帰属意識の意味をきちんと理解して組織づくりを出来ていますか?

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「個」が尊重される時代に移り変わっている今、会社への帰属意識が薄れていると言われています。しかし、少子高齢化による人材不足が進む中、会社を成長させ事業を拡大していくためには、社員の帰属意識を醸成し続ける必要があります。

そこで、より強い組織づくりに活かせるよう、帰属意識について解説していきます。

帰属意識の意味を改めて理解する

帰属意識とは、「ある集団に属している、またはその集団の一員であるという意識や感覚」を意味する言葉で、元々は心理学用語のひとつでした。

ここで言う集団とは、家族や会社、学校、宗教、自治体、さらに国や民族など大小あらゆる単位で用いられます。帰属意識が高い人は、これらの所属する集団に対して一体感を持っており、愛着や興味・関心などが強いことが特徴です。

そのため、会社などの集団においては、目標達成に向けた行動や責任をもち、所属し続けたいという気持ちが強い人材といえます。

帰属意識が低いと起きる問題

  1. 「社員の定着率が悪化する」
  2. 「モチベーションが低下する」
  3. 「コミュニケーションが減少する」

企業理念や経営方針に対する共感や、扱うサービスや商品などへの愛着により、会社への帰属意識は生まれます。

もちろん、担当する職務や仕事内容の違いによって、どこに帰属意識が向かうかは異なりますが、自分の働きによって組織を支えたいという気持ちや、仲間と協力し合って仕事をしているという感覚を持っている状態は、会社への帰属意識があると言えるでしょう。

しかし、帰属意識が高い人もいれば、帰属意識の低い人やほとんどない人も当然います。では、帰属意識が低いと、どのような問題が起こるのかを見ていきましょう。

その1:「社員の定着率が悪化する」

会社という集団に所属したいという意識が低くなれば、当然働き続ける意味を失い、辞めることを考えるようになります。仕事に対しても意欲が湧かない日々が続けば、躊躇なく他の環境を求めて退職を選択する社員も現れるでしょう。

また、帰属意識が低い社員は、組織を良くしていことにも興味がない状態なので、業務改善などの変化に対して否定的であり、周囲へもマイナスの影響を与える存在になってしまいます。

負の感情は連鎖することもあるため、組織全体の定着率が低下するだけでなく、帰属意識が高い既存社員への悪影響も懸念されます。

その2:「モチベーションが低下する」

集団を構成する一員としての帰属意識が低くなることで、会社や組織にとって「自分は必要ない存在」だと感じるようになってしまいます。その状態が続くと、会社や事業内容に愛着がなくなり、生活のために仕方なく働いているだけという非常にネガティブな思考に陥ってしまうのです。

繁忙期に周囲と協力し合ってピンチを乗り越えたり、会社や部署の目標達成がみえてきたのでみんなで追い込んだりと、組織全体が盛り上がる瞬間でさえも「自分事」として捉えられず、モチベーションは必然的にどんどん下がっていきます。

業務効率も生産性も低下し、帰属意識が高い人に嫉妬して反発する社員が現れるケースも珍しくありません。

その3:「コミュニケーションが減少する」

帰属意識が低下することで、社内の人間と関わることも億劫になり、コミュニケーションが不足していきます。特に、経営層や上長など目上の役職者とのコミュニケーションが希薄になると、社員の帰属意識はますます低下してしまうため注意が必要です。

また、テレワークやWEB会議などの導入が進む昨今、これまでのような対面による直接的な会話が極端に減っています。こうしたアナログからデジタルへのシフトも、コミュニケーション不足を招き、帰属意識を低下させている要因の1つと考えられます。

働き方改革と共に、会社と社員との接点をどうつくっていくかを考えることも、これからは重要になるでしょう。

帰属意識を高める方法

  1. 働き方や福利厚生の改善
  2. 社内コミュニケーションの活性
  3. インナーブランディングを実践する

帰属意識を高める取り組みは、会社や組織が成長するうえでとても重要です。社員それぞれの会社に対する興味や関心が高まり、組織の一員としての意識が強まることで、社内の活性化に繋がり、組織全体の雰囲気が良くなれば採用においても企業の魅力として求職者にアピールできるでしょう。

また、帰属意識がある社員は自尊心も高いことから、新入社員の教育プログラムに帰属意識を高めるカリキュラムを組む企業もあります。

ここでは、帰属意識を高める方法と、それによって得られる効果をお伝えします。

方法1:働き方や福利厚生の改善

デスクの配置や動線など、社員が仕事をしやすいオフィス環境を整えることは、会社が社員に帰属していることを伝える上で有効ですが、これからは、リモートワークやサテライトオフィスの活用など、働き方の多様化を受け入れることが重要になります。

社員一人ひとりの事情に応じた働き方を柔軟に取り入れることで帰属意識の向上が期待できるでしょう。

また、社員の私生活への影響が大きい福利厚生を充実させることも帰属意識を高めるうえで重要な要素です。単純に待遇を増やすのではなく、今いる社員たちにとって必要な待遇を考えるなど、会社ごとの状況に合わせたオリジナリティが大切。

