オンライン研修のポイントを伝授!画面越しでも効果的な研修の仕方

目次

プロフィール
志コンサルティング株式会社/
代表取締役
志村 智彦
新卒で人材育成教育のコンサルティング会社に入社。延べ3万人以上の育成に携わる。研修プロデューサーとして教育教材を開発。その後2019年に志コンサルティング株式会社を設立。

ダイバーシティの促進が進む中で、パンデミックの影響を受け、働き方が大きく変化している昨今。多くの企業がテレワークによって対面での研修が行えなくなり、オンラインによる研修に苦戦している人事(採用担当者)は増えています。

とはいえ、元通りの世の中になることがなかなか期待できないのも事実。そのため、新たな環境に適応しつつ、成果をあげていくことが各企業には求められます。それは従業員の育成に関しても同じです。

そこで、オンライン研修プロデューサーとして、各企業や研修会社の支援を行なっている志コンサルティング株式会社の代表を務める志村智彦さんに、オンラインでも効果的な研修を行うポイントや方法についてお聞きしました。

オンライン時代に必要な心得

オフラインとオンライン、双方の研修における違いについてお聞かせください。

リアルな場で実施するオフラインの研修とリモートなどのオンラインで行う研修の違いは、左脳と右脳の特徴に大きく関係しています。左脳は、書くことや話すこと、分析、情報伝達などの理論・常識・言語を司り、右脳は、図形や映像をはじめとするイメージや空間の認識、芸術、創造などの独創性・感性・記憶を司るというのは、多くの方がご存じでしょう。

理論立てて進める話や読み書きするなどの左脳的な内容は、研修や会議がオフラインであってもオンラインであっても、そこまで苦労せずに対応できます。一方で、相手のモチベーションや感性などの右脳的な内容はオンラインだと非常に難しい。なぜなら、感覚的なものや共感性などが薄れてしまうことにより、コミュニケーションが味気なく、情報の伝達のみになってしまうからです。

オンラインでは、左脳と右脳それぞれの特徴を捉えたうえで、対応することが大事なのですね。

右脳的なこと、左脳的なこと、それぞれを意識することは、オンライン上でとても大事なことです。例えば、仕事を辞める理由のひとつに人間関係があります。事実、さまざまな機関の調査においても「人間関係が理由で辞めた」という退職理由は毎回上位に挙げられています。この“人間関係”を築くうえでも、右脳的な共感性や尊重、相互理解がとても重要。

この特徴を理解していないと、オンラインで良好な関係性を築くのは難しいでしょう。実際に、物事を理論立てて伝えるような左脳的な上司はオンラインがやり易いと感じており、部下との関係づくりに重きを置いていた右脳的な上司はオンラインがやりにくいという声が増えています。

つまり、右脳的なやり取りをどうすべきかをもっとクリエイティブに考えていく必要があるということです。人事でもオンライン面接や面談などが増えていますが、実際にできているのは、ほとんどが左脳的なもの。

実際、オフラインで行われる面接がすべて不合格だった人が、オンライン面接になった途端に合格にしたというケースを聞きました。逆のケースもあると思います。そのため、大前提として脳の仕組みや右脳と左脳の違いなどを理解する必要があるのです。

オンライン研修の課題と解決策

研修に関しては、オフラインとオンラインでどのような違いや課題点が挙げられるのでしょうか。

オフラインとオンラインの研修における違いとそれに伴う課題点は大きく分けて4つあると考えています。それが「通信」、「意識づけ」、「集中力」、「関係性」です。

オフラインの研修にはない「通信」の問題

PCやタブレットなどのデバイスを使用するオンライン研修において、通信状況を一定に保つことは必須といえます。オフィスでは、大勢がアクセスしても通信状況が乱れないように対策をしている企業は多いですが、在宅勤務などのテレワークの場合、それぞれの居住地ごとに通信環境もまちまちなので、どのように確認し安定させるかが課題となるでしょう。

