をゼロからイチにするところまでをほぼ一人で迅速に立ち上げます。

しかしながら、話が具体的に進むに従い、各部門のエキスパートを交えなければわからない問題や課題が生じるようになります。そこで北条氏は、例えばM&Aであればターゲットを決めて交渉するあたりから、商品のプロ、生産のプロ、流通のプロなど各部門のプロフェッショナルをチームに入れて状況を知らせ、いざ必要な段階になったときにすぐに参加できるようにする準備も怠りませんでした。社外だけでなく、社内の優れたプロフェッショナルたちを上手に巻き込みながら、事業の立ち上げから軌道に乗せるまでスムーズに実行したのです。

北条氏の考える、アグリゲーターに必要な資質とは

このような手腕を持つ北条氏が、アグリゲーターに必要と考える条件とは次のようなものです。

  • 1.ビジョンとゴールを明確に持ち、ゴール達成における課題とそれに対する仮説を立てて、アクションに落として実行してPDCAを回す、という流れを高速に動かすことができること
  • 2.自分の能力に対する自信や情熱を持っていると同時に、自分には何ができないかをよく知っていること

1のように、相当の経験とトレーニングが必要な能力に加えて、「IQとEQのベストバランス」ともよく言い表されているのですが、自分のできないことをよく知り、できないことについては各機能のエキスパートたちを巻き込んで、腹を割って膝詰めで話し合い、共通のゴールに向かって突き進んでいけることが重要なのだそうです。

北条氏が、「無駄なメンツと、無駄な遠慮、百害あって一利なし。だからみんなオープンにいこう」と常々言いながら、コクヨの優れたエキスパートたちと対等の関係で同じ目的を目指した結果が、業績にも表れました。

注目のバズワード、アグリゲーター

実際に企業を変革できるアグリゲーターとは、高い専門能力だけでなく人格的な成熟度も求められる、非常に稀有な存在だといえます。こうした、人を巻き込みながらリーダーシップを取れる人材は、新規事業の立ち上げや海外展開など、企業が新たなことを始めるには喉から手が出るほど欲しい存在です。外部登用するか内部育成するかも含め、アグリゲーターは今後もチェックするべき働き方の概念だといえます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連コンテンツ

おすすめのコンテンツ