「VUCA時代に必要な働き方改革とは」 在宅ワークでも生産性UP!
ワーク・ライフバランス流仕事術

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プロフィール
株式会社ワーク・ライフバランス
原わか奈
ワーク・ライフバランスコンサルタントとして、飲食・アパレル・建設業界など、業界を問わず「営業活動に力を入れる企業」の働き方改革を得意とする。前職は人材総合サービス企業の営業職として、8年間で、約600社の採用コンサルティングを経験。2児の母でワーキングマザーとして時間制約がある中、マネージャーとしても活躍。その後、自社の中途採用、女性活躍推進のプロジェクトも担当、その経験をもとに中長期的キャリアを伸ばす組織づくりに定評がある。

日本の企業の働き方を変えることが、今後の日本を支えていく。その信念をもとに、働き方改革を日本に浸透させてきた株式会社ワーク・ライフバランス。VUCA時代でも勝てる組織になるために必要な働き方のコツをご紹介します。

VUCA時代に必要な、ワーク・ライフバランスの働き方

社会やビジネスにおいて、将来の予測が困難になっている状況を指す「VUCA時代」。この不確実性が高い時代を乗りこなすためには、働き方改革が求められます。企業に必要なワーク・ライフバランスの定義をもう一度確認してみましょう。

VUCAとは?今の社会に働き方改革が必要な理由

VUCAというのは、今ある状態から理想的な状態に近づいて行くまでの、途中段階のことを指します。不確実性や、曖昧性があるような状態です。まさに今コロナに直面している現在の状況だと思います。 私たちには、このコロナの経験を踏まえて、不確実性が高い時代でも仕事を進めながら次のVUCAに備えていく。そんな観点が必要です。新しい働き方を準備し、改革をしていかねばならないと思います。

社員の不公平感を生む「ワーク・ファミリーバランス」

実は、「うちはワーク・ライフバランスをちゃんとやっている」という企業のほとんどが、誤解しているのが「ワーク・ファミリーバランス」です。これは、育児をしていらっしゃる方、介護との両立を伴うような方々に対して、一定の配慮をするというやり方です。しかし、実はこれをやると、会社の中で家庭を持っていない人の不公平感が高まってしまい、対立構造が生まれてしまいます。 「ライフ」はすべての人にありますので、是非、全従業員が対象である「ワーク・ライフバランス」をやっていただきたいと思います。

知っておくべき「人口ボーナス期」「人口オーナス期」という考え方

ここからは、「人口ボーナス期」「人口オーナス期」という考え方をご説明します。これは、ハーバード大学のデービッド・ブルーム教授が1990年代に提唱してから、爆発的に認知度が高まった考え方です。

人口ボーナス期とは

「人口ボーナス期」とは、「人口構造が、その国の経済にボーナスをくれるようなオイシイ時期」というような意味合いになります。人口ボーナス期の人口構造は、簡単に言うと「若者が多く、高齢者が少ない」人口構造です。

高齢者が少ないため、社会保障費がかさまず、余ったお金でインフラ設備の建設などに投資ができるため、その国の経済は「爆発的に発展して当たり前」の時期です。

実はこの人口ボーナス期、最大の特徴があります。それは、「その国で一度人口ボーナス期が終わってしまうと、二度と来ない」ということ。日本では1990年代半ばに終わったボーナス期は、もう二度と来ないということです。では、なぜ人口ボーナス期は終わってしまうのでしょうか?

