テレワークを成功に導く7つのアクション~605社の支援で見出した再現可能な方法~

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プロフィール
株式会社クロスリバー 社長
株式会社キャスター Caster Anywhere事業責任者
越川 慎司
国内通信会社へ就職、ITベンチャーの起業を経て2005年にマイクロソフトに入社、業務執行役員としてPowerPoint、Teamsの事業責任者など歴任。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全テレワーク・複業で、支援した企業は605社(2020年9月時点)。株式会社キャスターでCaster Anywhere事業責任者でもある。著書『新時代を生き抜くリーダーの教科書』など10冊、累計23万部。定額制オンライントレーニングサービス「Smart Boarding」にて特別講座を提供中。

コロナの影響によって導入した企業も多い、テレワークという働き方。しかし、多くの企業でその効果が認められたにもかかわらず、緊急事態宣言が明けた後、元の働き方に戻してしまった企業は70%にのぼります。

テレワークを成功させて企業の生産性を高めるためには、いくつかのルールが存在します。実際に行動に移すことで働き方改革が実現する、生産性を高めるための効果的な方法を紹介します。

コロナ禍で見直されたテレワークは、企業の成長と社員の働きがいを両立させる。

テレワークの導入には、成功の定義が必要です。求められるのは、テレワークにもかかわらず生産性が上がること。テレワークで削減した無駄な時間を使い、未来に必要な知識を身につけることや新しい事業の開発をおこなうことで、企業にも社員にもプラスになる働き方改革を目指しましょう。

テレワーク成功の定義とは?

緊急事態宣言が明けた2020年6月、458社の経営者もしくは人事責任者の方に「テレワーク、成功していますか?」と質問しました。「成功しています」と自信を持って手をあげた企業は22.1%。78%の企業はうまくいっていないということです。

「テレワークは何をもって成功か」という成功の定義がないと、テレワークはうまくいきません。テレワークによって目指すべき山の頂上は「会社が儲かること」、そして「社員の働きがいがある」こと。この2つを両立させるという目的のために、手段として働き方を変えることが、働き方改革です。

コロナ禍で78%の企業がテレワークの効果を実感

東京都内の820社にアンケートを取ったところ、コロナの影響でテレワークを導入し効果を感じた企業は78%。しかし、緊急事態宣言が明けたあとは約7割の企業が元に戻してしまいました。一方で、「今後の働き方の選択肢としてテレワークを残したい」と答えている組織は89%という数字になっています。

この半年でオンライン営業を求める取引先企業は30倍に増加しています。取引先の意識が変化することで、当然ながら会社もデジタル(テレワーク)に合わせていかなければいけません。デジタル(テレワーク)で研修や面接を実施するようになってきた今、営業もそれに合わせて当たり前の時代だと思います。

これからの企業に求められるのは「テレワークで生産性を上げること」

コロナ禍で行われてきたテレワークの目的は、「コロナの前にやっていた仕事を今まで通りそつなくこなす」というBCP(事業継続)でした。しかし、今後は「テレワークにもかかわらず生産性が上がること」が求められます。そのためには、残業削減など無駄なことだけやめても意味がありません。

テレワークで生産性を上げるには、テレワークによって生み出した時間で、未来必要なスキルを今のうちにつける「学び方改革」、新しい事業開発をして事業生産性を上げる「儲け方改革」、この2つをおこなうべきです。時間を生み出して必要なことに再配置していくことがテレワークでも求められており、これこそが働き方改革なのです。

テレワークを成功させるために重要な「社員の働きがい」

テレワークの成功に重要とされるのが社員の働きがいです。目標を持たない社員がテレワークを行っても達成感は得られません。上司と部下のコミュニケーションを密にし、行動目標や評価基準を明確にすることで、テレワークの有無にかかわらず組織がうまくいくようになります。

働きがいを意識することで会社も成長する

働きがいを持つ社員は、持たない社員よりも離職率が1/3低く、営業ならば目標達成率が1.9倍、作業効率は45%高くなります。また、今後人生100年時代と言われ、70歳以上まで働かなくてはいけません。その中で、働きがいを感じ続けることは大きな価値になります。

社員が達成感を得るには上司の協力が不可欠

実際には、働く人の約6割が定量的な目標を持っていません。社員が達成を感じるためには、目標が必要です。数字の売上目標ではなくていいので、行動目標や半年・四半期・1ヶ月・1週間の目標を上司と決めてください。テレワークで具体的に行動目標を決めるためには、上司と部下の会話を増やすことが重要です。また、部下に自分で考えて行動させるためには、上司が「行動することを考える時間」を部下のために作ることが必要です。出来れば月に1回は15分、30分時間をつくり、翌月には、それができたかどうか振り返ること。これが成長循環モデルです。

