【トラブル対策】人材の入社時に企業が受け取るべき書類とは

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プロフィール
株式会社MillReef 代表取締役 
社会保険労務士法人HABITAT 代表社員
榎本 あつし
平成17年に社会保険労務士として独立。専門は人事制度。
ABA(応用行動分析学)のアプローチに基づいた組織行動コンサルティングをメイン業務として行っている。

企業に人材が入社する際には、「事務手続きを行うため」、「トラブルを避けるため」など様々な目的で書類を多数受け取る必要があります。書類の一部を入社後や退職時の提出と定めている企業もありますが、トラブルを避けるためには入社時に揃えておくことが重要です。

今回は、人材から入社時にもらっておくべき書類について紹介します。

入社時に受け取るべき書類一覧

入社時に比べ、入社後になると書類をなかなか提出してくれなくなる場合があります。

人材は入社後には労働者になり、労働基準法が適用されます。会社の在籍者という扱いになるためです。労働法が適用されると企業はリスクを負うので、きちんと書類を揃えて、受け入れてよい人物かどうかを確認しておきましょう。

入社内定から入社時までに揃えておく必要のある代表的な書類は以下です。

  1. 雇用契約書
  2. 身元保証書
  3. 誓約書
  4. 秘密保持に関する誓約書
  5. 健康診断書(公的機関又は会社の指定した医療機関によるもの)
  6. 住民票記載事項の証明書(住民票可)
  7. 当年分の前勤務先の所得税源泉徴収票(中途採用者のみ)
  8. 通勤方法および通勤経路の略図
  9. マイカー通勤申請書
  10. 給与所得者の扶養控除(異動)等の申告書
  11. 免許その他資格証明書
  12. 給与口座振込申請書
  13. 年金番号(年金手帳のコピー)
  14. 雇用保険番号(前職被保険者以外に番号が明示されない方法にて提供を受ける)
  15. マイナンバー(本社担当者以外に番号が明示されない方法にて提供を受ける)
  16. その他会社が必要とする書類

上記の書類は、目的の違いによって以下のように大きく分けられます。

事務手続き上必要なもの

以下は、事務手続きを行うために必要な書類です。入社日時点に受け取っていなくても大きなトラブルにはなりにくいですが、あとから回収するには手間であるため入社日時点ですべて揃えておくことをおすすめします。

  • 当年分の前勤務先の所得税源泉徴収票
  • 通勤方法および通勤経路
  • 給与所得者の扶養控除(異動)等の申告書
  • 給与口座振込申請書
  • 年金番号
  • 雇用保険番号
  • マイナンバー

トラブルにならないために必要なもの

以下は、入社後や退職時のトラブルを避けるために必ず受け取っておく必要があります。企業のリスク対策になるので、入社日時点には必ず揃えておきましょう。

  • 雇用契約書
  • 身元保証書
  • 誓約書
  • 秘密保持に関する誓約書
  • 健康診断書
  • 住民票記載事項の証明書(住民票可)
  • マイカー通勤申請書
  • 免許その他資格証明書

上記の書類のうち、とくに重要なものに関して起こりうるトラブルや注意点を紹介します。大きなトラブルの引き金になる場合もあるので、必要な理由・目的を含めてご確認ください。

雇用契約書

雇用契約書は、「給与が支払われない」、「休みがとれない」、「契約時点の業務内容とちがう」などの労務トラブルが起こった際に必要になります。明文化された書類がないと、後から言った言わないの水掛け論になる可能性があります。法律上必須の書類なので、条件をしっかりと明記した雇用契約書を受け取り、保管しておきましょう。

契約書ですので、入社する人材のハンコまたはサインが必要です。会社と本人の双方が雇用契約書を保管しておきましょう。

身元保証書

身元保証書を受け取る目的は、本人の横領や故意の損害による賠償責任を明確にすることです。たとえば人材が入社後にお金を持ち逃げしてしまい、本人に連絡がつかない場合には、身元保証者のところに連絡します。