気軽に参加できるからこそ「意識づけ」が肝となる

オフラインの研修であれば、交通機関や徒歩で会場に向かう方、開始10分前に会場入りして準備をする方が多いのではないでしょうか。これまではそうした移動や準備などの行動があることで、緊張感や意欲を高めることにも繋がっていました。しかし、オンライン研修はスイッチひとつで参加でき、開始直前で画面を接続する方も少なくありません。そのため、研修に参加するという意識づけに困難が生じやすいといえます。

オフラインとは違う画面越しで築く「関係性」の難しさ

研修をする側と受ける側のコミュニケーションも大事ですが、研修の副次的な効果として受講者同士の繋がりを重要視する方も多くいらっしゃいます。オフラインの研修では、そこで人脈が増えたりビジネスが生まれたりするケースもあるため、オンライン研修でそういった繋がりをどう再現するかはひとつのポイントになるでしょう。

それら4つの課題に対する解決策を教えてください。

『通信』に関しては、研修を実施する発信側の通信状況を安定させることが重要です。そのためには、Wi-Fiなどの無線だと通信状況が不安定になりがちなので、講師陣は有線LANを使用するようにしましょう。

また、事前に通信速度や使用する端末のスペックなどのチェックリストを作成することもオススメです。また、受講者側のITリテラシーを把握することも大切。“Web会議システムの利用経験”や“研修に参加する際の通信回線”など、アンケートによる情報収集を事前に行い対策しておけば、当日の致命的な通信トラブルは回避できます。

『意識づけ』でのポイントは、参加者をいかに主体的な気持ちにできるかです。研修内容に興味や関心があり、自らエントリーするような研修であれば自己啓発に近いので学習意欲は高いです。

一方、企業内研修では新人やマネージャーなど、キャリアやポジションによって定期的に参加しなければならない研修は、受身で参加する人もいます。

受動的な参加者には、心をセッティングすることが大事。例えば、事前に動画やテキストで講師側の自己紹介や研修カリキュラムを伝えておくことで、当日何をやるかが把握できる。すると、受講者側との期待値調整ができ、参加意欲を高める効果が期待できます。

また、研修の冒頭で参加目的を発表してもらうことで、参加させられている方も自分事化して研修に臨むようになるでしょう。

『集中力』を高める鍵は、時間配分です。米国の研修トレーナー育成の大家であるボブ・パイク氏の理論を引用すると、オフラインの研修での時間配分には「90/20/8」の法則に則ると効果的とされています。

これは、「脳が集中をキープできるのは90分なので休憩を入れる必要がある」「記憶を保持しながら話を聞ける20分毎に異なる形式を入れる」「受け身の状態が10分続くと興味を失いはじめることから、8分を目安に参加者が主体的に参画できる(書いたり手と挙げたり)ようにする」という時間配分の目安を設定することで、集中力を維持できるというものです。

これをオンライン研修に置き換えると、私がこれまで実施してきた統計上「60/15/4」が最適でした。忘れてはいけないのが、受講者側の視点にたってタイムスケジュールを立てることです。

『関係性』をより良いものにするために必要なのは余白です。例えば、小学校などで友だちができたのは、授業中というよりも授業が始まる前の時間や放課後という方がほとんどだと思います。

研修でもそれは同じで、始まる前の時間帯や研修後の飲み会や懇親会などで距離感をぐっと縮めるケースが多い。オンライン研修でも、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使ったグループ分けによるコミュニケーションやオンライン飲み会などを開催して、余白の時間をつくることが重要。研修では得られないノウハウやビジネスチャンスが得られる貴重な機会にも繋がり、参加者の満足度も高まるでしょう。

ただし、資格取得の研修など個々の知識習得がメインの研修では、余白が不要となるケースもあります。

未来の人事を救うオンライン化

さまざまな課題解決があるのですね。特に人間関係に必要な余白づくりは、オンライン研修ならではだと感じました。

研修には縦と横の繋がりがあって、縦の繋がりは講師やトレーナーと受講者で、横の繋がりは受講者同士になります。

縦の繋がりは、研修を行う中で自然と育みやすいのですが、やはり横の繋がりはオンラインだと自然には育めません。雑談がしづらく、お互いの“人となり”を知ることもできませんし、交流を深めるために必要な情報がどうしても足りない。企業内で他部署の方たちが参加する研修であれば、普段から話す機会も多くないと思います。

