これからの強い組織は「サーバントリーダー」がつくる!注目のリーダー像とは?

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プロフィール
NPO法人 日本サーバント・リーダーシップ協会
理事長
真田 茂人
早稲田大卒後、リクルートや金融機関などを経て2001年に(株)レアリゼ設立。企業の幹部教育や組織開発を手掛け2004年に日本サーバント・リーダーシップ協会設立。

労働人口の減少に伴い、雇用の多様性や働き方の変化が著しい現代社会において、従業員エンゲージメントを高めつつ企業が成長していくためには、リーダーの舵取りが重要であることは言うまでもありません。

日本企業には、支配型のリーダー像が定着しており、未だに多く存在していますが、これからの時代に適したリーダー像として今「サーバントリーダー」が注目されています。

サーバントリーダーとは、ロバート・グリーンリーフ氏が提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という哲学からなるリーダー像です。

そこで今回は、日本サーバント・リーダーシップ協会で理事長を務める真田茂人さんに、サーバントリーダーの特徴や必要性などについてお聞きしました。

リーダーは支配型から支援型へ

サーバントリーダーとはどのようなリーダーなのかをお聞かせください。

一般的に多くの方が想像されるリーダー像というのは、剛腕でありグイグイと周囲の人たちを引っ張っていくイメージだと思います。それに対して、サーバントリーダーは、自らが先頭に立って引っ張るのではなく、人の力を引き出しながら組織やチームとしての目的や目標を達成していくリーダーです。

つまり、リーダーが主役でメンバーは脇役というような従来の支配型リーダーとは違い、主役は自分ではなくメンバーであり、彼らが活躍できるように環境をつくりサポートしていくのがサーバントリーダーといえます。

多くの企業が未だに支配型のリーダーシップである背景には何があるのでしょうか。

いくつかの理由があると思いますが、日本企業において新入社員は当たり前のように支配型のリーダーシップを実践する上司や先輩から学び、自分が管理職になると同じ事を繰り返すからです。このように先人をモデルにした育成により、リーダーとはそういうものだという固定概念が生じているといえます。

また、海外の文化を取り入れているグローバル企業などの場合、サーバントリーダーは常識的になっていますが、国内の中小企業は商習慣的に既存のやり方でもまだ通用するため早急に組織内を変革する必要を感じていません。支配型リーダーをサーバントリーダーにシフトするには、意図的に変える努力や覚悟が必要です。

しかし、まだそこには至っていないというのが現状です。

そのような企業がある中でも、ここ数年でサーバントリーダーが注目されているのはなぜですか。

近年サーバントリーダーが注目されているのは、ビジネスの在り方と雇用関係の変化が大きく影響していると考えられます。

支配型リーダーシップというのは、会社のトップや上司という組織や部門のリーダーがすべて正しいという前提で成り立っています。そのため、「リーダーの言う通りにやればいい」「余計なことは言わなくていい」などの絶対的な上下関係のもと、経験値=正解値と証明できる結果が出せていたので、ビジネスの在り方としても論理的に間違いではなかったのです。

しかし、社会全体が大きく変化し、これまでの経験だけでは失敗することが頻繁に起きています。こうした常識の通用しない事態に対して、「これはまずい」と迅速かつ柔軟に情報収集ができる企業は、サーバントリーダーの考え方をいち早く知り、組織内に取り入れています。

そして、終身雇用制度が崩壊しつつある中で、雇用に関する意識の変化によってサーバントリーダーに注目するケースもあります。

これまでは、終身雇用が当たり前であり、転職をリスクと考える方が多かったので支配型のリーダーシップが通用していました。しかし、人材の流動化が進み転職や副業に対するハードルが下がったことにより、離職率を問題視する企業が増えているのです。

サーバントリーダーの本質

少しずつ認知されているサーバントリーダーですが、これからの社会における必要性についてお聞かせください。

これまでの社会は、個人よりも企業の論理が優先されてきました。なぜなら、企業側の指示に従わないとクビになってしまうため、従わざるを得なかったわけです。

ところが、今は柔軟な雇用の在り方や、テレワークをはじめとした働き方の多様化により、個人の人生観や価値観が優先される時代。企業の論理だけで経営するには限界がきています。

この先、企業が存続し続けるために大切なのは、リーダーの個人的な欲求や満足度を満たすことではなく、会社としてのミッションやビジョンを達成することであり、事業を継続させること。その方法論として、個人を尊重して生き方や多様性を認めつつ、メンバーが活躍しやすいようにサポートすることで企業の目的や目標の達成に導くことができるサーバントリーダーは重要な存在といえるでしょう。

今までは、リーダーとしてのカリスマ性も注目されてきましたが、サーバントリーダーにはカリスマ性は不要なのでしょうか。

カリスマ経営者とサーバントリーダーは、必ずしも相反するリーダーシップではありません。例えば、カリスマ性のあるリーダーの中には、エゴや独善的な考えをもつ方もいれば、メンバーのことを第一に考えている方もいます。

前者のリーダーは、いくらカリスマ性があったとしても、これからの時代に合わないので苦戦を強いられるでしょう。一方、後者の方はサーバントリーダーの要素を兼ね備えているので、時代と調和した経営が期待できます。

日本を代表する某アパレル会社のカリスマ経営者も、数年前からサーバントリーダーシップに注目し、「上層部が主役ではなく、メンバーである社員一人ひとりが主役である」ということを役員や管理職に繰り返し発信しています。

今までのリーダーシップに限界を感じた時、事業を計画的に発展させるためにリーダーとしての在り方を変えられるかどうかが、これからの時代を生きる経営者に問われる重要なポイントです。