注意が必要な点は、身元保証書の有効期間の上限が5年ということです。有効期間を過ぎてから人材がお金を持ち逃げした場合、身元保証書は無効になってしまいます。

また、2020年の法改正で、賠償額の上限を身元保証書に記載することが必要になりました。賠償額の上限は起こりうる損害に合わせてバランスをとるとよいですが、200~300万円に設定している企業が多いです。お金を扱う仕事など、リスクが高い場合には高めに設定することを検討しましょう。

賠償額の上限が記載されていないと身元保証書が無効になるので注意が必要です。

誓約書・秘密保持誓約書

誓約書には、守ってもらいたい服務規律など、最初にもらっておきましょう。

また、秘密保持に関する誓約書は、「業務時間外や会社を退職した後であっても情報漏洩をしてはならない」と約束するための書類です。退職時に受け取る企業もありますが、必ずしも円満退社とは限らないので注意が必要です。損害賠償の金額にも影響するため、入社時に受け取っておきましょう。

健康診断書

入社日の前後3か月以内に受けた健康診断書でなければいけません。唐突に企業が労働基準監督署の調査を受ける場合がありますが、その際には働く人の健康や安全が重要視されます。

入社時に健康診断書を人材から受け取っていないと、義務違反になります。そして、法律違反の勧告がきます。健康診断を受けていないことが原因で健康上の問題が起きた場合には会社の責任になりますし、人材本人にとっての大きなトラブルにもなるので必ず受け取っておきましょう。

住民票記載事項の証明書

住民票の提出を企業が人材に要求することはできないので注意が必要です。ただ、住所のみを確認するために住民票記載事項の証明書を企業が人材に要求する場合には問題ありません。人材が住民票による住所確認を了承した場合には、住民票を提出してもらってもよいです。身元確認のための重要な書類なので、必ず受け取っておきましょう。

無断欠勤や会社の金品の持ち逃げなどのトラブルがあった際に、住所確認を正確に行っていないと人材が虚偽の住所を伝えることもできてしまうため、注意が必要です。

マイカー通勤申請書

交通事故は起こる確率の高いトラブルの一つです。任意保険のコピー提出は必須にしておきましょう。人材が任意保険に加入していない場合や、免許停止中、大きな事故を起こした場合には人材本人は賠償することができません。もし、この事故が通勤中であった場合には、通勤を認めていた会社の責任になるので人材の任意保険加入状況の確認が必要です。

また、レジャーの名目で保険に入っている場合に、通勤中に事故を起こしてしまうと保険がおりません。自転車通勤であっても事故の損害賠償リスクはあるので、自転車保険に入っておく必要があるでしょう。一般的に年間で6000円程度なので、500円程度の自転車通勤手当を支給し、そのお金で自転車保険に入ってもらう企業もあります。

マイカー通勤申請書には、通勤経路をしっかりと書いてもらう必要があります。横道にそれていて事故を起こしてしまうと、労災がおりません。また、健康状態のチェックリストを作成し、問題がないことを会社が確認したうえで通勤を許可したことを証明できる状態にしておくことが重要です。

免許その他資格証明書

資格が必要な職種の場合には必須の書類です。無資格の人材が有資格者として業務を行っていた場合には、会社の責任になります。確認をおろそかにしないようにしましょう。

まとめ

労働基準監督署などの就業規則のひな型に記載されているため、入社後2週間以内に書類を提出すると就業規則に記載している企業が多いです。しかし、入社後にはなかなか提出してもらえないケースが多くみられます。

入社後には労働者になり、企業と人材の関係が変わるため、リスクが大きく異なります。リスク対策の一つとして、書類は入社時に受け取るように就業規則の見直しを行ってみてはいかがでしょうか。入社前に受け取った書類を確認してからの入社としておくことをおすすめします。