そうすることで、「会社は自分たちのことをしっかり考えてくれている」と社員たちにも想いが伝わります。

方法2:社内コミュニケーションの活性化

社内の人間関係を向上させることは、帰属意識を育むためにとても重要です。そのため、コミュニケーションの活性化を目的とした社内イベントの開催や、誰もが気軽に話せるミーティングなどの場づくりを積極的に行うようにしましょう。

また、一般社員と社長を含む経営層とのコミュニケーションが円滑に図れることで、さらに帰属意識を高めることが期待できます。これは、会社のトップが一社員の意見にもしっかり耳を傾けてくれるという信頼が育まれるため。

多くの経営者は「従業員を守る」という責任をもちつつ、理念やビジョンを描いて会社を経営しているので、その想いを言語化して、頻繁に社員へと共有できる場や手段を多く持つようにすることがポイントです。

方法3:インナーブランディングを実践する

帰属意識を生み出す要因のひとつは、自社や事業への誇りです。そのため、企業のブランド価値や企業理念などを社員に共感してもらい、浸透させていくことを目的とするインナーブランディングを実践することは、とても有効な方法のひとつと言えるでしょう。

組織が掲げる理念に共感できれば、自分たちの仕事が社会の役に立っているという自信に繋がります。このミッションやビジョン、そして事業の価値や顧客の声などを発信して浸透させる手段は、定期的に行う会議や朝礼の場を活用することはもちろん、社内報などを活用して形に残すことも一つの手です。

帰属意識を高める効果

  1. 生産性と協調性の向上
  2. 従業員エンゲージメントの向上
  3. 心理的安全性と組織力アップ

効果1:生産性と協調性の向上

社員の帰属意識が高くなると、会社のミッションと向き合い、自らのポジションに求められる役割を担うため主体的に行動できるようになります。

自発的な思考になるので、やらされている感や損得勘定で働くのではなく、「組織の一員として成長したい」「市場価値の高い仕事をしたい」と本心で思っている状態です。

物事を受け身で捉えることがないので、目標達成意欲も高く、周囲と協力し合うことによるコラボレーションが活性化し、組織全体の生産性向上に好影響を与えるでしょう。

効果2:従業員エンゲージメントの向上

帰属意識が高まることで、単純に稼ぐことだけを目的とした働き方ではなくなります。すると、組織のミッションやビジョンを実現するための努力を惜しまず、自分が属する部署などの職場環境をより良くしようとアイデアを発揮する思考が芽生えるのです。

また、会社や組織に貢献したいという「エンゲージメント」も向上するでしょう。この状態になると、組織の一員としての存在価値をしっかりと感じられるため、仕事で困難が生じても退職を選択するのではなく、どう解決するかを相談するというプロセスになり、社員の定着率向上に繋がります。

効果3:心理的安全性と組織力アップ

帰属意識が高くなることで、組織との心理的な距離も近くなります。同僚だけではなく、先輩社員や上長、経営層ともフランクに会話ができるような関係性を築けることにより「心理的安全性」も得られるようになるでしょう。

この心理的安全性が得られることで、例えばアイデアや意見が組織に反映されやすくなり、業務改善やチャレンジングな仕事への取り組みが増えます。つまり、イノベーティブな組織づくりが可能になるということ。

また、社員一人ひとりが安心して働くことができると、個々がもつ能力を最大限発揮できるようになり、会社全体の組織力アップに大きく寄与するでしょう。

帰属意識を高めるために人事ができること

世界最大手のコーヒーチェーンであるスターバックスでは、人事施策としておよそ2ヵ月間の研修を実施して、企業の歴史からビジネスの本質、フィロソフィなどを浸透させています。

こうした人材開発にかける時間を濃くすることで、ミッションを軸とした人材育成が可能になり、帰属意識が高まります。その結果、業界内でも圧倒的な定着率を誇ります。

フリマアプリで有名なメルカリでは、会社が果たすべきミッションである「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を達成するために、人事戦略として「大胆にやろう」「全ては成功のために」「プロフェッショナルであれ」という3つのバリューを定めています。

これらのミッションとバリューは人事制度にも反映され、目的と評価がリンクすることで従業員の帰属意識にも好影響を与えています。

この他にも、一般的に多くの企業で導入されているOJT研修だけではなく、メンター制度などを導入することで新人や若手社員の悩みを聞き、サポートすることも有効です。

本来は、対象の従業員とは別部署の年齢や社歴の近い先輩社員がメンターとなりますが、採用に関わってきた人事担当者が役割を担うことで馴染みやすく早期離職を防ぐ効果も期待できるでしょう。

帰属意識を高め一体感のある組織作りを

人材の流動化が進み、日本企業の特徴であった終身雇用も過去の制度になりつつある昨今、会社や組織に対する社員の帰属意識は薄れている傾向があることは事実です。

しかし、帰属意識の低下が仕方のないことだと諦めてしまっては、組織や仕事に対する興味や関心を失う社員が増え、離職者が後を絶たない状態になってしまいます。

労働人口の減少が続くこれからの社会において、新たな人材確保は容易ではありません。能力の高い社員の離職を防ぐためにも、会社全体で帰属意識の向上に努め、従業員満足度を向上させることで、優秀な人材の流出を防ぎ一体感のある強い組織づくりを進めていきましょう。