高度経済成長が訪れた国では、必ず富裕層が生まれて、富裕層が子供に教育投資をするので子供が高学歴化をしていきます。高学歴化をすればするほど、女性だけではなく男性の結婚年齢も後ろ倒しになっていきますので、将来に持てる子供の数が少なくなる。そして、少子化社会が始まっていく。

少子化社会が始まりかけの国は、医療や年金制度を充実させて高齢者にお金がかかる社会を作っていきます。その間に、医療の充実によって高齢者の寿命と比率がどんどん上がり、税金が国民に重くのしかかってしまう。そして、伸び続けていた国民一人当たりのGDPがほぼ横ばいに入ったところから、「人口オーナス期」に国全体が移行していくことになります。

人口オーナス期とは

「人口オーナス期」とは、「人口構造がその国の経済の重荷になってしまう時期」。支えられる側が多くなる時期です。人口オーナス期によって生じる典型的な問題は、労働力人口が減少し、働く世代が引退する世代を支える。つまり、社会保障制度を維持することが困難になるということです。 この時期に、人口ボーナス期の手法をどれだけ繰り返しても通用しません。安い労働力を武器に世界中から仕事を受注するのは、「人口ボーナス期」だからこそできた手法です。

実は、オーナス期に駆け込むスピードが世界で1番早かったのが、日本と言われています。 「では、ボーナス期が終わってしまった日本は、経済的に終わりの国なの?」というと、そんなことはありません。人口ボーナス期は、いわば「誰が経営しても儲かる会社」のようなもので、「オーナス期に入ってからが本当の経済成長」と言われています。

人口オーナス期の成長のポイント

人口オーナス期での成長のポイントは2つ。 まず1つ目は、「短期的労働力の確保」です。具体的には、生産年齢人口でありながら、まだ労働参画できていない人を、労働参画させる必要があります。例えば、女性や障がいをお持ちの方、介護との両立をするような方。この人達をいかに労働力の「支える側」に入れるか、ということです。

その意味では、日本はとても伸びしろがある国です。いま労働参画できていない人がドロップアウトせず、最後までキャリアを走りきれるような状況を作りさえすれば、実は未曾有の労働力がまだまだ手に入る、大変珍しい国と言われています。

2つ目は、「長期的労働力の確保」です。具体的には、少子化対策として、真に有効な対策をしていく必要があります。 たとえば、もし何のサポートもないまま一気に女性を労働市場に出してしてしまうと、余裕がなくなって子供を持つことが難しくなってきます。そうなると、未来の労働力である人口を確保できないので、これでは結局「労働力を先食い」したに過ぎません。 なので、ワーキングペアレンツが問題なく子育てができる。そんな環境を作りさえすれば、長期的な労働力の確保ができたといえるでしょう。

このように、「人口オーナス期」に成長していくためには、「短期的」と「長期的」の視点での労働力の確保がとても重要です。ボーナス期の施策や、企業戦略は逆効果になり、オーナス期のやり方に転換できた国や企業が勝っていくでしょう。

「ボーナス期」と「オーナス期」で異なる、働き方のルール

人口オーナス期に入った日本が成長するためには、「ボーナス期」と「オーナス期」で全く異なる、働き方のルールを知っておく必要があります。

人口ボーナス期で勝つための働き方

ボーナス期は、「①なるべく男性が働く」というのが勝てます。この時期の最大のポイントは、労働力が余っているということ。体力のある人を労働市場に出す一方で、家事労働はまだ合理化されていないため、「女性は家庭・男性は仕事」というように、性別役割分担を徹底することが極めて高効率だったのです。

また、「②なるべく長時間働く」ことが重要でした。人口ボーナス期の特徴として、「顧客は最初の洗濯機や冷蔵庫といったサービスをまだ手にしてない」ということがあります。つまり、「先にサービスを手元に届ける合戦」だったため、労働時間をどこまでものばしていく。そして時間の単価が安いので、時間が成果に直結する時代だったのです。

さらに、ボーナス期では「③なるべく同じ条件の人材」を揃えた組織が勝てます。この時期は均一なものの大量生産が望まれるため、決まったものを大量に流し込める、ということが大事でした。

日本は、ボーナス期にこの3つを完璧にやり切ったからこそ貯金ができ、インフラ整備が整いました。しかし、現在はこの3つの戦略が成り立つ背景が全く変わっています。「ボーナス期」から「オーナス期」に人口構造が変わったのにもかかわらず、ボーナス期の成功体験が強く、当時の戦略を続けてしまった、ということが問題だったのです。