そんな時は、研修内の意見共有の時間を長めに設定したり、研修後に気軽に参加できるオンライン懇親会などを開催するなどして、少し砕けた話ができるような工夫も必要かと思います。

オンライン研修の講師を務めた際の好事例などがあれば教えてください。

以前、オンラインで60人規模の新卒内定者研修をやって欲しいと依頼を受けたことがありました。入社前なので内定者同士の面識がない状態。与えられた4時間の中で、個々の仲を深めるのは難しいと判断し、ある方策を企てました。

まず、事前に1分間の自己紹介動画を個々で撮ってもらい、限定公開でYouTubeにアップ。Googleスライドにも文章で自己紹介を書いてもらいました。そして、内定者同士で感想やコメントを書くようにしたのです。

研修前に内定者同士がお互いのことを把握した状態でスタートでき、zoomのブレイクアウトルーム(グループ分けの機能)を多用してたくさんの人と話す機会を設けました。事前にお互いの情報共有していたため、トークのネタができ、コミュニケーションが円滑に図れるようになりました。

背景理解・自己開示・他者理解を前もって促すことで、オンラインであっても研修内はもちろん、余白の機会を生み出しやすくなり、より良い関係づくりが育まれる良い事例だと思います。

働き方が目まぐるしく変わる中で、研修は完全にオンライン化へとシフトする企業も増えていますよね。

コロナ禍の状況が読めない中、オフラインの研修をやらないという企業は増えています。そのため、これからはもっと多くのノウハウやナレッジが生み出されて、オンライン研修は一時的に主流となることが予想されます。

研修会場をおさえる必要がなく、全国の営業所・支店から参加できようになり、会場費も交通費も大幅に削減できます。セミナー形式であれば、人数の制限なく、多くの方が参加できます。

たくさんの方が参加していても、ライブ感を感じたい場合は、みんなで同じ行動をする“共通所作”を促してみましょう。

例えば、50人規模の参加者がいる研修の中で、内容が理解できたかどうかを確認する際などに、両手の親指を立てて「いいねポーズ」や「OKサイン」をお願いしています。画面に映った50人全員が同じポーズを一斉にするので、団結感が得られて、参加意欲を高めることができます。

講師側も反応が返ってくると安心できます。一方向にならず、双方向になるのでとてもオススメです。

これからオンライン研修の導入を検討する企業や人事の方たちにアドバイスをお願いします。

働き方はもちろん、就職活動もオンライン化が進んでいるので、研修においても基本的にオンラインでできるように設計しておくと良いでしょう。

オフラインの研修は、既存プログラムを踏襲しながらの準備が可能です。しかし、オンライン研修をはじめて実施する際、通信環境からあらゆる事前準備を含めて、通常の数倍といっても過言ではないほどの時間を有します。

これらのコストを懸念してオンラインにスイッチできていない企業も多いですが、このままでは将来的に社員が学ぶ機会を損失して企業全体の成長や事業戦略に支障をきたす可能性も十分に考えられる。

最初は、知識共有型の左脳的なコンテンツでも構わないので、経験を積むことが大切です。そして、他社の事例などにもアンテナを広げ、自社のオンライン研修のブラッシュアップに繋げていただければと思います。

オンライン研修では“準備が8割”と考える

オンライン研修は、ネット環境があれば、どこからでも参加できる利便性があります。その一方で、それぞれのITリテラシーの違いから、自宅のネット環境が整っていない、自宅で使えるパソコンがない、マイクやカメラがない、社内のセキュリティの問題でツールが使えない等、企業によってまだまだ沢山の課題もあるようです。

そのため、事前に研修受講者の環境を把握するためのアンケートや接続テストなどの準備を徹底することが、オンライン研修を成功させる一番のポイントであるといえるでしょう。オンライン研修が必要になってから慌てないように、ぜひ今のうちから出来る準備を始めてみてはいかがでしょうか。