メンバーと良好な関係を築きたいマネジャーに知ってほしい“⼈材マネジメント”のポイント

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プロフィール
株式会社KAKEAI/
代表取締役社長 兼 CEO
本田 英貴
2002年に株式会社リクルート入社。JVの経営企画室長などを経てリクルートホールディングス人事部マネジャー。その後、スタートアップ数社の役員を経て、2018年4月に株式会社KAKEAIを創業。

労働人口の減少が叫ばれている昨今、離職率をどう下げるのか、定着率をどう高めていくのか、といった話し合いが増え、今まで以上にメンバーに寄り添ったマネジメントに力を入れる企業が増えています。さらに、リモートワークによってメンバーと対面で接する時間が減り、マネジメントが思うようにできず、どうしたらメンバーと良い関係構築ができるのか悩まれているマネジャー層も少なくありません。

そこで、中間管理職と部下の“掛け違い”を無くす「マネジメント支援クラウドシステム|カケアイ」を開発・提供する株式会社KAKEAIの代表を務める本田英貴さんに、メンバーと良好な関係を築くことができる人材マネジメントのポイントや方策についてお聞きしました。

⼈材マネジメントの本質を探る

人材マネジメントの重要性と本質についてお聞かせください。

まず、組織はサークルや地域の集まりではないという大前提があります。社会に対して経済的な価値やより良いサービスを提供していくためには、継続的な成長が必要不可欠です。それらを叶えるべく集った仲間と協力し合う必要がある組織で、重要になってくるのが人材マネジメントです。

特に、組織と個人とがお互いの目的をきちんと捉えながら理解し合うことが大切です。そして、成果を出しながらそれぞれが見据えた先に向けて共に歩みを進めることが、マネジメントの本質だと考えています。

マネジメントの本質を捉えるうえで押さえておくべきポイントはありますか。

企業が掲げる目的や目標に向かって活動するメンバー一人ひとりが、今いる場所やここに使う時間にどんな期待や有用性を見出しているのかを把握することからはじめるといいでしょう。

この理解が足らずにマネジメントすると、組織として成すべきことと、組織を構成する個人にひずみが生じます。例えば、上司が頑張ろうとすればするほどメンバーとの距離は開くばかりです。組織と個人も、上司とメンバーの間でも負の連鎖が止まらなくなり信頼関係も崩壊してしまいます。

部下との関係性に悩むマネジャーは多いと思いますが、今の時代に求められるマネジメントについて教えてください。

終身雇用が前提の以前とは違い、個人の選択肢が豊富になったことで、ごく自然と「なぜこの会社で働くのか」を考える機会が非常に多くなっています。 当然、マネジャーは「部下がここで働く目的は何なのか」ということに対して、今まで以上に目を向ける必要があります。

最近では、組織の中で従業員が体験する経験価値を意味する“エンプロイーエクスペリエンス”や、従業員のありたい姿や仕事上の成功を実現支援するための取り組みや概念である“エンプロイーサクセス”などが注目されています。

つまり、企業が顧客に対してカスタマーエクスペリエンスを重視し、カスタマーサクセスに重きを置くように、従業員個人にとっての成功や仕事の有意さを重視するマネジメントが求められているのです。

メンバーの成功に特化した新たなマネジメント

求められるマネジメントの役割が変化しているのですね。近年、ピープルマネジメントという言葉も耳にしますが、どのような手法なのでしょうか。

ピープルマネジメントとは、“業務マネジメント”や“目標管理マネジメント”と対であり、いずれが欠けても組織をゴールへ導けません。メンバー個人を理解し、メンバーの将来へ向けて今の仕事を活かすための設計をする、日常的に役割の達成と成長を支援するとといったことに関するマネジメントです。業種や職種に関係なくどの企業に勤める人に対しても共通で存在するものです。

これまで主流だった業務マネジメントが今の時代に合わない理由を教えてください。

主流というよりも、業務マネジメントだけでマネジメントが成立しやすかったということだと思います。

先ほど述べたような人の流動化という働く側の状態が変わってきたという要因もありますが、企業側の視点で言えば、企業戦略や戦術に紐づく業務マネジメントや目標管理は、戦略・戦術とともにコモディティ化し、それだけでは競争に勝てなくなっています。

また、VUCAと言われるような難しい事業と競争環境下においては、当然強い現場組織が求められます。つまり、従業員一人ひとりにフォーカスしたピープルマネジメントを意識しなければ、そもそも企業体として成立し続けることが難しくなっているということです。

御社が提供するサービス「カケアイ」のベースにもなっているピープルマネジメントの導入事例があればお聞かせください。

例えば、従業員との面談を頻繁に行っている企業でも、1on1実施についてのガイドラインが渡され、後は現場のマネジャー任せというケースが多いのも事実です。自然と面談の内容は仕事や業績が中心になりがちです。それはただの業務マネジメントです。単に業務マネジメント上の意味合いでメンバーと関わる頻度を上げたに過ぎません。

