高度プロフェッショナル制度とは?具体的にどのような職種なのか解説

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プロフィール
行政書士/井手 清香
滋賀大学経済学部ファイナンス学科卒業。大手システム会社に勤務後、退職。ライターとして各種記事を執筆。2014年、ライター事務所「ライティングスタジオ一清」を開設。2018年度行政書士試験合格、2019年、滋賀県大津市に「かずきよ行政書士事務所」を開業。法律関連のライター兼現役の行政書士として活躍中。楽しく、分かりやすい法律の記事をお届けするために、日々奮闘中。

高度プロフェッショナル制度という言葉を聞いたことがあるという人は多いでしょう。しかし、実際にどのような社員について高度プロフェッショナル制度が適用されるのかについては知らないという人が多数ではないでしょうか。今回は、高度プロフェッショナル制度の対象となる社員と制度の概要についてご紹介します。

高度プロフェッショナル制度の概要

ごく簡単に表現するなら、高度プロフェッショナル制度は働いた時間ではなく、成果について賃金を払うという方法です。厚生労働省の見解によれば「高度プロフェッショナル制度は、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として(中略)労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度」(厚生労働省「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」 P1より引用)を言います。働き方改革の一環として創設された制度です。

どのような職種があてはまるのか

そのままでは分かりにくいですので、もう少し具体的に検討していきましょう。まずは、どのような業務が対象となるのでしょうか。対象となる業務は、労働基準法第41条の2第1項第1号に定められています。「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)」(労働基準法第41条の2第1項第1号)とある通り、具体的な職種については厚生労働省令で定められています。

厚生労働省が定めている要件のポイントを抜粋して解説します。まず、使用者から具体的な指示を受けて行う業務は対象外です。次に、具体的な対象業務としては、金融工学の知識を用いた金融商品の開発業務や、資産運用、有価証券市場における価値等の分析、評価又は投資に関する助言、技術・研究開発など5種類の業務が挙げられています。

条件を満たしたうえで労使間の合意が必要

さらに注意したい点としては、上記の職種であっても自動的に高度プロフェッショナル制度が適用されるというわけではないということです。条件を満たしたうえで、労使間の合意が必要です。高度プロフェッショナル制度の対象労働者の範囲については労使委員会の決議で明らかにする必要があり、対象労働者は対象業務に常に従事していなければなりません。

労働基準法第41条の2第1項第2号は、対象労働者について、次の通り職務の明確性と年収要件を定めています。

二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であって、対象業務に就かせようとするものの範囲

イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。

ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(中略)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。」

年収要件については、2019年9月現在では1,075万円以上であることです。ただし、年収要件を満たしている場合でも支払い方法によっては最低賃金法に抵触する恐れがありますので注意しましょう。

労働基準法の適用除外

高度プロフェッショナル制度を適用すると、労働基準法の一部が適用除外になります。具体的には、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されなくなります。つまり、残業代も休日・深夜手当も支給されません。

ただし、これらの点について何も保護がなくなったというわけではなく、年間104日以上の休日確保措置、健康管理時間の把握など別規定を適用して、高度プロフェッショナル制度適用労働者を守るという仕組みになっています。

ホワイトカラーエグゼプションと裁量労働制の違い

ホワイトカラーとは、企業の管理部門などで働く人のことを指します。ホワイトカラーエグゼプションとは、ホワイトカラー労働者が仕事の時間ではなく成果について賃金を定めるという決まりのことをいいます。というのも、ホワイトカラー労働者は、肉体労働ではなく頭脳労働がメインであるため、時間に応じて給料を払うよりも成果に応じて給料を払う方が実態に合っている面があるのです。

ホワイトカラーエグゼプションは、時間の経過が必ずしも生産量に直結しない働き方です。他方で、ブルーカラー労働者は、製造業などの現業系労働者を意味します。ブルーカラー労働者の場合は、時間が経過するごとに生産量も上がるという仕組みがあり、労働時間で成果を把握しやすいという特徴があります。

裁量労働制は、みなし残業制度とも呼ばれ、労働時間を固定する代わりに残業をしても残業代が出ないという働き方です。例えば8時間に労働時間を固定して、裁量労働制を採るとすると、7時間で仕事が終わって帰っても8時間働いたことになりその分の給料をもらえることになります。一方で、10時間かかってしまったとしても8時間分働いたとみなされます。成果をベースにしたホワイトカラーエグゼプションとは異なる概念です。

