社員との信頼関係なしに円滑な異動はありえない?
異動を命じる前に、人事担当者がやるべきこと

目次

人事異動は、慎重に行わないと、異動した社員のモチベーション低下につながり、現場トラブルや退職に発展してしまうことがあります。人事異動を行う際、人事担当者は何を注意すればいいのでしょうか。

本稿では、人事異動において社員が前向きに仕事に取り組んでもらうためには、どのような施策を取ればよいのか、その指針や考え方について解説していきます。

なぜ人事異動がうまくいかないのか?

人事異動によってモチベーションを下げてしまう社員が一定数存在するのはなぜなのでしょうか。その理由を簡単にまとめると、社員の意にそぐわない不本意な異動命令になってしまっているからです。

「事前の相談なしに、突然異動を告げられた」「子供が生まれたばかりなのに遠方への転勤を命じられた」「いまの仕事が気に入っていたのに、興味のない部署へと移動させられた」…等々、各社員の意向やキャリアプランを無視して、事前のすり合わせなしに会社都合で異動が決定されたとき、社員のモチベーションは大きく低下してしまいます。

円滑な人事異動を行うためにできること

円滑な人事異動を行うために、人事担当は何ができるのでしょうか。その鍵となる解決策を、いくつか解説していきます。

円滑な人事異動を行うためにできること①:丁寧なコミュニケーション

円滑な人事異動を目指すなら、異動決定前後に丁寧なコミュニケーションを社員と図ることは欠かせません。各社員には、それぞれの生活や目指すべきキャリアプランがあります。最終的には会社側の異動命令が、各社員の個別事情より優先されるとしても、会社の戦略と社員個々人のキャリアとの間に整合性や妥協点を見出すため、事前面談や事後のフォローアップを行いましょう。

特に、遠方への転勤を伴うのであれば、綿密な事前調整は欠かせません。転職が難しく終身雇用が当たり前だった一昔前であれば、多少強引な社命でも渋々したがって転勤辞令を受け入れてくれました。しかし、現在は社員側に複数の選択肢があり、優秀な社員ほどあっさり退職してしまうリスクがあります。

優秀な人材を逃さないためにも丁寧なコミュニケーションは重要なのです。そこで、人事担当として「これだけはやっておきたい」人事異動に伴う社員とのコミュニケーション施策について、いくつか解説します。

入社時から何度も「異動」を念押しする

100%人事主導で進められる長期施策として非常に有効な施策です。新卒・中途を問わず、入社時の会社説明会や採用面接など、各選考段階において、入社後の異動が必須である旨を候補者に繰り返し説明してください。異動リスクを受け入れられる社員のみを採用することで、異動に対して不満が出にくい仕組みを作り上げることができます。

社員のスキルや志向を把握しておく

事前に各社員がどのようなスキルを有し、どのようなキャリアパスやワークスタイルを望んでいるのか把握しておくことが重要です。一人ひとりの志向を把握することは難しいかもしれませんが、ランチに行ったり、日々の日報に目を通したりするだけでも、社員への理解度が深まるはず。相互理解があれば、人事異動によるミスマッチを回避することにもつながります。

人事異動が行われる理由・経緯をしっかり説明する

今回の人事異動において、なぜその社員が異動候補者となったのか、会社の事業戦略や育成プラン、事情、異動のメリット・デメリット、キャリアプランとの整合性など、あらゆる面から説明しましょう。100%納得してもらえないかもしれませんが、丁寧にコミュニケーションを重ねた誠意は必ず相手に伝わります。

遠隔地への転勤を伴う異動時は事前に打診し、無理強いはしない

転居を伴う遠隔地への転勤を計画した際は、必ず事前に候補者となる社員に、異動できるかどうか打診すべきです。就業環境だけでなく、生活環境が大きく変わる「転勤」は、通常の異動とは違い、無理強いするとモチベーション低下を通り越して、即離職へとつながってしまいます。

したがって、説得材料を最大限に提示してもなお転勤に対して難色を示された場合、無理強いせず、配置転換を諦めるか別の候補者を当たるようにしたほうがいいでしょう。もちろん、社命を断ったからといって懲罰的な人事を実施するのもご法度です。

異動後のフォローアップ面談

転勤を伴う異動や、職種内容の大幅な転換を伴う異動が発生した社員は、異動後しばらくは、精神的に不安定になることが多いもの。特に精神面でサポートが必要だと感じた社員に対しては、別途フォローアップのための面談を実施しましょう。その社員の不安を和らげ、異動先に適応する手助けができます。

円滑な人事異動を行うためにできること②:公正な評価制度を導入する

実は、人事担当ができる円滑な人事異動への最大の貢献は、異動を明示された社員との綿密なコミュニケーションだけでなく、それ以前に「納得して人事異動を受け入れてもらえる」仕組みづくりにあるのです。

ここで、いくつかその有力な対策・取り組みについて、紹介してみたいと思います。

就業規則に人事異動の範囲を明記する

事前に丁寧なコミュニケーションを重ねていたとしても、人事異動を言い渡された社員から反発されるリスクがゼロになるわけではありません。だからこそ、事前に就業規則などの書面に人事異動の範囲を明確に記載して、同意を得ておくとよいでしょう。

キャリアパス上、昇進・昇格条件に異動を組み込む

社員の育成計画やキャリアパスの中に、ジョブローテーションを伴う異動が発生する旨を明記し、異動を昇進/昇格の必須条件として明示しましょう。これにより、社内でキャリアアップを目指す若手社員に対して、異動への覚悟を根付かせることが可能となります。

転勤あり/なしの職種を分ける

例えば「総合職」「地域総合職」等、転居を伴う異動(=転勤)のあり/なしの両コースを設け、入社時に各社員のキャリアコースを選ばせるのも有力な仕組みづくりの手段です。自ら転勤ありの「総合職」を選択した社員は、転勤に対しても大きな不満を持たずに受け入れてくれるようになります。

転勤を伴う異動に公募・立候補させる

期間限定のプロジェクト案件や、海外など遠隔地への異動が発生する場合、経営陣や人事主導で候補者をピックアップするだけでなく、社内から公募したり立候補を促すのも有力な施策です。なぜなら、自ら手を挙げた社員なら異動に対して不満が出る余地が無いからです。

円滑な人事異動には丁寧なコミュニケーションと公正な評価制度作りが大切

人事異動を計画し、実施するのは経営者の仕事であり、人事部のあなたが考える仕事ではないかもしれません。しかし、会社として計画された人事異動をいかにスムーズに推進していくかは、人事担当であるあなたのアイデアや行動次第なのです。その核心となるのは、社員との丁寧なコミュニケーションと人事の仕組み作りなのです。

また、人事異動と聞くとネガティブな印象を抱く方も多いかもしれません。しかし、人事異動は社員の成長を促進し、不正を防ぐ役割も果たします。多彩なキャリア形成をサポートし、社内を活性化させるため、人事異動にはプラスの側面も大いにあると言えるでしょう。今回ご紹介した施策を通じて、ぜひ自社に適した円滑な人事異動のやり方を模索してください。