組織の成長には、ほうれん草ではなく雑草(雑談・相談)が重要

リモートワークで圧倒的に減っている雑談と相談。これができれば組織は成長します。その際重要になるのが「心理的安全性」。これが確立されているチームはうまくいきます。コロナの影響を受ける前の2019年に22社で実証実験したところ、下記のような結果が出ました。

  • チームA……上司と部下が2週間に1回15分以上の対話を行い、心理的安全性が確保されたチーム
  • チームB……コミュニケーションがうまく取れていないと思っている人が6割以上いるチーム

チームAはBよりも会議時間が24%少ない。1人当たりの研修期間が12%多いにもかかわらず、総労働時間が13%少ない。また、チーム目標が達成しやすい(およそ50%達成できた)。

一方でチームBは、Aよりも資料作成時間が25%長く、病休・精神疾患が31%多く、離職率が18%高い。

チーム内の心理的安全性が確保されていないと、精神疾患や離職率にも影響してきます。しかし、心理的安全性が確保されていれば、テレワークの有無にかかわらず組織はうまくいきます。こういったソフト面がとても重要になります。

テレワークを成功に導く7つのルール

それでは、テレワークを成功させるために必要な、7つのルールを具体的に紹介します。これらのルールを社内で共有し、実際に行動に移すことでテレワーク中の生産性が高まり、企業の働き方改革につながります。

①雑談で心理的安全性を確保する

「うちの社員は在宅勤務するとサボるから、テレワークをしない」と言っていた経営者の数は、2019年12月時点で約8割でした。しかし、調べてみると在宅勤務でサボる人の9割は、出勤してもサボっていたのです。つまり、「サボるかサボらないか」は場所の問題ではなく、職務責任と評価の問題なのです。 社員がサボらないようにするためには、行動目標を一緒に考えることが必要です。評価軸があれば、年間ゴールからブレイクダウンして、半年、3ヶ月、1ヶ月、今週、今日は何をやるかというのを切り分けていくことができます。

②業務の「見せる化」を浸透させる

働く社員の方は「お前は何をやっていたんだ」と言われないように、自分から行動を見せていく必要があります。例えば「今日はこれから業務を開始します」とチャットで言うときには、「今日はこういうことがあります」の一言を入れましょう。同様に「今日は仕事終わります」と言うときは「今日は進捗どれぐらいです」、「うまくいってます」、「うまくいってません」と、一言いれましょう。行動目標の進捗を自分から見せていくという姿勢が重要です。

③情報の透明性を保つ

テレワーク中は、ガラス貼りの会議室の中で仕事をしているかのように情報を扱うこと。隠し事は禁止、こそこそ話も禁止です。次の4つの共有ルールを徹底して守りましょう。

予定表とプレゼンスの共有

カレンダーは必ず公開してください。また、チャットなどの「プレゼンス機能」でオンライン・オフラインを共有しましょう。

テレワーク中に中抜けをしてお子さんを迎えに行ったり、昼食を食べに行ったりするのは悪い事ではありません。それをカレンダーに入れて共有しておくことで不要な疑いがなくなるため、カレンダーとプレゼンスは必ず共有しましょう。

フィードフォワードの徹底

作成している資料や納品物、デザインや図面でも、完成度20%のところで1度フィードバックをもらってください。

「こんな感じで作っていますが大丈夫ですか?」と聞くことで、無駄な差し戻しがなくなります。このフィードフォワードを85社で徹底したところ、差し戻しが76%減ったという結果が出ました。

資料はクラウドに保存し共有

資料の保存先を、相手から見えない「マイドキュメント」にするのはやめましょう。個人の物でもクラウド上に全て共有することで、相手にもすぐ共有できるうえに検索時間は1/5に削減できます。

また、パワーポイントで保存したものをクラウドに共有する設定にしておけば、万が一パソコンのクラッシュや停電が起きてもデータを失いません。必要があればパスワードやロックをかけるなどして対応しましょう。

個別チャットを避け、グループチャットへ

チャットの導入率は約4割に増えていますが、個別チャットはNGです。人事の情報や秘匿性の高いもの以外はグループチャットを活用しましょう。

グループチャットの中で「@」をつけて相手を指定し、会話しましょう。「AさんとBさんが今こういう会話をしているんだな」というのを見せておかないと、「サボっているんじゃないか」、「こそこそ話をしているんじゃないか」、「私の悪口を言っているんじゃないか」という不要な疑惑が出てきてしまいます。