人口オーナス期で勝つための働き方

オーナス期では、とにかく「①男女ともに働く」組織が勝ちます。労働力が少なくなってきているわけですから、企業にとっては、いかに「男女両方から自社が選ばれるか」という競争になってきます。また、時間当たりの人件費が高騰しているため、「②なるべく短時間で働かせる」組織が勝ちます。 そして、「③なるべく違う条件の人を揃える」ことが重要なポイントです。

オーナス期の顧客は、ニーズ自体が多様化しています。そうなったときに、社内にアイデア溢れるような人材がいないと競争に負けてしまう。だからこそ、社内の多様性を高めることが勝つためのルールになるのです。

働き方を変えること・働き方改革をすることは、たとえば今育児で思うように仕事ができていない女性や、介護で昇進を諦めた男性が、継続して働くことを手助けするツールでもあるのです。働き方改革が今後の未来を変えるツールになるのかなと思います。

役職別:生産性を上げる働き方のポイント

ですが、オーナス期の考え方を知るだけでは、まだ働き方改革は変わりません。一人ひとりがこの考え方ややるべきことを理解し、実践していくことが重要です。 ここからは、役職別にコロナ禍でも生産性を上げる働き方のポイントを見ていきます。

経営者

経営者は、経営戦略として新しい仕事様式を指示し、会社として取り組む必要があります。労働力人口が足りないというのに、商習慣によって生産性を落としてきたことを、この機会に正式な見直しの指示をしていただくことをおすすめします。 ここでは、コロナ禍において実際に経営者が英断した事例を紹介します。

役員が率先してテレワークをする

社員の中には「上司が出社しているから自分も」と思い、頑張って会社に行く、そんなことも散見されています。まずは、役員自らが2週間のテレワークをすることをお勧めします。

慣習的に実施していた定時外の会議を、定時内スタートに

今まで「この時間なら集まりやすいから」、というような理由で決めていた時間帯を定時内で行う。簡単なことのようですが、「経営層が」定時内にミーティングをする、ということが重要です。

コロナ禍での働き方の変化を予期し、緊急事態宣言前に社員全員分のモバイルPCを確保

環境を整えることも大変重要です。今準備をしっかり行わないと、従業員の働く環境が整いません。「情報はクラウドに置く」「在宅時に必要な端末やネットワークを整える」これを早急に行いましょう。

オフィスの解約

出社が前提でなくなれば、オフィスが必要となくなる。従業員にとっては「在宅勤務を続けていい」、「コロナ禍で後戻りするような企業じゃない」というポジティブな理解にもつながっていくかと思います。

単身赴任の解除

「重要な仕事はテレワークでもできるから、家族と暮らしながらライフもワークも楽しめる家で働く方がいい」という判断をして、転勤を取り止める決断をしている企業もあります。

管理職

管理職の方は、「指示命令形」の緊張感を高めて一律管理しやすい組織にするのではなく、在宅メンバーの心理的安全性を高めて、リラックスして仕事が出来る環境をつくることが重要です。

必要なのは、「多様性」と「コーチング」のアプローチ

オーナス期に必要な「多様性」を生むには、自分の考えをまとめて発信できる土台が必要です。「コーチング」のアプローチは、相手が目標達成を自分でクリアできるように支援することですので、個別対応が基本。何か良い行いをした時に、例えば「やったね」「おめでとう」と感情的に言われて嬉しい人もいれば、「誰々さんのこの行動が、周囲にこんな影響をもたらした。それが素晴らしい」というように、具体的に褒めることが一番響く人もいます。それぞれの響くポイントを見極めて、部下の目標達成の支援をする。そんなマネジメント心がけていただくと良いと思います。