ある企業では、1on1の実施にあたって、メンバー自身に、会話したいテーマは業務の件なのかプライベートやキャリアについてなのかというテーマに加え、マネジャーには、話を聞いてほしいのか、一緒に考えて欲しいのか、意見が聞きたいのかといった求める対応を明確にしてもらっています。たったこれだけのことでも、まずメンバーが主体であり、かつマネジャーはメンバーが求めるテーマや要望にシンプルに真摯にズレることなく向き合うことができます。ごく自然とピープルマネジメントが行われている一例です。

まずは、“相手を知る”ことが、ピープルマネジメントを成功させるポイントなのですね。

相手のことを知り、相手が求めていることに真摯に向き合うことはとても重要です。このベースとなる関係性が作られていなければ、しっかりと仕事を本人の将来と紐づけることもできませんし、まして本質的な動機付けなどできるはずがありません。相手を理解することは最初の一歩です。

しかし、例えばヒエラルキーを重視する企業は、仕事とは与えられたことを愚直に行うものというような雰囲気が存在しがちです。経営なので当然その側面はあり、重要です。しかし問題は、メンバーが「愚直に行える状態を作れているか」です。決してブラックな状態ではなく、両立させることはできますし、特に今後は両立させることが経営を上手く回すことです。

未来に向けた人材マネジメントの展望と方策

経営者目線や属人的なマネジメントだと部下の不満も積もって、結果的に成果が出せない組織になってしまいますよね。

属人的なマネジメントに関する課題は、以前から言われ続けていることなので、もっとマネジャー同士が横の繋がりをもてる仕組みづくりが必要だと感じています。メンバーとの関係構築が上手いマネジャーやどの部署にいっても成果をあげるマネジャーなど、マネジメントが上手くいっている人たちには必ず理由がある。そういったコツや知恵をみんなが共有できて真似できる状態を生み出すことは、結果的に組織全体のレベルを高めます。

ただしこれはアナログだけでは難しく、テクノロジーが必要です。マネジメントにデジタルトランスフォーメーションを意識し取り入れる企業が継続的に成長し続ける企業だと思います。

テクノロジーを活かしたマネジメントは、リモートやテレワークが進む現代社会において必須といえそうですね。

今、働き方が大きく変わり、物理的にも心理的にも組織と従業員の距離が大きくひらいてしまう時に、肝となるのは最前線で従業員に対峙している現場のマネジャーたちです。彼らへのサポート体制既存のままとすれば、間違いなく企業は競争の前にまず内部の遠心力に負けるでしょう。

マネジャーの多くがプレイヤーを兼ねていることも問題を大きくしています。ただでさえプレイヤー業務とマネジメントを両立させるのは難しい。マネジメントをより一層支援する必要に迫られているという経営側の意識の上で、手段としてテクノロジーが有効であれば活かすという考え方が大事だと思っています。

多様性が求められる時代のマネジメントは今まで以上に難易度が高くなるイメージがあるのですが、何か対策やアドバイスはありますか。

多様性と言いますが、これまでは個をいっしょくたにしても成立していた社会から、シンプルに個にフォーカスする社会に変化しているだけです。例えば外国人との協働のシーンを想定したとします。そもそも同じ日本人同士だって千差万別。扱う言語が同じなだけで個性は人それぞれ異なります。つまり、今、共に働いているメンバーの個にもフォーカスできなければ、より一層違いの幅が大きくなる今後の多様化には対応できないでしょう。

将来に備えるという意味では、まずは自社のメンバーを理解することからだと思います。そこで見えてくる、これまで見えていなかったさまざまなケースに真摯に向き合うことが、最も簡単な着手方法だと思います。

これからは副業などをする人たちが増えていくので、今いる会社を本拠地とすべきかどうかもマネジメントによって左右されそうですね。

それはあると思います。遅かれ早かれひとりが一社ではなくて、複数の企業と付き合いながら生きていくというのは当然起こりうること。拘束するような働き方ではなく、従業員にとって今の仕事だけをやり続けるよりも、例えば外部企業が展開する事業に携わることでキャリアの幅を広げられるのではないかという視点を持ち、それを提供できる企業やマネジャーであるかを問うことが大事です。

メンバー視点で自社に限らない機会を提供できるマネジャーが生まれてくるべきであり、そういったマネジャーを抱えられている企業が、今後より一層従業員との関係が薄まり、まるで液状化する状態に勝ち成長するでしょう。

未来型マネジメントのキーワードは「相互理解」

メンバーと良好な関係を築くためには、まず相手を理解することが重要なポイントです。上司が自分のことを知ろうとしてくれる姿勢はメンバーにとって信頼度が高まり、安心感にも繋がります。この相互理解こそが、これからのマネジメントにおける肝となるでしょう。

転職や副業が当たり前になっていく中で、その変化に対して柔軟な対応ができ、従業員のチャンスやチャレンジを推進してくれる。そんな企業やマネジャーであれば、メンバーのエンゲージメントが向上し、離職率の改善にも繋がります。

従業員一人ひとりの働く目的としっかり向き合い、理解を深めるピープルマネジメントや他のマネジャーが実施しているマネジメント手法を収集するなど、将来を見据えて今のうちからトライしてみてはいかがでしょうか。