日本人は特に見えないものに対して不安や疑いを持ってしまいがちですので、できるだけグループチャットの中で会話をしましょう。

④感情を共有する

情報共有と同じく重要なのが感情共有です。オンライン会議でいい意見が出たら「いいね!」や「ハートマーク」ボタン、「88888(拍手)」などで感情を共有し、承認してあげるようにしましょう。すると「自分の考えを出していいんだ」という雰囲気をつくり、心理的安全性の確保につながります。

また、オンライン会議では、最初の2分だけ仕事とは関係のない雑談をすることをオススメします。雑談は、「参加者の会話から共通点を探す」というコミュニケーションテクニックです。

雑談をすることで共通項目が見つかり、話を広げることで相手の価値観が分かり、さらに価値観を共有することでチームワークが生まれます。これが心理的安全性の組み立て方です。

⑤孤立化を防ぐ声がけ

テレワークで生産性を下げる要因となるのが、「孤立化」の問題です。特に管理職やチームリーダーの方は、孤立化させないためにはどうしたらいいか、頭の中に入れておきましょう。例えば「最近どう?」と曖昧な質問を投げかけることは、相手からすると「自分に対する興味や関心を感じていない」、「自分は役に立ってない」と感じ、相手のモチベーションを下げてしまいます。

「忙しそうだけども、ちゃんと寝てる?」、「明日一緒に発表する会議の資料、どんな進捗具合?」というように、具体的に言語化することがテレワークでは重要です。

実は、テレワークが成功しているチームにおいて一番多い声かけは、「今ちょっといいですか?」なのです。これが言えるチームは、心理的安全性が確保できています。上司や先輩は、後輩が「今ちょっといいですか」と聞くことができる空気をしっかり作っておく必要があります。

オンライン会議の際は、「姿勢」、「口角を上げること」、「顎をしっかり引くこと」の3つがポイントです。目を合わせて喋ると相手に伝わりやすいので、オンライン営業であれば8割以上目を上げるように心がけましょう。相手と目をあわせて伝えると情報伝達率が約2倍になります。

また、特に40代以上の男性は口角を上げ、顎をしっかり引くことを意識しましょう。ビデオがオンになっている時は、大きくうなずきながら聞くことで、話す人が「自分の話を聞いてくれている」と感じます。相手の発言を促すためには口角を上げて、アイディアを出すことができる空気を作って下さい。

⑥ファン要素を入れる

テレワークでは、精神的な疲れのほかに、目と腰も疲れがちです。これを改善するためには、オンライン会議を使って楽しむことが大切です。

先ほど、冒頭2分間の雑談をオススメしましたが、その際に目で楽しませることも一つです。例えば、背景画像をお昼に食べたものの画像にしたり、飼っているペットを紹介したり。また、アバターで参加すれば話のネタになります。

また、腰の疲れにオススメなのが、オンラインフィットネス。週に1回、チームで10分間だけYouTubeのラジオ体操やダンスなどをチームで共有して、体を動かす習慣を作りましょう。みんなで一緒に行うことで、テレワークでもチームの一体感が生まれます。

⑦長時間労働を抑制する時間管理術

テレワークによって、世の中の労働時間が18%増えています。そして残念なことに、エース級の能力のある人に仕事がどんどん寄り、長時間労働の結果辞めてしまうという状況があるのです。業務をエース級に偏らせないために、時間管理を徹底しましょう。

1回15分、何に時間を費やしたか実際に振り返りましょう。どんなことに時間を使っているのかを16万人を対象に調べたところ、1位は社内会議(43%)、2位は資料作成(14%)、3位はメール(11%)という結果になりました。そして、この上位3位は、9割の会社で一緒でした。

例えば「会議のための会議」をなくす、凝ったパワーポイントを作らない、メールではなくオンラインでコミュニケーションをとることで無駄な時間を省いていきましょう。

まとめ

意識を変えてから行動を変えるのではなく、先に行動を変えましょう。まず行動を変え、振り返って「意外と良かった」と思えたら、意識が変わったと言えます。

今回の7つのアクションを実践し、振り返ってよかったら続けていくこと、ダメだったらやめる。これを続けることで余分な時間が減り、未来に必要な事業開発と学び方改革に時間を費やせるようになります。

意識を変えることで無駄がなくなり、生産性が高まります。生産性が高まれば会社にとっても、働く個人にとっても未来の選択肢が増えていきます。これが、変化が激しくて不確実な世の中で生き抜くための新しい働き方です。