「心理的安全性」とは何かと言うと、「このチームでは意見を出しても否定されない・笑われない」というような、自然体の自分をさらけ出せるような環境のことです。チーム内で「メンバーの発言量は一緒か」、「フラットに議論ができているか」を観察してみてください。

心理的安全性・関係の質を高める「カエル会議」

心理的安全性・関係の質を高めるために、私たちは日々「カエル会議」という手法を使って、働き方改革を進めています。「カエル」には、「早く帰る・働き方を変える・人生を変える」という3つの意味があり、チームのありたい姿(ゴール)に向かうための現状の課題をあぶり出し、そこから解決策を考えてPDCAサイクルを回す、ということを行っています。

ボーナス期型の企業だと、基本的にチームの「ありたい姿」はトップダウンで決められることが多いと思います。しかし、「ありたい姿」を全員で決めて、多様性を尊重しチームの一人ひとりが合意できる内容であること。カエル会議ではこれを重要視しています。

社員

社員は、自分の時間自律性をトレーニングする必要性があります。 テレワークには様々な不安があると思いますが、それらを解消するのが「自分の仕事時間を見える化」することです。「時間を自律的に組み立てる力」これがテレワークの生産性を決めます。

その「時間自律性」を鍛えるために、弊社では「朝メール」というツールを活用しています。これは、朝にその日のスケジュールを15分刻みで隙間なく計画立て、夜にその通りに時間を使えたか振り返るというもの。そして、その内容をチーム全体に共有し、コメントもらい合うというツールです。予定を立てて共有し、夜に振り返るだけで仕事の優先順位が明らかになり、チームメンバーの理解が進みます。単なる記録ではなく、振り返って次のアクションにつなげるということが何よりも大事です。

また、社員にとって最も重要なのは、チームメンバーからのアドバイスや承認です。時間自律性の向上とともに、テレワーク環境でのチーム力を向上していただければと思います。

人事

経営者の判断・管理職や一般職の課題をもとに、実現するために動くのが人事の仕事かと思います。人事が働き方改革を加速させ、制度設計を進めていくために、4つのポイントをまとめました。

環境整備

テレワークを急遽導入することになり、労務管理の一環で在宅環境下での管理ツールを選定してらっしゃる人事の方は多いのではないでしょうか。ここで重要なのは、「管理監視型」のログツールではなく、各自が自律的にタイムマネジメントのできるツールを選ぶということです。重要なのは、「チーム内でコミュニケーションをどうとるか」です。そのために、仕事は見える化・共有化をする必要がありますし、人事としては、お互いが疑心暗鬼にならないような環境整備を急ぐ必要があると思います。

健康管理

テレワーク環境で長時間労働になってしまっては、元も子もありません。フレックス制度に加えて、「インターバル制度」を導入しましょう。前日勤務終了してから11時間は仕事開始ができない、というような「勤務間インターバル」を設けることで、睡眠時間や休息時間を確保することができます。

生産性を落とす商習慣の廃止

経営層に対して、生産性を落とす商習慣の廃止を具体的に提案しましょう。弊社のコンサルティング先の企業では、業績を上げるための予行練習として2週間のテレワークを実施するなど、実際のアクションを行っておられる企業もあります。

オンライン研修の実施

オンライン研修は、今だからこそどんどん進める意味があります。「テレワーク環境下で仕事をサクサク進める」という練習をしていただいて、「次世代型の教育」を進めていきましょう。

このように、今「人事が」積極的に新しいことにチャレンジしていく姿勢が求められます。

まとめ

予測不可能なVUCA時代だからこそ、個々人が今一度自分の働き方・生き方について考え、新しい働き方を手に入れる必要があると思います。

そこで一番重要なのが、「ワーク・ライフ・シナジー」という考え方です。ワークとライフはバランスをとるものではなく、お互いが相乗効果でもって高め合う。そのような状態を作れるよう、この時代を改めて考えていただき、駆け抜けていただきたいと思います。