サーバントリーダーに必要な資質などはあるのでしょうか。

サーバントリーダーには10の属性があると言われています。

  1. 傾聴(Listening)
  2. 共感(Empathy)
  3. 癒し(Healing)
  4. 気づき(Awareness)
  5. 説得(Persuasion)
  6. 概念化(Conceptualization)
  7. 先見力、予見力(Foresight)
  8. 執事役(Stewardship)
  9. 人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people)
  10. コミュニティづくり(Building community)

実際に、支配型リーダーからサーバントリーダーに変わったことで組織に好影響を与えた事例などがあれば教えてください。

ある人材派遣会社の事例があります。その企業は、急成長したことで一気に中途入社が増え、個々の売上が重視されたことで結果さえ出せばいいという企業文化になってしまった。社員の離職率は悪化し、派遣登録者からもクレームばかりが届く状態。その中でも、特に成績が悪く、残業の多い支社がありました。

原因は、気が短く結果が出ないと怒鳴り散らす支社長の存在です。メンバーは支社長の顔色ばかりを伺い、どう言い訳するかを考えてばかりいる状態。そのため、残業は増え結果が出ないという悪循環が生まれていました。そこで、リーダーの在り方について考えてもらう機会をつくったのです。

その結果、この悲惨な状況を生んでいるのは部下ではなく自分自身だと気付くことができました。それ以降は、副支社長に目先の業務などは権限を渡すようにして、支社長はサポートや支援にまわり、中長期的な視点で経営に注力するように変更。まさに、サーバントリーダーシップに切り替えたのです。

すると、部下たちは支社長の顔色を気にするのではなく、お客様や登録者への対応に集中できるようになり、3ヶ月ほどで売上は30%近く伸び、残業は減少。会社にもクレームではなく感謝状が届くようになり、経営危機を回避することができています。

新時代にフィットするリーダーシップ

サーバントリーダーは周囲やメンバーを主役にするため、マネジメントにも工夫が必要だと思うのですが何かポイントはありますか。

支配型リーダーに多いのは、マイクロマネジメントです。

部下の業務に対して過剰に干渉して指示を出す。一方で、企業のミッションやビジョンなどについてはあまり浸透できていません。細かい業務の進め方や、アポイントをとるトークテクニックなど、重箱の隅をつつくようなマネジメントでは改善されないでしょう。

もちろん細かいチェックも大事ですが、まずは企業理念やフィロソフィを理解したうえで共感してもらうことがポイントです。

まず方向性を示してから任せることで、メンバーは自由度高く動けるようになるのですね。

注意が必要なのは、サーバントリーダーシップ=優しいリーダーシップという勘違いをしないことです。サーバントリーダーシップの“サーバント”とは「奉仕する」という意味をもち、奉仕する対象はミッションとメンバーの2つあります。

しかし、企業の果たすべきミッションには触れることなく、メンバーにだけ奉仕するようになるとただの優しい人になってしまう。

ただ、どれほどミッションが素晴らしいものでも伝えられていなければ、自由度の高さだけがひとり歩きし、エゴ的なメンバーが増えるだけです。まずは、しっかりとミッションを伝えて共感の接点を導き出し、達成に向けてみんなで取り組むこと。

そうすれば、優しいだけのリーダーから、メンバーのやる気を引き立てるリーダーシップを発揮できるでしょう。

サーバントリーダーシップは、ある程度キャリアのある人を対象に身に付けた方がよいのでしょうか。

サーバントリーダーシップに限らず、リーダーシップは管理職限定ではないので、新入社員などのキャリアが浅いメンバーに対しても研修などを実施することが可能です。そうすれば、若手の社員などが早い段階から「サーバントリーダーとして何ができるか」という自問自答に対して考えられるようになるでしょう。

実は、中学校の授業でもサーバントリーダーシップの概念を教える機会があり、世の中の人たちとの関わり方や、どう貢献していくかをテーマに授業を行っています。

リーダーシップの原点は自ら何かをすることなので、例えば道にゴミが落ちていたら、率先して拾うことも立派なリーダーシップです。

これからの社会において、サーバントリーダーが増えることで、どのような好影響をもたらすとお考えですか。

これからの時代は、企業自体が社会的な存在であることを強く求められます。以前は、利益さえ出せれば良いという風潮もありましたが、今は利益が出ても社会的にズレが生じていたら一斉に叩かれてしまう可能性だってあります。ましてや、メンバー全員がエゴむき出しという組織では、社会的な存在になることは難しい。

世のため、周囲の人たちのためにという気持ちのあるメンバーが集まれば、社会的な規範を守った集団へと成長できます。そんな、サーバントリーダーシップの精神を持っている組織は、変化の激しいビジネスの世界でも通用する強い会社になるでしょう。

メンバーが命令ではなく心で動くリーダーシップ

リーダーは目立つ存在というイメージをもつ方が多いように、これまでの日本企業は支配型のリーダーシップが当たり前でした。

中には自己中心的な考え方をもつリーダー像に対して嫌悪感を抱く人も少なくありません。しかし、会社としての目的や理念、そして事業を通じて世の中に貢献したいという想いを叶えることがリーダーのミッションであるはず。売上や利益は会社を存続するうえでもちろん必要不可欠ですが、より良い世の中にするためのアイデアや誰かの悩みを解消するビジネスなど、社会に好影響を与えているという実感が誇りを与えてくれます。

この機会に、支配して動かすのではなく、メンバーが心から動き出す支援型のサーバントリーダーにトライしてみてはいかがでしょうか。