今回ご紹介している高度プロフェッショナル制度は、ホワイトカラーエグゼプションに近い制度と言えます。

高度プロフェッショナル制度のメリットとデメリット

メリット

高度プロフェッショナル制度では、出勤や退勤の時間が自由になります。短い時間で、成果を出せば効率よく働くことができますし、育児や介護などのプライベートと両立しやすくなる可能性があります。これまで事情があって長時間働けなかった人材でも、活躍する余地ができるという点は評価できる制度でしょう。

デメリット

出勤、退勤時間が自由である代わりに、深夜労働の割増賃金はつきません。短時間で成果が出せれば効率の良い働き方になるのですが、成果を出せない場合は時間が延びてしまう可能性があり、効率が悪くなります。常に成果を出し続けるというのも現実的に難しいでしょう。高度プロフェッショナル制度を導入する際には、特に成果を出せない場合について、結果としてサービス残業が増えるのではないかという点がかなり議論されました。

企業側が設定した成果目標が高すぎる場合や、金融市場の動き方が悪かった場合など、本人の努力や能力では成果を上げにくい環境は十分あり得ます。これらの点について、あらかじめ十分な対策を立てておかないと、かえって従業員のモチベーションを削いでしまう可能性があります。

労使間で十分な話し合いを

高度プロフェッショナル制度は、メリット・デメリットのはっきりしている働き方であり議論の的になってきました。賛否が対立するなかでもこの制度が導入された目的は、欧米諸国にあるホワイトカラーエグゼプションという選択肢を日本にも導入し、長時間労働が常態化している現状を変えていこうというものです。あくまでも選択肢の一つ、と考えれば導入しやすいかもしれません。

職種を絞ったうえで、労使委員会の決議と、労働者本人の同意を必須にしたことで、本人が希望すれば高度プロフェッショナル制度を適用できるという仕組みになっています。本人が同意しないのに、高度プロフェッショナル制度が適用されてしまうということはありません。ちなみに、労使委員会の決議には有効期間があり、再度決議をすれば引き続き高度プロフェッショナル制度を適用できます。

いずれにせよ、導入の際には労使間で十分な話し合いをすることが必要です。

高度プロフェッショナル制度をめぐるQA

途中で制度適用を辞めることは可能?

可能です。

労働基準法第41条の2第1項第7号には、対象労働者の同意の撤回について定められています。本人同意を撤回したからといって、不利益に扱ってはいけません。本人同意が撤回された時点で、高度プロフェッショナル制度の法律上の効果は発生しなくなります。

そもそも、制度として有効期間があるものなので、いったん高度プロフェッショナル制度を適用したからといってずっと適用されるわけでありません。有効期間が満了すれば、再度決議をし、労働者本人の同意を得るという流れになっています。途中で、労働者本人が再度の同意をしないということももちろんありえます。労働者の同意の撤回はできますが、使用者から一方的に撤回することはできません。

労働者が同意しなかったので解雇したい

対象労働者が同意をしなかったからといって、解雇その他不利益な取り扱いをすることは禁止されています(労働基準法第41条の2第1項第9号)。

制度を適用して賃金を減らしたい

高度プロフェッショナル制度は、人件費削減の手段ではありません。

仮に人件費削減のために制度を適用しても、かえって労働者の意欲を減らしてしまい、制度のデメリット面が強調されてしまうのではないでしょうか。何より、労使委員会の決議と本人の同意が必須ですので、人件費節約のための制度適用は難しいと考えられます。ただし、残業ありきの働き方、残業代を稼ぐための残業など、今までの働き方において見直すべきところを見直していくことは重要です。

求人票への記載はどうすれば良いか

改正職業安定法施行により、高度プロフェッショナル制度の適用が予定される求人にはその旨を記載しなければなりません。

書き方としては、高度プロフェッショナル制度に同意した場合についての労働法の適用除外の件と、労働条件について記載します。

また、同意しなかった場合の労働条件についても併記します。

まとめ

今回は、高度プロフェッショナル制度についての概要をご説明しました。導入されたばかりの制度なので、今後どのように日本の労働環境にインパクトを与えるのか注目していきたいですね。より生産性が高い働き方への一石になるのか、それともデメリットが目立ってしまうのか、気になるところです。